「作ったカレー、つい鍋のまま置いちゃった」。忙しい日ほど、こんなうっかりは起きます。問題は、何となく不安でも、何を基準に判断すればいいかが分かりにくいことです。
この記事では、室温で数時間置いてしまったときに考えるべき軸、すぐにできる対処、食べるなら押さえたい温め直しのコツ、そして体調が怪しいときの動き方までを、家庭で使える形にまとめました。読んだあとに「次はこうする」が決まることを目標にしています。
食べられるかは「室温と冷め方」で決まる。判断の軸を持とう
いちばん大事なのは室温。暑い日ほどリスクは上がる
作ったカレーを室内に置いてしまったとき、いちばん効く判断材料は「何時間か」だけではありません。大事なのは、その間の室温と、カレーがどんな速度で冷えたかです。ウェルシュ菌による食中毒は、加熱した後に室温でゆっくり冷めた料理で起きやすいとされています。東京都の案内でも、増えやすい温度帯(およそ12〜50℃、特に43〜45℃)にいる時間を短くすることがポイントだと説明されています。
つまり、夏場のように室温が高い日や、暖房で部屋が暖かい日ほど、その温度帯を長く通りやすくなります。逆に冬で室温が低めでも、「鍋の中はなかなか冷えない」ことがあるので油断は禁物です。食品安全委員会の資料では、増殖を防ぐには10℃以下で保存するか、55℃以上で高温保持することが有効だとされています。
室温で5時間ほどという状況は、環境しだいで「増えやすい時間帯をじっくり過ごした」可能性が出てきます。時間だけで白黒つけず、室温と冷え方をセットで考えるのが安全への近道です。
鍋にフタをしても安全とは限らない。冷めにくさが落とし穴
「フタをしていたから大丈夫」と思いがちですが、ここには落とし穴があります。ウェルシュ菌の話でやっかいなのは、調理で一度しっかり加熱しても、冷却がゆっくりだと増えやすい条件がそろってしまう点です。東京都の説明でも、調理後に常温で保管すると、加熱で生き残った菌が温度低下とともに増殖に適した状態で増えていく、とされています。
フタをすると、外からのほこりは入りにくくなります。一方で、湯気がこもり、鍋の中の熱が逃げにくくなりやすい。結果として、カレーが「温かいけれど熱々ではない」時間が長引きます。この状態が、増えやすい温度帯を長く引きのばしてしまう原因になりえます。特に大鍋は表面が冷え始めても中心が温かいまま残りやすいので、鍋の中で温度ムラが起きやすいです。
フタの有無より、「どれくらい早く10℃以下に持っていけたか」「あるいは55℃以上で保てたか」が勝負になります。
においも見た目も当てにならない理由を知っておく
食べていいか迷うと、多くの人が「酸っぱいにおいがしないか」「糸を引いていないか」「カビがないか」を確認します。もちろん異変があれば食べないのが正解ですが、問題は「異変がなくてもリスクがゼロとは言えない」ことです。ウェルシュ菌食中毒は、食品中で増えた菌を食べた後、腸の中で毒素が作られて症状が出るタイプとして知られています。
このタイプだと、必ずしも食品が強く腐ったにおいを出すとは限りません。特にカレーは香辛料の香りが強く、多少の変化が分かりにくいことがあります。さらに「温め直したらにおいが戻った気がする」も起きやすい。だからこそ、感覚チェックは補助に留め、温度管理と時間管理で判断するのが現実的です。
見るべきポイントを一つに絞るなら、「室温でゆっくり冷めた時間が長かったかどうか」。この軸が立つと、迷いが減りやすくなります。
小さな子どもや高齢者は「大丈夫そう」でも避けたい
同じものを食べても、体の状態で影響は変わります。食品安全委員会の資料では、ウェルシュ菌食中毒は多くの場合1〜2日で回復するとされる一方で、基礎疾患のある人、特に子どもや高齢者ではまれに重症化することがある、と説明されています。
ここでいう重症化は、脱水が進んだり、体力が落ちて回復に時間がかかったりするイメージです。妊娠中や、持病があって免疫が落ちている場合も、無理は避けた方がいいでしょう。大人が少しおなかを下した程度で済むケースでも、子どもはあっという間に水分が足りなくなります。
家族で食べるなら、「迷うものは大人だけが食べる」でも十分安全とは言い切れません。迷いが残るなら、体の弱い人は別メニューにする。これだけでもリスクは下げられます。
迷ったときの判断チェックリスト(捨てどきの考え方)
最後は気持ちの問題にもなります。「もったいない」と「体調を崩したくない」の間で揺れやすいからです。そこで、判断を感情から切り離すチェックリストを置きます。
まず、室温が高めの日や暖房が効いた部屋で、調理後から数時間放置した。さらに大鍋で、深いまま置いた。これが重なると、増えやすい温度帯を長く通った可能性が高くなります。
次に、放置後に「すぐ冷蔵」できていない場合も注意です。冷蔵庫に入れたとしても、鍋のままでは中心が冷えにくく、危ない時間が伸びやすい。
逆に、放置してしまっても「浅い容器に小分けして急冷し、すぐ10℃以下にした」なら、リスクを下げる方向に動けています。
このチェックで危ない側に傾くなら、捨てる判断は“損”ではなく“保険”です。食中毒で丸一日つぶれる方が、結局高くつくことが多いからです。
放置で危なくなる正体:煮込み料理で起こりやすいウェルシュ菌
ウェルシュ菌はどこにでもいる。ゼロにできないから対策が要る
ウェルシュ菌は、特別な場所にだけいる菌ではありません。東京都の案内では動物の腸管内や土壌など自然界に広く存在すると説明され、食品安全委員会の資料でも自然界の常在菌であるため汚染を根絶するのは不可能、とされています。
つまり「作るときに清潔にしていれば絶対大丈夫」という話ではないのです。いくら台所をきれいにしても、食材や空気中のわずかな付着をゼロにはできません。だから対策の中心は「入れない」より「増やさない」になります。
カレーは肉や野菜、香辛料など材料が多い分、菌が入り込むルートも増えます。さらに、とろみがあるので熱が均一に抜けにくく、冷め方にムラが出やすい。この性質が、対策の難しさにつながります。
怖がりすぎる必要はありません。知っておくべきは、「菌をゼロにするゲームではなく、増殖させない温度管理のゲーム」という見方です。これが分かると、何をすればいいかが一気にシンプルになります。
増えやすい温度帯がある。特に動きやすい温度を押さえる
ウェルシュ菌対策で覚えたいのは、増えやすい温度帯がはっきりしていることです。東京都の説明では、増殖しやすい温度帯はおよそ12〜50℃で、特に43〜45℃で活発、と示されています。
この数字が意味するのは、「熱々のうちは増えにくいが、冷めかけが危ない」ということです。作りたてで鍋がまだ沸いている状態なら、菌は増えにくい。しかし火を止めて放置し、40℃前後のぬるい時間帯が長いほど増えるチャンスが生まれます。
食品安全委員会の資料では、保存温度として10℃以下または55℃以上が増殖阻止に有効とされています。
つまり、家庭での合格ラインは「早く冷蔵庫温度に落とす」か「食べるまで高温を保つ」の二択。室温でだらだら置くのが最も避けたい形です。時間だけで迷うより、この温度帯の話を知っていると判断が速くなります。
温め直しで安心しきれない理由は「芽胞」のしぶとさ
「食べる前にもう一回温め直せば大丈夫」と思いたいところですが、ウェルシュ菌にはしぶとい仕組みがあります。ポイントは「芽胞」という殻のような形を作れることです。厚生労働省の資料では、ウェルシュ菌は耐熱性の芽胞を形成し、加熱調理で他の多くの細菌が死んでも芽胞が生き残るため、加熱後の冷却が不適切だと増殖につながる、と説明されています。
食品安全委員会の資料でも、耐熱性芽胞は100℃で1〜6時間の加熱に耐えると考えられ、通常の加熱調理で芽胞を死滅させるのは難しい、とされています。
ただし、ここで誤解したくないのは「温め直しが無意味」という話ではないことです。保存中に芽胞から発芽した状態(栄養細胞)は再加熱で減らせる、とされ、東京都も食べる前にぐつぐつするまで再加熱し、よくかき混ぜることをすすめています。
要するに、温め直しは大事。でも、温め直しだけに頼らず、そもそも増やさない保存が主役です。
「一晩置いた方がおいしい」と安全は別。おいしさは工夫で作れる
カレーは「寝かせるとおいしい」とよく言われます。確かに、味がなじんだり、具材に味が入ったりして満足度が上がることはあります。ただし、それを室温放置でやるのは話が別です。東京都も、前日に作って時間が経ってから食べることでウェルシュ菌による食中毒が起こることがある、と注意しています。
寝かせたいなら、手段は室温放置以外にもあります。たとえば、作ったら早めに小分けして冷蔵し、翌日にしっかり温め直す。これなら「時間を置く」要素は残しつつ、危ない温度帯にいる時間を減らせます。
また、味を深めたいなら、翌日に食べる分だけ別鍋に移して、火を入れながら水分を調整する方法もあります。寝かせの効果を「時間」ではなく「再加熱の工夫」に寄せるイメージです。
おいしさを取るか安全を取るかではなく、両立の道を選べる。ここを知っているだけで、家庭のカレーはだいぶ安心になります。
家で起きがちな失敗パターン(大鍋、深い容器、冷蔵が遅い)
食中毒の話は怖く聞こえますが、起きやすい形はわりと決まっています。大鍋でたくさん作る。火を止めて、しばらく置く。粗熱が取れてから冷蔵庫に入れようと思っているうちに時間が過ぎる。深い鍋のまま冷蔵庫へ。こうなると、中心が冷えるまでに時間がかかります。
ウェルシュ菌は酸素が少ない環境で増殖しやすい性質があるとされ、大量調理品の内部は増殖に適しやすい、という説明もあります。
さらに、放置中にちょうど増えやすい温度帯を長く通ると、翌日に温め直しても「増えた分をゼロにする」発想が難しくなります。
失敗を避けるコツは単純で、「深いまま置かない」「冷め待ちを長引かせない」「小分けして冷やす」です。このあとの章で、やってしまった後でも取り返しやすい手順に落としていきます。
室温で5時間ほど置いてしまったときの対処:まずは分岐して整理する
まずやることは「冷ます」か「高温で保つ」かを決める
放置に気づいた瞬間、やるべきことは「とりあえず温め直す」ではありません。まず、これからどうするかを決めます。選択肢は大きく二つです。すぐ食べる(つまり高温を保ち続ける方向)か、保存する(つまり早く冷やして低温に落とす方向)か。
食品安全委員会の資料では、増殖を防ぐ温度管理として10℃以下または55℃以上が有効とされています。
今が「ぬるい状態」なら、いちばん避けたいゾーンにいます。すぐ食べるなら、早めに全体がしっかり沸く状態まで戻し、食べきる。保存するなら、できるだけ早く10℃以下の世界へ持っていく。この二択をはっきりさせると、やるべき動きがブレません。
ここで注意したいのは、放置時間が長いほど「これからの対処で取り返せる余地」が小さくなることです。だからこそ、迷って時間を使うのが一番もったいない。決めたらすぐ動く、それが最大の対策です。
ケース別:すぐ食べる/冷蔵する/翌日食べたいでやることが変わる
室温で5時間ほど置いてしまったとき、状況別に現実的な動き方を整理します。
すぐ食べる場合は、「いまから危ない温度帯にいる時間をこれ以上延ばさない」がテーマです。全体がぐつぐつするまで加熱し、混ぜながら温度ムラを消して、食べきる方向に振ります。
冷蔵する場合は、「いまから10℃以下に落とすスピード」がテーマです。鍋のままは避け、小分けして浅い容器へ移し、急冷してから冷蔵庫へ。
翌日食べたい場合は、冷蔵と同じ手順で保存し、翌日は「十分な温め直し」と「一度温めたら再放置しない」を守ります。東京都は、保存したものを食べる前にぐつぐつするまで再加熱し、よくかき混ぜることをすすめています。
逆に避けたいのは、「とりあえず鍋のまま冷蔵」「翌日に何となく温め直してまた置く」のような、ぬるい時間帯を何度も作る動きです。分岐さえ押さえれば、家庭でも十分コントロールできます。
急冷のコツは「浅く広く」。真ん中を早く冷やす
急冷の基本は、熱の逃げ道を増やすことです。深い鍋は表面積が小さく、中心の熱が逃げるまで時間がかかります。だから「浅く広く」が効きます。バットや浅めの保存容器に移すだけで、中心まで冷えるスピードが上がります。
さらに効くのが、容器ごと冷やす工夫です。たとえば、シンクに水を張って容器を入れる水冷や、氷水を使う方法。容器の外側から熱を奪うので、冷える速度が上がります。ここで重要なのは、フタをぴったり閉めて湯気を閉じ込めないこと。蒸気が抜けると冷却が進みやすくなります。
東京都は「小さな容器に小分けして、なるべく早く冷蔵庫に入れる」と説明しています。
急冷は特別な道具がなくてもできます。ただし、熱いものをすぐ冷蔵庫に入れると庫内温度が上がり、他の食品にも影響が出ることがあります。現実的には、まず浅く小分けして粗熱を短時間で飛ばし、できるだけ早く冷蔵庫へ、という順番がやりやすいです。
小分け保存の実力。鍋のままより冷えやすい
「鍋ごと冷蔵」と「小分けして冷蔵」の差は、体感以上に大きいことがあります。農林水産省のページでは、カレーを鍋のまま冷蔵した場合と、小分けして冷蔵した場合で中心温度の下がり方を比べ、小分けの方が速く冷ますことができた、と紹介されています(実験は一例と注意書きつき)。
この差は、家庭の安全に直結します。ウェルシュ菌は増えやすい温度帯にいる時間を短くするのが重要だからです。
小分けの現実的なコツは、容量を欲張らないことです。目安としては、一つの容器にぎゅうぎゅう詰めにせず、厚みを作らない。さらに、冷め始めたら一度かき混ぜて温度ムラを減らす。
冷蔵後は、食べる分だけ取り出して温め直すと、全体を何度も温める必要がなくなります。温め直しと再放置を繰り返すのは、ぬるい時間帯を増やす行為なので避けたい。小分けは、保存のためだけでなく、その後の運用まで楽にしてくれます。
捨てる判断が必要なサインと、迷いを減らす考え方
食べ物を捨てるのは気が重いものです。でも、ここで大事なのは「不確かな安全」に賭けないことです。ウェルシュ菌は通常の加熱で芽胞が残り得るうえ、症状が出るまで時間が空くこともあります。
捨てる判断の軸は、確率を下げられる行動を取れたかどうかです。放置に気づいた時点で、すでに室温で長く置いていた。しかも大鍋で中心までぬるい状態が続いた可能性が高い。さらに、その後も鍋のまま放置してしまった。こうなると、いまから急冷や再加熱をしても「安心」の根拠が弱くなります。
一方で、放置後すぐに小分けして急冷し、冷蔵し、翌日に十分な温め直しをする。ここまでできていれば、リスクを下げる方向の根拠が積み上がります。
迷いを減らすコツは、自分の中で「捨てる条件」を先に決めておくことです。たとえば「室温が高い日に数時間放置したら廃棄」「体の弱い家族がいる日は迷ったら廃棄」。ルールにしておくと、気持ちが揺れにくくなります。
食べるなら温め直しが勝負:できること・できないことを分けて考える
目標は「全体がしっかり沸く」まで。混ぜながら加熱する
温め直しでやるべきことは、表面だけ温めるのではなく、全体に熱を通すことです。東京都は、保存したカレーなどを食べる前にぐつぐつするまで再加熱し、全体に熱が行きわたるようよくかき混ぜながら加熱する、と説明しています。
食品安全委員会の資料でも、再加熱は発芽した菌(栄養細胞)の殺菌や毒素の不活化に役立つ、とされます。
ここでのコツは「底から混ぜる」です。カレーは焦げやすいので、鍋底にヘラを入れて、底にたまる部分を持ち上げるように混ぜます。沸騰しているように見えても、鍋の端や底が十分に熱くないことがあります。
もう一つのコツは、温め直す量を絞ることです。小分け保存しているなら、食べる分だけ温める。これなら短時間で全体が熱くなりやすい。大鍋のまま温め直すと、中心まで熱が届くのに時間がかかり、その間に周囲だけ煮詰まって焦げる、といった失敗が起きやすいです。安全とおいしさを両立するなら、温め直しは「少量を確実に」が強いです。
電子レンジだけはムラが出やすい。家庭でできるムラ対策
忙しいと電子レンジで済ませたくなります。ただ、レンジはどうしても温度ムラが出やすい。カレーのように粘度がある料理は、外側だけ熱くなって中心がぬるい、が起きやすいです。ムラが残ると「ぬるい部分」ができ、安心感が落ちます。
レンジを使うなら、対策は三つです。ひとつ目は、途中で必ず取り出して混ぜること。二つ目は、容器の中央をくぼませ、厚みを均一にすること。三つ目は、仕上げに鍋でひと煮立ちさせることです。
東京都がすすめる「ぐつぐつするまで加熱し、よくかき混ぜる」に近づけるなら、レンジだけで完結させない方が安心しやすいです。
もちろん、レンジでも十分加熱できる場合はあります。ただし「短時間で温かくなった気がする」は危険です。表面の湯気や香りにだまされず、混ぜたときに全体が同じくらい熱いかを確かめる。家庭でできる現実的な落としどころは、このあたりです。
保存温度の基本は「10℃以下」か「55℃以上」。中途半端が危ない
保存の温度は、覚えやすい線引きがあります。食品安全委員会の資料では、増殖阻止として「小分け」と「10℃以下または55℃以上での保存」が有効だとされています。
家庭で現実的なのは、冷蔵と冷凍です。冷蔵庫は通常10℃より低い設定で使われることが多く、ここに早く入れるのが基本。冷凍はさらに増殖を抑えられます。ただし、冷蔵庫に入れさえすればよいわけではなく、「入れるまでの冷却」が勝負です。深い鍋のまま入れると、中心が10℃以下になるまで時間がかかり、その間にリスクが残ります。
もう一方の55℃以上は、業務の保温器や給食現場の考え方に近いです。家庭では長時間55℃以上を維持するのは難しいので、「食べる直前まで火を弱くして保温」程度に留め、長時間の保温運用は避けるのが無難です。
中途半端に温かいまま放置するのが、最も避けたい形。保存は「冷たい」か「熱い」に振り切る。これが安全の原則です。
温め直し回数より大事なのは「冷ます速さ」と「置く時間」
「温め直しを何回までなら大丈夫?」と聞かれることがあります。でも本質は回数ではなく、危ない温度帯にいた時間の合計です。ウェルシュ菌は増えやすい温度帯があり、その時間を短くするのが予防の中心だとされています。
たとえば、作った後に室温で長く置いてしまった。翌日に温め直したあと、また食卓に出しっぱなしにしてぬるくなった。これを繰り返すと、そのたびに危ない温度帯を通過する時間が増えます。逆に、食べる分だけ小分けして冷蔵し、食べるときに一気に温めて食べきるなら、温度帯の通過回数は同じでも、通過する時間を短くできます。
回数を気にするより、運用を整える方が効果が高いです。具体的には「食べる分だけ温める」「温めたらその場で食べきる」「余ったらすぐ冷ます」の三つ。難しいテクニックではなく、段取りの問題です。段取りを変えるだけで、カレーはぐっと安全に寄せられます。
具材別の注意点(肉、じゃがいも、きのこ、シーフード)
カレーそのものの危険は主に温度管理ですが、具材でも失敗しやすい点があります。肉はしっかり火を通すのが大前提。作りたてで十分加熱されているなら、その後の問題は「冷却と保存」です。
じゃがいもは、翌日に食感が変わりやすく、再加熱で崩れたり粉っぽくなったりします。味の面では、翌日分はじゃがいもを入れすぎない、別ゆでして後入れするなどの工夫が効きます。安全というより“おいしさの維持”の話ですが、結果として「温め直しで無理をしない」運用につながります。
きのこやシーフードは、水分が出て味が変わりやすい。特にシーフードは再加熱で固くなりやすいので、翌日に食べる前提なら別に火を入れて後から合わせると、短時間の温め直しで済みます。
短時間で確実に全体を熱くできる設計は、安全にもつながります。東京都がすすめるように、再加熱では全体がしっかり熱くなることが重要だからです。
具材の工夫は、実は温度管理の味方。食感を守る工夫が、無駄な“ぬるい時間”を減らしてくれます。
もし体調が怪しいとき:症状の目安と受診の判断
出やすいタイミングは食後6〜18時間。症状の特徴を知る
ウェルシュ菌食中毒の特徴は、食べてすぐではなく、少し時間が経ってから症状が出やすいことです。食品安全委員会の資料では、潜伏期間は6〜18時間(平均10時間)の後に、主に腹痛と下痢などの症状を起こし、発熱や嘔吐はほとんどみられない、とされています。
この特徴を知っておくと、「夕食で食べて夜中から朝にかけておなかが痛い」といったときに、原因の見当をつけやすくなります。逆に、食後すぐの吐き気や嘔吐が中心なら、別の原因の可能性もあります(もちろん自己判断は禁物です)。
多くの場合は1〜2日で回復するとされていますが、体力が落ちていると水分が足りなくなりやすい。
症状の“型”を知ることは、不安を減らすことにもつながります。闇雲に怖がるのではなく、「起こりやすい時間帯」「起こりやすい症状」を押さえて、冷静に次の行動を選べるようにしておきましょう。
家でできる対応は水分が最優先。無理に食べない
下痢や腹痛が出たとき、家庭で一番大事なのは水分です。下痢は体から水分と塩分が出ていくので、放っておくと脱水になりやすい。特に子どもや高齢者は、体の中の水分の余裕が少ないので注意が必要です。
飲み物は、一気飲みより少量をこまめにが基本です。水だけだと塩分が足りないことがあるので、体調に合わせて経口補水液やスポーツドリンクを選ぶのも手です。ただし、甘い飲料はおなかの状態によっては合わないこともあるので、少しずつ試すのが無難です。
食事は無理に取らなくて構いません。落ち着いてきたら、消化の良いものを少しずつ。脂っこいものや刺激が強いものは避けます。
そして、同じ鍋のカレーを「もったいないから」と続けて食べるのはやめましょう。原因が疑わしい食品はそこで止める。回復を早めるうえでも大切です。
受診を考えたいサイン(脱水、強い腹痛、長引く下痢など)
多くは自然に回復するとされますが、受診を考えた方がいいサインもあります。強い腹痛が続く、水分を取ってもすぐ吐いてしまう、ぐったりしている、尿が極端に少ない、口の中が乾き続ける、ふらつく。これらは脱水が進んでいる可能性があります。
また、下痢が丸一日以上強く続く、血が混じる、熱が高いなど、典型的なパターンから外れる場合も相談の目安になります。ウェルシュ菌食中毒は発熱や嘔吐が少ないとされていますが、だからこそ例外的な症状があるときは自己判断しない方が安全です。
小さな子ども、高齢者、妊娠中、持病がある人は、早めに医療機関へ相談する方が安心です。夜間や休日なら、地域の救急相談窓口を活用するのもよいでしょう。
受診の判断は迷いがちですが、基準を持つと動きやすいです。「水分が取れない」「意識がはっきりしない」「弱い人がつらそう」この三つがあれば、ためらわないのが基本です。
家族が同じものを食べたときの動き方(記録と相談先)
同じカレーを家族で食べた場合、誰かが体調を崩したら「連鎖」を止めるのが先です。まず、その料理はそこで終わりにします。残っている分は保管しておくと、医療機関や保健所に相談するときの助けになることがあります(ただし、自己判断で食べ直すために残すのはやめます)。
次に、いつ何をどれくらい食べたか、症状が出た時間、症状の内容をメモします。ウェルシュ菌食中毒は食後6〜18時間で症状が出やすいとされるため、食事の時間と発症の時間が整理できると、相談がスムーズになります。
家族の中で体の弱い人がいるなら、その人の様子を優先して見ます。下痢が始まる前から水分を少しずつ取らせるだけでも、後が楽になることがあります。
相談先としては、体調が重いなら医療機関、集団で症状が出ているなら保健所も視野に入ります。いずれにしても、記録があると状況説明が短く済み、必要な助言をもらいやすくなります。
次から困らない作り置きルール(家庭版の安全運用)
最後に、次から同じ不安に戻らないための家庭ルールをまとめます。ウェルシュ菌対策は難しい知識より、温度管理の習慣です。食品安全委員会は、再加熱による殺菌と、調理後の速やかな喫食、小分けと低温または高温での保存が有効だとしています。
家庭でのルールはこれで十分です。作ったら「食べる分を残して小分け」。浅い容器で粗熱を短時間で取り、早めに冷蔵。翌日は食べる分だけ温め、全体がしっかり熱くなるまで混ぜながら加熱。
もし大量に作るなら、最初から保存前提の設計にします。具材を翌日用と当日用で分ける、じゃがいもは後入れにするなど、温め直しを短くする工夫を入れる。結果として、危ない温度帯にいる時間が短くなります。
「室温で置くのは短く」「保存は小分け」「食べる前はしっかり加熱」。この三つを家の合言葉にできれば、カレーは安心して楽しめます。
まとめ
室内に置いてしまったカレーが安全かどうかは、時間だけで決まりません。ポイントは、増えやすい温度帯にいる時間をどれだけ短くできたかです。
ウェルシュ菌は自然界に広く存在し、加熱しても芽胞が生き残ることがあるため、調理後の冷却が遅いとリスクが上がります。
保存は10℃以下か55℃以上を意識し、小分けして早く冷やすのが効果的です。食べると決めたなら、全体がしっかり沸くまで混ぜながら温め直す。体調が怪しいときは、食後6〜18時間で起こりやすい腹痛や下痢という特徴を踏まえ、水分を優先し、つらいときは早めに相談する。
