「退勤の一言、結局どっち?」
職場で毎日交わす“あいさつ”ほど、細かい空気が読みにくいものはありません。
この記事は、『お先に失礼します』と『お疲れ様です』の使い分けを、国語研究機関の知見や実務ガイドに基づいてわかりやすく整理。
“言わない人”問題や嫌われる理由、チャット時代の最適解まで一気に解消します。
今日から迷わない、スマートな一言のコツをどうぞ。
「お先に失礼します」と「お疲れ様です」どっちが正しい?
両方を言うのはアリ?
退勤時、結論から言うと両方を順に言うのはアリです。先に場から離れる許しを乞う「お先に失礼します」を軸に、周囲へのねぎらいとして「お疲れ様でした」を添えると、ていねいで無難な印象になります。
実務系のビジネスマナー解説でも、退席時は「お先に失礼します」を基本に、状況に応じて「お疲れ様でした」を続ける運用が紹介されています(より丁寧にするなら「失礼いたします」も可)。
社内文化の差はあるものの、順番は「お先に」→「お疲れ様」が自然です。
なお「お疲れ様」は本来“労い”のあいさつで、目上にも広く用いられるようになっている点は国語研究機関の解説でも確認できます。
迷ったら、先輩が普段どうしているかを観察して合わせるのが安全です。
「お先に失礼しますはおかしい」と言われる理由
「お先に失礼します」は敬語として正しい表現です。上司に対しても失礼ではありません。
誤解が生まれるのは、①相手の仕事を遮るタイミングでぶっきらぼうに言う、②声が小さすぎて独り言に聞こえる、③社内ルール(“合言葉”的な帰りの挨拶)とズレる――といった運用面の問題が主因です。
ていねいに言いたいときは「お先に失礼いたします」とすればより無難。
意味としては「先に退出する非礼をお許しください」で、会議の中座や退勤など“先に場を離れる”ときに幅広く使えます。
言い方の好みや世代差もあるため、社内の慣習に歩調を合わせるのが現実解です。
「お疲れ様です」を言わない会社があるって本当?
「お疲れ様です」は社内のあいさつとして一般的ですが、チャット運用などで“省略推奨”の会社はあります。
目的が迅速な業務連絡のツールでは、冒頭の定型あいさつを省くガイドが推奨されるケースも(相手や場面により柔軟に、という注記つき)。
一方、メールや社内文書では冒頭に添えるのが自然とする解説も多数あります。
つまり「言わない会社=マナー違反」ではなく、“運用ルールの違い”と捉えるのが正確です。
朝一は「おはようございます」、社外は「お世話になっております」など場に応じた言い換えを覚えておけば安心です。
「お先に失礼します」を言わない人の心理とマナー
言わないのはマナー違反になる?
“必ず言うべき定型句”という法律はありませんが、職場の共同体での円滑な合図として機能しているのは事実。
HR・マナー系の解説でも、挨拶は信頼の土台として扱われます。
とくにフロア全員に聞こえる声量で一言伝えるのは、作業中の人への配慮にもなります。
形式張らず「お先に失礼します。お疲れ様です(でした)」程度で十分。
もしチームが“黙って帰る文化”なら、直属上司や隣席の人にだけアイコンタクト+小声で伝えるなど、職場ルールに合わせつつ最低限の合図を心がけるのが良策です。
「言いづらい」と感じる人の本音
「声をかけるタイミングが難しい」「静かなオフィスで注目されるのが苦手」など、場の空気への不安がハードルになりがち。
対策は、① 定時の数分前に一呼吸置いて周囲の会話の切れ目をつかむ、② デスク間を移動しながら目線+会釈で小さく伝える、③ 一言添える(「本日ありがとうございました」)でポジティブな印象に変える、この3点が有効です。
社内チャットが活発なら、退勤連絡をテキストで補完する(「本日は退勤いたします。明日の資料は共有済みです」など)と、言い出しづらさを和らげつつ情報共有の質も上がります。
無視されるケースの背景
「反応が返ってこない」こと自体は個人差や忙しさが原因のこともしばしば。気にしすぎないのが基本です。
ただし、常時特定の相手だけスルーされるなら人間関係のサインの可能性も。
エスカレートして“意図的な無視”が続く場合は、上長や人事へ相談という選択肢も示されています。
まずは、相手の手元が離れた瞬間を狙う・短く明るく伝える・帰り際に会釈だけでも残す、といった相手に負担をかけない挨拶を心がけると、反応率は上がります。
「お先に失礼します」が嫌われる理由
なぜ一部の人は嫌悪感を持つのか?
嫌悪感の正体は言い方・場の読み方に集約されます。
たとえば、残業でピリついた空気の中で明るすぎるトーンや雑な身振りで言うと、「置いていかれた」感情を刺激しやすい。
逆に、声量は控えめ・語尾は丁寧に・小さく会釈で、印象はガラッと変わります。
また、「お疲れ様でした」を自分(帰る側)から言うと、まだ働く人に“もう終わり”を宣言したように受け取られることもあるため、基本は残る側からの返しに回すのが安全です。
上司・同僚から嫌われやすい場面
NGになりがちなのは、①重大トラブル中なのに共有なしで離脱、②チームタスクの引き継ぎ未完了、③上席へ無言退社。
挨拶そのものより、段取りのまずさがネガティブの源です。
退勤前に「進捗共有→手当て→一言」の順で整えておけば、同じ「お先に失礼します」でも受け止めは好転します。
必要なら「メール/チャットで残件と期限」を併記すると、上司視点で“安心して送り出せる人”になります。
ネガティブに受け取られない工夫
カギは順序と言い回し。
おすすめは、1) 「お先に失礼いたします」、2) 一拍おいて会釈、3) 近い席にだけ「本日もありがとうございました」or「明日○時に資料共有します」、この3点セットです。
社外の来客や目上が近くにいる場合は、さらに控えめに。
社内文化によっては「お疲れ様でした」は返される側に回るのが自然です。
最後にデスクの整頓・椅子入れ・モニター消灯など“視覚のマナー”も整えると、印象は段違いで良くなります。
退勤時にスマートに伝える方法
「お先に失礼します、ありがとうございました」の応用例
“ねぎらい+感謝”は万能。
たとえば、
- 上司へ「お先に失礼いたします。本日のレビューありがとうございました」
- 同僚へ「お先に失礼します。資料助かりました」
- 後輩へ「お先に失礼するね、対応ありがとう」
のように短い文脈を足すだけで印象が柔らかくなります。
よりかしこまるなら「失礼いたします」「ありがとうございました。明朝○時に進捗共有します」と、次アクションの明示まで添えると完璧。
形式面で正しく、相手配慮にもなる言い回しです。
「お疲れ様です」だけで済ませるのは失礼?
状況次第です。
あなたが先に退席する側なら「お先に失礼します」を基本に。
ねぎらいの「お疲れ様です(でした)」は、残る側→帰る側の返答として用いるのが理にかないます。
朝や始業直後は「お疲れ様です」より「おはようございます」が適切。
社外には「お世話になっております」が定石。
――こうした場面ごとの使い分けを押さえておけば、「お疲れ様です」に頼りきらなくても失礼にはなりません。
好印象を残す言い方の例文集
- 定時退勤(上司へ): 「お先に失礼いたします。本日の確認、ありがとうございました。残件は明朝9時に共有します。」
- 繁忙のフロア(周囲へ): 「お先に失礼します。お手すきのときに、資料だけ目を通しておいてください。」
- 会議の中座(社外も同席): 「申し訳ございません、先約のためここで失礼いたします。本日はありがとうございました。」
- 同僚へ一声: 「お先に失礼します、助かりました。無理せず、今日はここまでにしましょう。」
どれも短く要点→配慮→次の手の順。丁寧さとスピードのバランスが大事です。
よくある疑問について
「はい、お疲れ様です」と返すのは正しい?
相手から「お疲れ様です」と言われた“返し”としては、そのまま「お疲れ様です」や「ありがとうございます」が自然です。
単独の「はい」は返事の意味はあるものの、あいさつの応答としては物足りないことがあります。
目上からなら「ありがとうございます」「恐れ入ります」を添えるとより丁寧。
帰る人に対しては、残る側が「お疲れ様でした」と返すときれいに収まります。
出社時に「お疲れ様です」は正解?
始業の朝は「おはようございます」がベター。
ねぎらいの「お疲れ様です」は始業直後だとやや不自然とする実務解説が一般的です(失礼と断ずるほどではないがTPOで調整)。
午前出社が遅い部署でも、まずは「おはようございます」。
夕方以降の遭遇や社内メール・チャットでは「あいさつとしての『お疲れ様です』」が広く使われています。
メールやチャットでの適切な表現
社内メールなら冒頭に「お疲れ様です。○○部の△△です。」は自然。
社外なら「いつもお世話になっております」が無難です。
件名は“内容が一目で”が原則で、「お疲れ様です」などあいさつ件名は避けるのが吉。
社内チャットではスピード重視で“挨拶省略”の運用もあります(ただし相手や場面次第で柔軟に)。
チームのルールに合わせるのが最優先です。
使い分け早見表(保存版)
シーン | 先に退席する側 | 残る側の返し | 補足 |
---|---|---|---|
定時退勤 | お先に失礼します/失礼いたします | お疲れ様でした | 社内文化により「両方」も可 |
会議の中座 | 申し訳ございません、先に失礼いたします | 失礼いたします/お疲れ様でした | 社外同席ならより丁寧に |
朝の出社 | おはようございます | おはようございます | 朝の「お疲れ様です」はやや不自然 |
社内メール冒頭 | お疲れ様です。○○部の… | ― | 社外は「お世話になっております」 |
社内チャット | (挨拶省略も可)要件から | ― | 組織ルールに従う |
まとめ
- 原則:先に去る側は「お先に失礼します」。ねぎらいの「お疲れ様です(でした)」は返す側が中心。
- 両方はOK:順番は「お先に」→「お疲れ様」。迷ったら社内習慣に合わせる。
- 朝・社外:朝は「おはようございます」、社外は「お世話になっております」。
- メール/チャット:メールは冒頭挨拶を、件名は“内容が一目で”。チャットはルール次第で省略可。
- 嫌われ回避:段取り→一言→会釈。言い方・順序・配慮が印象を決める。