ビジネスメールでよく見る「ご了承」「ご承知おき」「ご容赦」。
なんとなく雰囲気で使っていませんか?
実はこの3つ、相手に求めているアクションがまったく違うんです。
合意が要るのか、単なる周知なのか、やむを得ない不便への許しなのか——ここを間違えると、思わぬ“角の立つメール”になります。
本記事では辞書とガイドラインをもとに、最短で迷わない使い分けと、すぐ使えるテンプレ、言い換え早見表まで一気に整理。
今日からあなたの文章が、読みやすく、丁寧で、誤解のない一通に変わります。
意味とニュアンスの違いを正しく理解する
「ご了承」=同意や理解をお願いする表現
「ご了承」は、相手に“事情をくんで理解・納得して受け入れてください”と同意を求める色合いが強い言い方です。
もとになっている「了承」は「事情をくんで納得すること・承知すること・承諾」の意(例:「了承を得る」)。そのため、価格改定や仕様変更など、先方の合意が必要な案内で使うのが自然です。
逆に、単なる通知で使うと「承諾を迫っている」印象を与えることがあるので要注意です。
より丁寧にしたい場合は「ご了承くださいますようお願いいたします」と依頼型にするのが無難です。
「ご承知おき」=通知・報告を受け取ってほしい表現
「ご承知おきください」は、同意は求めず「知っておいてください」という“情報の受領依頼”です。
出入口の変更、営業時間、担当不在など“知っておくと差し支えない事項”に合います。
一方、直接的に命令口調に響くと受け手によっては“上から”と感じられることも。
やわらげるには「どうぞ/念のため/恐れ入りますが」などのクッション語や「〜くださいますようお願い申し上げます」を添えましょう。
場合により「ご確認ください」「念のためお知らせいたします」等に言い換えるのも安全です。
「ご容赦」=おわび+失礼を許してほしい表現
「ご容赦」は本来「許す・大目に見る」の意。
ビジネスではやむを得ない不都合や軽微な不備に先回りして“お許しを願う”ときに使います(例:「行き違いがございましたらご容赦ください」)。
ただし、明確に当方の過失がある場合は「申し訳ございません」を主に据え、「ご容赦ください」は連発しないのが賢明です。
「ご容赦」単独には謝罪の語が含まれないため、原則として謝罪文とセットにしましょう。
「了承・承知・了解」の違いを整理
辞書上の定義は重なりますが、実務では次の目安が便利です。
- 了承:内容を“受け入れる”寄り(承諾ニュアンス)→「上司の了承を得る」
- 承知:ただ“知っている/理解した”寄り →「承知しました」
- 了解:理解して“認める”寄り。相手や業界によっては軽く聞こえる場合があるため、社外は「承知しました/かしこまりました」が無難とされる傾向。
ビジネスメールでの正しい使い方
スケジュール変更や価格改定での「ご了承」文例
- 例①:
「誠に恐れ入りますが、来週の打合せは◯日へ変更いたしたく、ご了承くださいますようお願い申し上げます。」 - 例②(価格改定):
「原材料高騰に伴い、◯月◯日受注分より価格を改定いたします。何卒ご了承賜りますようお願い申し上げます。」
“合意が必要”な連絡に適します。件名は「【重要】◯◯の価格改定につきご了承のお願い」など、用件が一目でわかる型に。
本文は「要旨→理由→依頼→代替案→締め」の順だと読みやすいです。
案内・通知での「ご承知おき」文例
- 例①:
「明日、当ビル法定点検のため入館口が一部変更となります。念のためご承知おきください。」 - 例②(納期情報):
「現行モデルは在庫僅少につき、再入荷まで◯週間を要します。どうぞご承知おきくださいますようお願いいたします。」
相手の許可が要らない“お知らせ”で使うのが基本。
口調が強いと感じる相手には「ご確認ください」「お含みおきください」などへ言い換えを。
遅延・誤送信などでの「ご容赦」文例
- 例①(先回りの断り):
「本メールと行き違いで既にご対応済みの場合は、何卒ご容赦ください。」 - 例②(軽微な不便):
「当日の受付が混雑する恐れがあります。お待たせする場合がございますが、ご容赦くださいますようお願いいたします。」
明確な過失にはまず謝罪:
「この度は発送遅延につき誠に申し訳ございません。再発防止策を下記の通り実施いたします。何卒ご容赦賜れますと幸いです。」
件名・結びでの自然な配置とNG例
- 件名の型:「【要ご確認】」「【重要】」「【お願い】」+用件(例:「【要ご確認】納期遅延の可能性について」)
- 結びの型:
「引き続きどうぞよろしくお願いいたします。」
依頼時は「ご多用のところ恐れ入りますが、何卒よろしくお願い申し上げます。」 - NG例:
用件不明な件名「こんにちは」「お願いがあります」
結びが命令調「ご承知おきください。」だけで締める(角が立ちやすい)
フォーマットは“宛名→挨拶→名乗り→要旨→詳細→結び→署名”の型で整えると読みやすさが安定します。
シーン別実践テンプレート集
社内連絡(上司・同僚・部下向け)での使い分け
- 上司:
「◯◯の件、承知いたしました。本日中に対応し、18時までにご報告いたします。」 - 同僚:
「資料差し替え、承知しました。17時の会議までに反映します。」 - 部下:
「明日の来客は12時に変更。ご承知おきください(※チャットの短文OK)。」
社外では「承知いたしました/かしこまりました」がより無難、社内は相手との距離感で調整を。
「了解」は人によって受け止めが割れるので、初対面・目上・社外では避けるのが安全策です。
社外メール(顧客・取引先向け)での使い分け
- 依頼+同意が要るとき:「◯◯の仕様変更につき、ご了承くださいますようお願い申し上げます。」
- 通知だけのとき:「当日の受付は◯階になります。ご承知おきください。」
- 引き受け表明:「ご依頼の件、かしこまりました。明朝までに初稿をお送りします。」
社外では、了承=合意、承知おき=通知、容赦=寛恕と整理して選ぶと迷いません。
クレーム対応で避けるべき/有効な表現
- 避けたい:
「ご容赦ください」だけ(許しの要求が先行)
「ご承知おきください」(通知先行で“開き直り”に見えうる) - 有効:
「この度は◯◯につき誠に申し訳ございません。事実関係は以下の通りで、再発防止策を即日実施いたしました。」
「やむを得ない事情により◯◯が生じております。ご理解賜れますと幸いです。」
謝罪(責任の受容)→説明→再発防止→補償/代替案→要望の順で、必要に応じて「ご容赦」を補助的に使います。
電話・対面での自然な言い換え台本
- 許可不要の通知:「明日は在宅勤務のため電話がつながりにくい見込みです。念のためお知らせいたします。」
- 同意が要る依頼:「開始時刻を30分繰り下げたく、ご了承いただけますでしょうか。」
- 謝罪+軽微な不便:「お待たせしており申し訳ございません。順番にご案内いたしますので、何卒ご容赦ください。」
対面では文末をやわらげるクッション語(恐れ入りますが/差し支えなければ 等)が有効です。
正しい言い換え・代替表現早見表
「ご了承 → ご理解・ご快諾」などの言い換え
- ご了承 → ご理解/ご快諾/同意/ご承諾
- 依頼形で丁寧に:「ご理解賜りますようお願い申し上げます」「ご快諾のほどお願い申し上げます」
“合意を要する”状況では、依頼形+理由提示+代替案の三点セットで角を立てないのがコツ。
「ご承知おき → ご確認・念のためお知らせ」などの言い換え
- ご承知おきください → ご確認ください/念のためお知らせいたします/お含みおきください/Please note(英)
- 断定を避ける緩衝:「〜となりますこと、念のためお知らせいたします」
受け手によっては「承知おき」が強く響くため、案内系に寄せると言外の圧を減らせます。
「ご容赦 → ご理解・ご放念」などの言い換え
- ご容赦ください → 何卒ご理解ください/お許しください/ご放念ください(※気にかけないでの意)
- 謝罪語を併置:「ご迷惑をおかけし申し訳ございません。何卒ご理解賜れますと幸いです。」
“許しの依頼”は多用すると逆効果。頻発時は仕組みの是正こそが最優先です。
社内/社外/カジュアルでの使い分け早見表
目的 | 社外(最丁寧) | 社内(ていねい) | カジュアル(同僚・友人) |
---|---|---|---|
合意を得たい | ご了承賜りますようお願い申し上げます/ご快諾のほど | ご了承いただけますと幸いです | OKならお願いします/いいですか? |
通知したい | 念のためお知らせいたします/Please note | ご承知おきください/ご確認ください | FYIです/共有まで |
軽微な不便 | 申し訳ございません。何卒ご容赦ください | お待たせして恐縮ですがご容赦ください | ごめん、ちょい待って |
英語の FYI=“ご参考までに”として使う略語。
「Please note / Please be advised」は「ご承知おき」に相当します。
よくあるQ&Aとケーススタディ
Q1 同意はいらないときに「ご了承」を使っていい?
基本は避けるのが安全です。
「ご了承」は“受け入れの依頼”なので、単なる周知に使うと「承諾を迫られている」印象に。
通知なら「ご承知おきください/Please note」にしましょう。
価格改定など合意が要る場面のみ「ご了承」を。
Q2 「ご容赦ください」と「申し訳ありません」の違いは?
「申し訳ありません」は謝罪そのもの、一方「ご容赦ください」は許しの要請です。
過失が明確なときは謝罪を主に置き、必要なら補助的に「ご容赦」を添えます。
先回りの断りや軽微な不便では「ご容赦」が有効ですが、多用は禁物です。
Q3 「ご承知おきください」は失礼になることがある?
あります。
相手や関係性によっては命令的に響くため、クッション語を添えるか「ご確認ください」「念のためお知らせします」などへ言い換えると角が立ちません。
社外初回連絡ほど配慮を厚く。
Q4 英語で近い表現は?
- ご承知おき:Please note / Please be advised / FYI
- ご了承(理解のお願い):We appreciate your understanding / Your kind understanding would be appreciated
- ご容赦:We apologize for the inconvenience / Please excuse the inconvenience
文脈に応じて“通知系(note/FYI)”と“理解・許し系(understanding/excuse/apologize)”を使い分けます。
違いまとめ
「ご了承」は合意が要る依頼、
「ご承知おき」は合意不要の周知、
「ご容赦」はやむを得ない不便への“許し”。
まずこの三本柱で選び分ければ、大半のメールは迷わず書けます。
社外ほど「承知しました/かしこまりました」「Please note」の安全運転を。
トラブル時は「謝罪→説明→再発防止→代替案→要望」の順で、必要に応じて「ご容赦」を添える。
件名は【要ご確認】【重要】【お願い】などの型で要旨を明示、本文は「要旨→理由→依頼→代替案→締め」の型に沿うと伝わりやすさが段違いです。
最後に、どんな表現も“頻発する不便や不備”を正すことには勝てません。
ことばの配慮と同時に、根本対応で信頼を積み上げましょう。