「オープンマリッジって、結局どういう意味?」
そんな疑問に、最新の話題や研究、法律のポイントまでまとめて答えます。
海外発の考え方ですが、日本でも注目度が高まっています。ただし合意があってもリスクはゼロではありません。
この記事では定義から違い、実際のルール作り、話題の実例、成功と失敗の分かれ目まで、はじめてでも迷わない順番でやさしく解説します。
オープンマリッジとは何か
定義と特徴
オープンマリッジは、夫婦が互いの合意のもとで、配偶者以外の人との恋愛や性的な関係を認め合う結婚のかたちです。
英語の “open marriage” は辞書でも「結婚している当人同士が、外部の性的パートナーを認める合意をした関係」と説明されています。
もともとは1970年代のアメリカで話題になり、近年は「倫理的・合意的な非一夫一婦(CNM)」の一タイプとして説明されることもあります。
ポイントは、隠れてこっそりではなく「合意と話し合い」が前提にあること。
似た言葉に「スウィンギング」や「ポリアモリー」もありますが、恋愛感情の有無や関係の広がり方が少し違います。
なお、呼び方は違っても、本質は「二人でルールと境界を決め、透明性を保つ」ことにあります。
海外の解説・辞書や百科事典でもこの点が共通して示されています。
不倫・浮気との違い
いちばんの違いは「合意の有無」と「透明性」です。
不倫・浮気は相手に隠れて行うため、信頼を壊しやすく、発覚すれば重大なトラブルになります。
一方でオープンマリッジは、はじめに二人で合意し、どこまでOKかを話し合います。
とはいえ、日本の法律上は話が別です。
最高裁は「配偶者のある者が自由意思で配偶者以外と性的関係を持つこと」を“不貞行為”と定義しています。
つまり、夫婦が合意していても、状況によっては離婚理由として扱われ得ます。
さらに、場合によっては慰謝料請求などの法的リスクが残る可能性も弁護士解説で指摘されています。
合意があればすべて免責される、というわけではないことを覚えておきましょう。
日本での認知度
日本では言葉自体の認知がまだ高くありません。
たとえば既婚者1,000人調査(2021年)では、約9割が「オープンマリッジを知らない」と回答しています。
最近は話題が増えてきたとはいえ、一般的な理解はこれからという段階です。
価値観の多様化は進んでいますが、社会の目線や制度とのすり合わせには時間がかかるのが現実です。
メリットと魅力
自由と新しい恋愛体験
オープンマリッジを選ぶ人たちは、「自分らしさを大事にしたい」「一人の相手だけでは満たせない面を正直に扱いたい」と考えることがあります。
合意の上で外部の関係を持てるため、欲求や好奇心を押し殺さずにいられるのが利点です。
研究面でも、CNM(合意的な非一夫一婦)と一夫一婦の満足度に大差はない、というメタ分析の報告も出ています。
「構造」そのものより、当事者のコミュニケーションや価値観の一致が満足度を左右しやすいという指摘です。
夫婦関係のリフレッシュ
外での体験があるからこそ、改めて二人の関係を見直す人もいます。
距離がある時間が「相手を恋しく思う気持ちを取り戻す」きっかけになるというカウンセリング実務の知見もあります。
重要なのは、ルールの共有、感情のケア、健康面の安全対策などを徹底し、二人の信頼貯金を減らさない工夫をすること。
体験談や専門家のアドバイスでも、「合意・境界・定期的な話し合い」の三本柱が欠かせないと繰り返し語られています。
自己成長や価値観の広がり
複数の人と関わることで、自分の思い込みに気づいたり、コミュニケーション力が鍛えられたりします。
海外の心理・家族研究でも、「CNMは当事者に自律性や対話力を求めるため、自己理解や相互理解が深まりやすい」という示唆があります。
もちろん、向き・不向きはあります。
理屈の上では魅力的でも、実際に続けるには高い誠実さとスキルが必要です。
デメリット・リスク
嫉妬や不安の問題
頭では「合意だからOK」と思っていても、感情は別です。
相手が外で時間を過ごすほど、比べてしまったり、取り残された気持ちになったりします。
CNMの研究でも、関係の維持には「嫉妬の扱い方」「境界の再調整」「支え合うコミュニティ」などの条件が欠かせないとされます。
うまくいくカップルもあれば、感情が追いつかずに通常の一夫一婦へ戻るケースもある、という報告もあります。
社会的批判や法律リスク
日本の制度は一夫一婦制を前提とします。
最高裁の“不貞行為”の定義は明確で、裁判上の離婚事由(民法770条)にも位置づけられています。
事前の合意があっても、後から気持ちが変わり、離婚や慰謝料を求める展開は「十分あり得る」と弁護士解説でも注意喚起されています。
メディアの法務インタビューでも、合意の有効性自体が争点になり得る、とされています。
「合意だから安心」とは言えません。
子供や家庭への影響
子供への影響は、研究がまだ少なく結論づけが難しい分野です。
海外の質的研究では、ポリアモリー家庭の子供が良好な経験を語る例も報告されていますが、偏見や周囲の目がストレスになることもあります。
つまり「関係の形」そのものより、家庭内の安定、安全、誠実なケアが左右すると考えられます。
日本では社会的理解が十分でないため、子供にどう説明するか、誰に開示するかは慎重な判断が必要です。
ルールと成功の秘訣
夫婦間の合意形成の仕方
スタートは「価値観の棚おろし」から。
なぜ開くのか(性的充足/恋愛の探求/自分らしさ)を言語化し、同意できるところと無理なところを線引きします。
次に、合意の“書き起こし”です。
口約束は誤解のもと。更新日や見直し頻度、健康管理、秘密にしない情報の範囲などを書面化し、少なくとも月1回は「定期点検ミーティング」を行いましょう。
カップルセラピーの実務でも、合意→試行→見直しの循環を回すことが推奨されます。
境界線とルールの具体例
実務でよく挙がる“線引き”を、使いやすい形で整理します。
下の表はあくまで例。二人用にカスタムしてください。
項目 | 例(OK/NGの線) | 補足ルール |
---|---|---|
関係の種類 | 性的のみはOK、恋愛感情はNG など | 恋愛に発展しそうなら事前相談 |
連絡頻度 | 他者との連絡は○時~○時のみ | スマホはロック解除しない・覗かない |
情報共有 | 会う前後に一言報告 | 詳細は話しすぎない(感情保護) |
場所 | 自宅はNG、ホテルのみ | 家庭の生活圏は守る |
健康 | 検査を○ヶ月ごとに | 防護具の使用を徹底 |
緊急停止 | どちらかが「レッド」で即中止 | 再開は話し合い後 |
海外のCNM実務やカップル相談のガイドでも、境界の明文化と定期的な見直しが鍵だとされています。
コミュニケーションの工夫
コツは3つ。
①報告は“必要十分”に:相手の感情を守るため、知りたい量をすり合わせる。
②感情の言語化:嫉妬・不安・寂しさを責めずに共有する。
③安全・誠実・尊重:健康管理と相手の人権への配慮は最優先。
心理・健康メディアのまとめでも、CNM成功の条件は「正直・敬意・継続的なチェックイン」に集約されます。
日本での事例と結末
ヒカルと進撃のノアの宣言
2025年9月14日、YouTuberのヒカルさんが配偶者の進撃のノアさんとともに「お互いに浮気OK=オープンマリッジで生きていく」と公表し、大きな議論になりました。
翌日以降も動画やSNSで本音を語り、登録者数の減少など余波も報じられています。
ノアさんは動画で「めっちゃ幸せ」と心境を話し、二人の合意を強調しました。
賛否が大きく割れたのは、「制度への違和感」「言い方の強さ」「価値観の衝突」など、複数の要因が重なったためと見られます。
実践者の声と社会的反応
国内メディアやコラムでは、オープンマリッジを「なんでもあり」と誤解せず、むしろ高度な誠実さと対話が必要だという指摘が増えています。
同時に、社会的スティグマの強さが当事者の負担になる、という海外研究の示唆もあります。
つまり、幸福度は「形」よりも「やり方」と周囲の理解に影響される面が大きいと言えます。
成功と失敗のパターン
うまくいく例では、開始前に動機と境界を深掘りし、開始後も定点観測で不安を素早く共有します。
第三者(セラピスト・信頼できる友人)を入れて感情の換気をすることも効果的です。
失敗例は、
・力関係が偏ったまま始める
・合意を「譲歩」で取り付ける
・ルールが曖昧
・健康、安全の管理が甘い
といったパターン。
さらに日本では、制度・世間の目・子供への開示など独特のハードルがあります。
合意があっても法的トラブルの可能性は残るため、「やってみてダメなら戻せばいい」で済まない現実も踏まえましょう。
オープンマリッジの意味とは?まとめ
オープンマリッジは、「合意と透明性」を土台にした結婚の一形態です。
自由度や自己理解の深まりといった魅力がある一方、嫉妬・不安・社会的スティグマ・法的リスクなど高い難易度も抱えています。
日本では認知がまだ低く、制度面の摩擦も小さくありません。
始めるなら、①動機の言語化、②境界とルールの明文化、③健康・安全の徹底、④定期的な見直し、⑤第三者の支援、を基本セットに。
とくに子供がいる家庭は「誰に、どこまで、どう説明するか」を丁寧に整えましょう。
「形が正解」ではなく、「二人が納得し続けられる運転方法」が肝心です。