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おせちのチョロギについて 関東・関西の違いと由来・アレンジレシピを解説

おせちのチョロギについて 関東・関西の違いと由来・レシピを解説

おせちの重箱で、黒豆の横にちょこんと並ぶ赤い“コロコロ”。それがチョロギです。

実はこれ、シソ科の植物の塊茎で、長寿を願う大切な縁起物。関東ではおなじみでも、西日本では「初めて見た」という人も少なくありません。

本記事では、チョロギの正体や由来、地域ごとの違いから、酢漬け以外の食べ方、取り入れるメリットまでをやさしく解説。

読み終わるころには、年末の買い出しで“迷わずカゴに入れたくなる”知識が身につきます。

次のお正月、重箱の彩りと会話の中心にチョロギを――そんな気持ちになれるガイドです。

目次

おせち料理に登場する「チョロギ」とは?

チョロギの正体と特徴

チョロギはシソ科イヌゴマ属の多年草「Stachys affinis(スタキス・アフィニス)」の地下にできるコリっとした塊茎のこと。

見た目は白く、渦を巻いた小さな巻き貝のような形で、噛むとシャクッと軽い歯ざわりがあります。

おせちでよく見る赤い色は、梅酢や赤じそ酢で漬けて色づけしたもの。もともとは白いので、生の場合は土を落として軽く下ゆでし、酢に漬ければ自宅でも手軽に作れます。

英語では“Chinese artichoke”や“crosne(クロスヌ)”とも呼ばれ、日本では「ちょろぎ」「チョロギ」と表記されます。

おせちの定番・黒豆の横に添えられていることが多く、彩りと食感のアクセントとして重宝されてきました。

食べ方は漬物が定番ですが、炒め物や揚げ物でもホックリした食感が楽しめます。

おせちに使われるようになった由来

原産は中国。日本へは江戸時代に伝わったとされ、保存のきく“酢漬け”としてお正月料理に取り入れられました。

赤い色に染めるのは、祝いの席にふさわしい華やぎを添えるため。さらに、チョロギは当て字で「長老喜」「千代呂木」などと書かれ、長寿や繁栄を願う意味が込められています。

黒豆と一緒に盛るのは「まめ(健康・勤勉)」と「長寿」を重ね、1年の健やかさを願う縁起担ぎの組み合わせ。

こうした意味づけが、全国に広がるお正月の食卓でチョロギが愛されてきた理由です。

縁起物としての意味と役割

チョロギは、その字面どおり「長く老いて喜ぶ=長寿」への祈りがぎゅっと詰まった食材です。

小ぶりながら存在感のある赤色は重箱の差し色として優秀で、黒豆・田作り・数の子など茶色や黄金色が多い中で、見た目のコントラストを生み出します。

また、シャクシャクした歯ざわりは甘く煮た黒豆の柔らかさと好対照。味の単調さをリセットする“箸休め”として、最後まで美味しく食べ切る手助けもしてくれます。

意味・彩り・食感の三拍子がそろうからこそ、チョロギは「知る人ぞ知る名脇役」として、今もおせちに添えられ続けているのです。

根拠となる漢字表記や黒豆との組み合わせの縁起は、各種おせち解説でも広く紹介されています。

地域ごとに違う!チョロギの食べ方

関東・関西での違い

チョロギをおせちに入れる文化は、関東以北でよく見られ、関西以西では「見たことがない」「知らない」という声も少なくありません。

背景には、もともとの栽培・流通量が少ないこと、地域ごとの正月料理の嗜好や重視する食材の違いがあると考えられます。

関東では黒豆に赤いチョロギを添える“紅黒”のコントラストが好まれ、関西では昆布巻やたたきごぼうなど別の箸休めが主役になる傾向です。

もちろん今は地域間の食文化が混ざり合い、デパ地下や通販のおせちでは全国どこでも目にする機会が増えていますが、「関東・東日本で身近、西日本ではややレア」という大まかな傾向は押さえておきましょう。

東北・北陸での独自文化

チョロギは岩手・福島など東北の一部で栽培が行われ、北陸を含む寒冷地でも比較的育てやすいとされます。

東北では黒豆と一緒に盛るだけでなく、地元の梅や赤じそを使って自家製の酢漬けを作り、年末にまとめて仕込む家庭も。

市販品が少ない地域ほど「家庭の味」として根づきやすく、漬け加減や甘酢の配合が家ごとに受け継がれているのが面白いところです。

実際、岩手県釜石市の青ノ木地区などでは特産として親しまれ、福島でも畑で育てて直売する例が見られます。

こうした“作る・配る・囲む”の循環が、東北の年取り文化の中でチョロギを支えてきたと言えるでしょう。

九州地方における扱い方

九州では、関西同様におせちでチョロギを見かける頻度は高くありませんが、地域によっては栽培や加工が行われています。

たとえば大分など九州の一部でも栽培実績があり、地元の直売所に並ぶケースもあります。

おせちの重箱に入れるより、居酒屋のお通しや家庭の常備菜としての登場が多いのも九州らしいところ。

甘酢がしっかりした味つけは、焼酎や日本酒とも相性がよく、正月に限らず年中楽しむ“漬け物感覚”で親しまれてきました。

流通量の少なさから「まずは知ってもらう」の段階にある食材ですが、地場の梅やしそと合わせれば、ご当地らしい一品として十分に光ります。

参考:地域ごとの大まかな傾向(目安)
地域おせちでの登場頻度典型的な合わせ方
関東・東日本よく見かける黒豆に赤チョロギを添える
東北・北陸比較的身近(自家製も)梅酢・しそ酢の自家製漬け
関西・西日本少なめ代わりに別の箸休めが主役
九州少なめ(地域差あり)常備菜・酒肴として活用

チョロギと日本の食文化の関わり

中国から伝来した背景

チョロギは中国の山地を原産とし、日本へは江戸時代に入ってきたと伝わります。

中国では「甘露子」「草石蚕」と書かれ、日本では「長老喜」「千代呂木」など、めでたさを感じる当て字が多いのが特徴です。

日本に伝わった後は、保存性の高い漬物として普及し、正月料理の一角に定着。

おせちの文脈では、赤じそで色づけした漬けチョロギが象徴的な存在になりました。

こうした来歴は、植物学・食文化の資料や各種解説記事でも一致して紹介されています。

薬膳としての効能

「薬膳の食材」と聞くと、すぐに“体にいい成分”を想像しがちですが、薬膳は本来“食材の組み合わせで体調を整える考え方”です。

チョロギは古くから漬物や保存食として食卓にのぼり、シャキシャキ食感で箸休めとして重宝されてきました。

一般的な家庭料理の範囲では、特定の病気に効くといった医学的効果をうたうのではなく、「食欲をリセットして食べ過ぎを防ぐ」「味の対比で満足感が上がる」といった日常的なメリットに目を向けるのが安心です。

栄養や効能を断定する情報は出所がまちまちなこともあるため、必要なら公的な栄養データを確認しましょう。

ここでは“おいしく、無理なく続けられる一品”という立ち位置をおすすめします。

現代での「チョロギ離れ」と食文化の変化

今日、チョロギは全国的に見ると生産量が多い作物ではありません。

スーパーで年中見かける食材でもないため、世代や地域によっては「初めて見た」という人も。

加えて、重箱の中身が多様化し、洋風オードブルや肉料理が増えたことで、漬物枠の座が他の食材に置き換わるケースもあります。

一方で、ふるさと納税や産直ECで“珍しい野菜”として注目され、家庭で漬けて楽しむ層もじわり。

つまり「知らない人は増えたが、好きな人は深く楽しんでいる」という二極化です。

地域差や生産量の少なさが現状を生んでいる、という指摘は各種解説でも見られます。

チョロギを楽しむ現代アレンジ

酢漬け以外の新しい調理法

まずは“下ゆで→水気を切る”の下ごしらえが基本。

ここから一歩進んで、バターソテーで香りをまとわせたり、薄衣の天ぷらでホクホク感を引き出したりすると、まるで新じゃがのような食べ心地に変わります。

オーブンでローストすれば、表面はカリッ、中はねっとり。塩・こしょうにレモンを絞るだけでも立派な一品です。

和の副菜に寄せるなら、白だし+ゆず皮で簡単おひたし風。汁物に入れるとコリッとした歯ざわりがアクセントになり、豚汁・けんちん汁とも好相性。

漬けるだけに飽きたら、ぜひ“熱を入れる”方向も試してみてください。食感が多段階に変わるのが、チョロギの面白さです。

子どもや若い世代でも食べやすい工夫

子どもには、甘酢をややマイルドにして酸味を抑えるのがコツ。

砂糖やみりんでほんの少し甘みを足すとパクッと食べやすくなります。

形がユニークなので、ピックに刺して“コロコロ前菜”にすると食卓が一気に楽しく。

若い世代には、ポテサラの一部をチョロギに置き換える、タルタルソースに刻んで混ぜる、ピザのトッピングに“コリコリ係”として散らすなど、普段の料理に混ぜ込む方法が好評です。

にんにくのような香りがほとんどないため、におい移りの心配が少ないのも強み。

お正月の残りを“いつもの料理”に橋渡しする工夫で、出番がグッと増えます。

海外でも注目される活用法

フランスでは“crosne(クロスヌ)”の名で知られ、肉料理や魚料理の付け合わせとして、バターソテーやクリーム煮で楽しまれてきました。

英語圏でも“Chinese artichoke”として紹介され、見た目のユニークさと食感の良さが再評価されています。

和の酢漬けだけにとどめず、海外の食べ方をヒントにすると、チョロギは一気に多国籍な食材に。

たとえば白身魚のムニエルにさっと炒めたチョロギを添えるだけで、レストランの一皿に早変わり。

年末年始の“余りチョロギ”も、世界のレシピを取り入れれば無駄なくおいしく消費できます。

おせちにチョロギを取り入れるメリット

赤色のアクセントで華やかさUP

重箱は色のバランスが命。

黒豆・数の子・田作りなど、茶〜黒〜黄金色が並ぶ中で、チョロギの鮮やかな赤は写真映えにも効果抜群です。

ほんの数粒添えるだけで一段が引き締まり、“お店みたい”な完成度に。

さらに、渦巻き形の立体感が盛りつけにリズムを生み、箸を伸ばすきっかけにもなります。

赤は祝いの色。新年の席にふさわしい色彩心理の後押しも受けつつ、「食べると軽い」「見た目が楽しい」というダブルの魅力で食卓を盛り上げます。

赤色は梅酢や赤じそによる色づけが定番で、手作りでも簡単に再現できます。

健康長寿を願うシンボル

チョロギの当て字「長老喜」「千代呂木」には、長寿・繁栄への願いが込められています。

黒豆に添える盛りつけは、“まめ(健やか・勤勉)”と“長寿”のダブル祈願。

意味の物語性がしっかりあるので、家族で話題にしやすく、子どもにも伝えやすいのが魅力です。

食材そのものは素朴ですが、年に一度の晴れの席に「願い」を託すことで、食卓に小さなドラマが生まれます。

こうした意味づけはおせちの解説でも広く触れられており、改めて“知って選ぶ”ことの価値を感じさせてくれます。

家族や地域文化を語れるきっかけになる

「この赤いのなに?」から始まる会話は、世代間の食文化の継承そのもの。

関東と関西の違い、祖父母の出身地の味、家庭の甘酢の配合……。チョロギは“話のタネ”としても優秀です。

地域によっては栽培の歴史があったり、産直で購入できたりと、ローカルの物語も豊富。

お正月のテーブルを“学びの場”に変え、家族の思い出や土地の記憶に光を当ててくれます。

SNSに載せれば「懐かしい!」「初めて見た!」と反応がつき、フォロワーとの交流も広がるはず。

味と意味、見た目と会話。小さな食材が、大きなつながりを運んでくれます。

まとめ

チョロギは、赤い酢漬けの愛らしい姿に、長寿を願う意味、黒豆との相性、そして地域ごとの物語まで詰め込んだ“おせちの名脇役”。

関東・東日本では身近、西日本ではややレアという地域差を知ると、重箱づくりが一段と面白くなります。

漬けるだけでなく、炒める・揚げる・ローストするなど現代アレンジも自在。

家庭の味として受け継ぐもよし、海外スタイルを取り入れて“映え”を狙うもよし。

小さな数粒が、食卓の見栄えと会話のきっかけ、そして新年の願いを大きく膨らませてくれます。

次の正月は、意味を知って「赤いコロコロ」を主役級に輝かせてみませんか。

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