「不安を助長する」「問題を助長する」といった表現を見て、「助長するって悪い意味なの?」と疑問に思ったことはないでしょうか。
「助ける」と「長」という漢字が使われているため、良い意味のようにも見えて少しわかりにくい言葉です。
結論からいうと、「助長する」は悪い意味だけの言葉ではありません。
不安や混乱などをさらに強める悪い方向の使い方がある一方、成長や発展を助ける前向きな意味でも使えます。
実際、現在の生活保護法でも「自立を助長する」という表現が使われています。
さらに語源をたどると、中国の古典『孟子』にある、苗を早く育てようと無理に引き上げた結果、苗を枯らしてしまった故事につながります。
この故事を知ると、なぜ「助長する」が悪い意味に感じられる場合があるのかも理解しやすくなります。
この記事では、「助長する」の正確な意味から語源、悪い意味と良い意味の見分け方、例文、「増長」との違い、自然な言い換えまでわかりやすく解説します。
読み終わるころには、「不安を助長する」「成長を助長する」といった表現を見ても、文脈から正しい意味を判断できるようになるはずです。
「助長する」は悪い意味?まず結論から解説
「助長する」の意味を簡単にいうと?
「助長」は「じょちょう」と読みます。
「助長する」とは、簡単にいうと「物事が成長・発展するのを助けること」や「ある傾向をさらに強くすること」を表す言葉です。
さらに、中国の古典『孟子』の故事に由来する「余計な手助けをした結果、かえって害を与える」という意味もあります。
そのため、「助長する」は必ず悪い意味になる言葉ではありません。
何を助長するのかによって、前向きにも後ろ向きにも使えます。
たとえば、「不安を助長する」であれば「不安をさらに強くする」という悪い意味になります。
「混乱を助長する」なら、「すでにある混乱をさらに大きくする」と考えるとわかりやすいでしょう。
一方、「自立を助長する」であれば、「自立できるように支える」という前向きな意味になります。
実際、現在の生活保護法第1条には、最低限度の生活を保障するとともに「その自立を助長すること」が法律の目的として定められています。
つまり、「助長する=悪化させる」とだけ覚えてしまうのは正確ではありません。
まずは「何を強めるのか」「何の成長を助けるのか」を確認することが大切です。
「助長する」が悪い意味に感じられるのはなぜ?
「助長する」という言葉を見て、悪い意味だと感じること自体は不思議ではありません。
「不安を助長する」「混乱を助長する」「投機を助長する」といったように、好ましくない傾向がさらに強くなる場面でも使われるからです。
実際、厚生労働省の情報公開に関する判断基準でも、情報の公開によって投機を「助長する」という用法が見られます。
防衛省防衛研究所の資料でも、既存の社会的対立や不信感を強める文脈で「社会不安の助長」という表現が使われています。
ただし、こうした実例があるからといって、日本語全体で悪い意味の使用頻度のほうが高いとまでは断定できません。
使用頻度を比較するには、大規模な日本語コーパスなどを使った別の検証が必要になるためです。
ここでは、「好ましくない傾向を強くする用法が実際に存在する」と理解しておくのが正確です。
さらに、「助長」という言葉の背景には、良かれと思って手を加えた結果、苗を枯らしてしまった『孟子』の故事があります。
この故事も、「助長」に悪い印象を持ちやすい理由のひとつと考えることができます。
悪い意味には大きく分けて2つの考え方がある
「助長する」の悪いニュアンスを理解するときは、2つに分けるとわかりやすくなります。
ひとつは、「もともとある悪い傾向をさらに強くする」という使い方です。
「不安を助長する」「対立を助長する」「混乱を助長する」などがこれに当たります。
この場合、「助長する」は「さらに強める」「より大きくする」と言い換えやすい言葉です。
もうひとつは、『孟子』の故事から生まれた「余計な手助けをして、かえって害する」という意味です。
こちらは単に悪い傾向を強めるというより、「助けようとした行為そのものが逆効果になった」という点が重要です。
たとえば、子どもを早く成長させたいからと何でも親が先回りしてしまい、本人が自分で考える機会を失ってしまうような状況を想像すると理解しやすいでしょう。
この2つは関連していますが、まったく同じ意味ではありません。
「悪いものをさらに強くする場合」と「余計な手助けで逆効果になる場合」があると整理しておけば、文章を読んだときに意味をつかみやすくなります。
「助長する」には良い意味もある
「助長する」は悪い意味だけの言葉ではありません。
成長や発展に力を添えるという前向きな意味でも使えます。
そのことがよくわかるのが、生活保護法です。
生活保護法第1条では、必要な保護によって最低限度の生活を保障するとともに、その人の「自立を助長すること」を目的として掲げています。
厚生労働省の生活保護関係資料でも、「自立の助長」は最低生活の保障と並ぶ制度の目的として扱われています。
ここでいう「助長」は、自立を悪くするという意味ではありません。
本人が自立して生活できるように支えるという前向きな意味です。
したがって、「助長という言葉を良い意味で使うのは誤用」という説明も正確ではありません。
ただし、日常生活では「成長を促す」「自立を支える」「発展を後押しする」といった言葉のほうが、意味をすぐ理解してもらえることがあります。
辞書上使えるかどうかと、実際の文章でわかりやすいかどうかは分けて考える必要があります。
良い意味か悪い意味かは前後の言葉で判断する
「助長する」の意味を判断したいときは、「何を助長しているのか」を見るのがもっとも簡単です。
「不安」「混乱」「対立」「依存」など、好ましくないものが目的語になっていれば、基本的には悪い方向の意味だと考えられます。
反対に、「自立」「発展」など前向きなものを対象にしている場合は、成長や進展を支える意味として読めます。
次のように整理するとわかりやすいでしょう。
| 表現 | 意味の方向 | 簡単な言い換え |
|---|---|---|
| 不安を助長する | 悪い方向 | 不安をさらに強める |
| 混乱を助長する | 悪い方向 | 混乱をさらに大きくする |
| 対立を助長する | 悪い方向 | 対立をさらに激しくする |
| 投機を助長する | 悪い方向 | 投機を活発にする方向へ働く |
| 自立を助長する | 良い方向 | 自立できるよう支える |
| 発展を助長する | 良い方向 | 発展を促す |
「助長する」という単語だけを切り取って善悪を判断するのではなく、文章全体を見ることが重要です。
迷った場合は、「さらに強める」または「成長を助ける」と置き換えてみてください。
どちらの意味が自然なのか判断しやすくなります。
なぜ「助長する」は悪い意味にもなる?語源から理解しよう
「助長」の語源は中国の古典『孟子』
「助長」という言葉の背景には、中国の古典『孟子』があります。
該当する話は『孟子』の「公孫丑上」に記されています。
この話では、宋の国の人物が登場します。
その人物は、自分の畑にある苗がなかなか成長しないことを心配していました。
そこで、早く大きくしてやろうと考え、苗を一本ずつ引き上げます。
本人としては、苗の成長を助けているつもりでした。
しかし、家族が畑へ行って確認すると、苗は枯れていました。
自然に育つべきものへ無理に手を加えた結果、良い結果を生むどころか害を与えてしまったのです。
現在の「助長」という言葉を理解するには、この故事を知っておくと役立ちます。
漢字だけを見ると「助けて長くする」「成長を助ける」という前向きな印象がありますが、故事の中ではその手助けが逆効果になっています。
そのため、「余計なことをして、かえって悪い結果を招く」という意味が生まれました。
苗を早く育てようとして枯らしてしまった故事
『孟子』の故事で重要なのは、「助けること自体が悪い」と言っているわけではない点です。
問題なのは、成長を急ぐあまり、自然な過程を無視して無理に手を加えたことです。
原文では、苗が成長しないことを心配した宋の人物が苗を引き上げ、帰宅後に苗の成長を助けたという趣旨のことを話します。
ところが、その子どもが畑へ急いで見に行くと、苗は枯れていました。
最後には、その行為が役に立たないだけでなく、害まで与えたことが示されています。
現代の生活に置き換えると理解しやすくなります。
たとえば、子どもに失敗させたくないからと親がすべて答えを教えてしまえば、一時的にはうまく進んでも、自分で考える経験が不足するかもしれません。
新入社員を早く成長させたいからと、十分な説明なしに大量の仕事を任せれば、育成どころか混乱につながることもあります。
このように、「良い結果を急ぐあまり、必要以上に手を出して逆効果になる」という考え方が故事のポイントです。
本来の故事では「余計な手助けで害する」という意味
故事に基づく「助長」では、「助けようとする気持ち」と「実際の結果」が反対になっているところが特徴です。
本人は苗を成長させたいと考えていました。
しかし、行った手助けが不適切だったため、苗は枯れてしまいました。
この故事をもとに、「不必要な力添えをして、かえって害する」という意味が「助長」にあります。
そのため、「余計な世話によって相手の成長を妨げる」といった状況を説明するときにも、故事の考え方を応用できます。
ただし、現在の日本語における「助長」の意味を、この故事だけで決めつけるのは適切ではありません。
現在は、成長や発展を助ける意味や、ある傾向をさらに強くする意味でも使われています。
つまり、「語源では逆効果の話だから、良い意味の助長は間違い」ということではありません。
語源と現在使われている語義の両方を知っておくことが大切です。
現代では「ある傾向を強める」という意味でも使われる
現在の「助長する」は、『孟子』の故事そのものを意識しなくても使える言葉です。
特にわかりやすいのが、「ある傾向をさらに強くする」という用法です。
たとえば、「不安を助長する」といえば、不安がさらに強くなる方向に働くことを表します。
「混乱を助長する」なら、混乱した状態をさらに広げたり深めたりすることです。
国土交通省の過去の白書でも、エネルギー供給への依存度などが「混乱を助長した」という表現が使われています。
この使い方では、「何かを新しく生み出す」というより、「すでに存在する動きや傾向をさらに強める」と考えると理解しやすくなります。
たとえば、「発言が混乱を引き起こした」と書けば、その発言が混乱の発生原因になったように読めます。
「発言が混乱を助長した」と書けば、混乱をさらに大きくする方向に働いたという意味合いが出ます。
この違いを知っておくと、「助長する」を使うべき場面が見えやすくなります。
語源を知ると悪い印象を受ける理由がわかる
「助長する」という言葉から悪い印象を受ける理由を理解するには、語源と現在の用法を一緒に見るのが近道です。
語源となった故事では、手助けによって苗を成長させるつもりが、逆に苗を枯らしてしまいます。
さらに現在の日本語でも、「社会不安の助長」「混乱を助長する」「投機を助長する」のように、望ましくない傾向を強める表現として実際に使われています。
この2つを知ると、「助長」にマイナスの印象を持つことがある理由は理解しやすくなります。
一方で、「自立を助長する」という前向きな用法も現行法に存在します。
つまり、悪い印象があることと、言葉そのものが悪い意味しか持たないことは別です。
文章を読むときには、「助長」という文字だけに反応するのではなく、何が助長されているのかを確認しましょう。
これだけで意味の取り違えをかなり防げます。
「助長する」の正しい使い方を例文でわかりやすく解説
悪い意味で使う「助長する」の例文
悪い意味で使う場合は、好ましくない状態や傾向を「助長する」の前に置くと意味がわかりやすくなります。
たとえば、次のような文章です。
| 例文 | 意味 |
|---|---|
| 根拠のない情報が人々の不安を助長した | 不安をさらに強くした |
| あいまいな説明が現場の混乱を助長した | 混乱をさらに大きくした |
| 挑発的な発言が両者の対立を助長した | 対立をさらに激しくした |
| 過度な援助が依存を助長する可能性がある | 依存する傾向を強める可能性がある |
| 問題の放置が無責任な行動を助長した | 無責任な行動が起こりやすい方向へ働いた |
悪い意味の「助長する」は、「さらに強める」と置き換えられることが多いのが特徴です。
ただし、「AがBを助長した」と書くと、AがBを強める方向に働いたという因果関係を示すことになります。
根拠を確認できていない事柄について、簡単に「助長した」と断定するのは避けたほうが安全です。
特に社会問題や健康、安全などを扱う文章では、「助長する可能性がある」「助長する要因になり得る」など、確認できている事実の強さに合わせて表現することが大切です。
言葉の意味が正しくても、事実関係が間違っていれば文章全体の信頼性は下がってしまいます。
良い意味で使う「助長する」の例文
良い意味の「助長する」も、日本語として成立します。
もっとも確実な実例のひとつが「自立を助長する」です。
現行の生活保護法第1条で実際に使われている表現であり、自立を支えるという前向きな文脈です。
厚生労働省の資料でも、生活保護制度における自立支援について「自立を助長する」という表現が繰り返し使用されています。
一般的な文章でも、意味の上では次のように使えます。
| 例文 | わかりやすい意味 |
|---|---|
| 適切な支援によって利用者の自立を助長する | 自立できるよう支える |
| 人材交流によって地域間の連携を助長する | 連携が深まるよう促す |
| 学習環境を整えて生徒の主体性を助長する | 主体性が育つよう支える |
ただし、前向きな内容なら、必ず「助長する」を選ぶ必要はありません。
「主体性を伸ばす」「交流を促進する」「自立を支える」としたほうが、読者に一度で意味が伝わる場合があります。
正しい言葉を使うだけでなく、読者が迷わず理解できる言葉を選ぶことも大切です。
「不安を助長する」はどんな意味?
「不安を助長する」とは、不安をさらに強くするという意味です。
「助長」の語義として示される代表的な使い方のひとつでもあります。
ここで注意したいのは、「不安を生み出す」と完全に同じではないことです。
「不安を生み出す」は、それまで存在しなかった不安を新しく発生させた場合にも使えます。
一方、「不安を助長する」は、何らかの要因によって不安がさらに強くなったという意味で読みやすい表現です。
たとえば、災害や事故が発生し、すでに多くの人が心配している状況を考えてみましょう。
そこに事実確認ができていない刺激的な情報が広がり、不安がさらに強まった場合には、「不確かな情報が不安を助長した」と表現できます。
逆に、ある出来事によって初めて不安が生まれたことを強調したいなら、「不安を引き起こした」のほうが適切な場合があります。
「助長する」は、すでにある状態や傾向に力が加わる感覚を意識すると使い分けやすくなります。
「助長する」と「助長させる」はどう使い分ける?
「助長する」と「助長させる」の両方を目にすることがあります。
「助長」は「する」を付けて動詞として使える言葉なので、「この発言が混乱を助長する」のような文章だけで意味は成立します。
そのため、「不安を助長させる」と書こうとしている場合でも、「不安を助長する」としたほうが簡潔なケースがあります。
ただし、「助長させる」という形そのものを一律に誤用とすることはできません。
実際、運輸安全委員会の事故調査に関する公的資料でも、「ロール振動の発生を助長させた可能性がある」という表現が使われています。
消防関係の技術資料にも、「延焼を助長させた」という実例があります。
したがって、「助長させるを使ったら間違い」という単純な判断は避けたほうがよいでしょう。
文章をすっきりさせたい場合は、まず「させる」を外して意味が変わらないか確認する方法がおすすめです。
「その制度が依存を助長させる」より「その制度が依存を助長する」のほうが簡潔に伝わるなら、後者を選べます。
間違いやすい・不自然になりやすい使い方
「助長する」を正しく使うには、「何が強くなるのか」を明確にすることが大切です。
たとえば、「この制度は状況を助長した」と書いても、何がどう変わったのかがよくわかりません。
「この制度が利用者の依存を助長した」「この取り組みが地域交流を助長した」のように対象を具体的にすると、意味が伝わりやすくなります。
また、「助長する」は比較的硬い表現です。
友人に対して「その話を聞くと不安が助長される」と言っても意味は通じますが、「その話を聞くと余計に不安になる」のほうが自然な場面もあります。
良い意味で使うときも同じです。
「社員の努力を助長する」と書くより、「社員の努力を後押しする」としたほうが自然に感じられる文章があります。
間違いかどうかだけでなく、「その場面に合っているか」「読者がすぐ理解できるか」まで考えると、より適切な表現を選べます。
難しい言葉を使うことより、意味を正確に伝えることを優先しましょう。
「助長する」の類語・言い換えは?意味ごとに使い分けよう
悪い意味なら「悪化させる」「拍車をかける」
悪い意味の「助長する」は、文脈によって「悪化させる」や「拍車をかける」と言い換えられます。
ただし、完全に同じ意味ではありません。
「悪化させる」は、状態を以前より悪くすることを直接的に表せる言葉です。
「状況を助長する」では意味があいまいな場合でも、「状況を悪化させる」なら伝わりやすくなることがあります。
「拍車をかける」は、物事の進行をさらに速めることを表す言葉です。
たとえば、「人手不足に拍車をかける」といえば、人手不足がさらに進む様子が強調されます。
「人手不足を助長する」なら、ある原因が人手不足という傾向を強める方向へ働いたことに焦点を当てやすくなります。
結果が悪くなったことを簡潔に伝えたいなら「悪化させる」。
進む勢いを強調したいなら「拍車をかける」。
ある要因が傾向を強めたことを説明したいなら「助長する」。
このように使い分けると、文章の意味がより正確になります。
「あおる」と「助長する」のニュアンスの違い
「不安をあおる」と「不安を助長する」は、似た状況で使われることがあります。
ただし、受ける印象は少し異なります。
「あおる」は、人の感情や行動を刺激するニュアンスが強い表現です。
たとえば、必要以上に刺激的な情報を示して人々を怖がらせる場面なら、「不安をあおる」がよく合います。
一方、「不安を助長する」は、ある情報や仕組み、環境などが結果として不安をさらに強くすることを説明するときにも使えます。
つまり、「あおる」は刺激する行為に目が向きやすく、「助長する」は傾向が強まることに目が向きやすいと考えるとわかりやすいでしょう。
「対立をあおる」なら、発言などによって双方の感情を刺激する印象があります。
「対立を助長する」なら、何らかの要因によって対立がさらに深くなる方向へ進むことを、比較的客観的に説明できます。
文章でどこを強調したいのかによって使い分けましょう。
良い意味なら「促進する」「後押しする」がわかりやすい
良い意味の「助長する」を言い換えたい場合は、「促進する」が使いやすい候補です。
「促進」は、物事が早く進むように促すことを表します。
「交流を助長する」を「交流を促進する」、「発展を助長する」を「発展を促進する」とすれば、前向きな意味であることがわかりやすくなります。
もう少し柔らかい言い方なら、「後押しする」も便利です。
「社員の成長を後押しする」「新しい挑戦を後押しする」とすれば、日常的で伝わりやすい文章になります。
ほかにも、「伸ばす」「高める」「支える」「促す」などを使えます。
「主体性を助長する」なら「主体性を伸ばす」。
「自立を助長する」なら「自立を支える」。
「交流を助長する」なら「交流を促す」。
このように、伝えたい内容を一度簡単な日本語に置き換えてみると適切な言葉を選びやすくなります。
「助長する」を使わなければ意味が変わってしまうわけではないため、読者に合わせて柔軟に言い換えましょう。
「助長」と「増長」は意味が違う
「助長」と間違えやすい言葉が「増長」です。
読み方も「じょちょう」と「ぞうちょう」で似ていますが、意味は異なります。
「増長」には、程度が次第に激しくなることや、本人が高慢になってつけあがることという意味があります。
たとえば、「成功したことで彼は増長した」といえば、成功によって本人が調子に乗ったり思い上がったりしたという意味になります。
一方、「周囲の甘い対応が彼のわがままを助長した」なら、周囲の対応によってわがままな傾向がさらに強くなったという意味です。
「わがままが増長する」と「わがままを助長する」を比べても違いがわかります。
前者は、わがままそのものが強くなることに焦点があります。
後者は、何らかの要因がわがままを強める方向へ働いたことを表します。
一文字しか違わないため、入力ミスにも注意しましょう。
場面別の言い換えと反対方向の表現
「助長する」を別の言葉にしたいときは、文章が良い方向なのか悪い方向なのかを最初に考えると選びやすくなります。
次の表を参考にすると、言い換えの候補をすぐ探せます。
| 伝えたい内容 | 言い換え |
|---|---|
| 悪い状態をさらに悪くする | 悪化させる |
| 悪い傾向をより強くする | 強める |
| 進行をさらに速める | 拍車をかける |
| 人の不安や感情を刺激する | あおる |
| 良い変化を進める | 促進する |
| 成長を支える | 後押しする |
| 能力や性質を育てる | 伸ばす |
| 行動や理解につなげる | 促す |
反対方向の表現としては、「抑制する」「阻害する」などが考えられます。
「抑制する」は、物事をおさえとどめる意味です。
「阻害する」は、物事を妨げたり邪魔したりする意味です。
ただし、「助長する」にいつでも同じ対義語があるわけではありません。
「不安を助長する」の反対なら「不安を抑える」。
「成長を助長する」の反対なら「成長を阻害する」。
このように、対象に合わせて反対方向の言葉を選ぶと自然です。
「助長する」のよくある疑問をまとめて解決
「成長を助長する」という表現は間違い?
「成長を助長する」という表現を、意味の上から直ちに誤りとする必要はありません。
「助長」には、物事の成長や発展を助ける意味があるためです。
ただし、「助長」そのものに成長を助けるという意味が含まれているため、文章によっては少しくどく感じられることがあります。
たとえば、「子どもの健全な成長を助長する」という文章なら、「子どもの健全な成長を促す」「子どもの健全な成長を支える」としたほうがすっきりします。
専門的な文書や制度上の表現として「助長する」を選ぶ理由がある場合は、そのままでも意味は通じます。
一方、一般向けの記事や会話では、難しい表現を使う必要はありません。
「正しいか間違いか」だけで判断するのではなく、「この表現がもっとも自然か」という視点も持っておきましょう。
文章を書く目的は、難しい言葉を使うことではなく、伝えたい内容を正確に届けることです。
「発展を助長する」は良い意味として使える?
「発展を助長する」は、意味として成立する表現です。
「助長」には、成長や発展を助ける意味があるためです。
たとえば、「地域産業の発展を助長する」と書けば、地域産業が発展するよう力を添えるという意味に解釈できます。
ただし、一般的な文章では「地域産業の発展を促進する」「地域産業の発展を後押しする」としたほうが理解しやすいことがあります。
「助長する」に悪いイメージを持っている読者の場合、一瞬意味を迷う可能性があるからです。
もちろん、良い意味で使うこと自体が間違いなのではありません。
現在の生活保護法でも、「自立を助長する」という明確に前向きな用法が使われています。
したがって、「良い意味では使えない」という説明は避けるべきです。
意味として正しいかと、読者にとってわかりやすいかを分けて考えるのがポイントです。
「助長する」は褒め言葉として使っても大丈夫?
「助長する」は良い意味でも使えますが、人を直接褒めるための言葉とは少し性質が異なります。
基本的には、あるものの成長や傾向に力を加えることを説明する言葉です。
たとえば、「あなたの指導が社員の成長を助長しました」という文章は、意味を理解することはできます。
しかし、相手を褒めたい場面なら、「あなたの指導が社員の成長を後押ししました」「社員の成長に大きく貢献しました」としたほうが自然です。
良い意味を持つことと、褒め言葉として自然であることは別だからです。
制度説明や報告書のように、ある働きや効果を客観的に説明する文章なら「助長する」が合う場合があります。
相手への感謝や称賛を伝えたいなら、「支える」「後押しする」「貢献する」など、評価が直接伝わる言葉を選ぶとよいでしょう。
言葉の正しさだけでなく、文章の目的まで考えて使うことが大切です。
悪い意味だと誤解されたくない場合はどう言い換える?
前向きな内容なのに、悪い意味だと思われるのを避けたい場合は、無理に「助長する」を使う必要はありません。
「促進する」「後押しする」「支える」「伸ばす」「高める」などに言い換えると、意図がはっきりします。
たとえば、「社員の成長を助長する制度」なら「社員の成長を後押しする制度」とできます。
「地域交流を助長するイベント」なら「地域交流を促進するイベント」とすれば、前向きな目的が一読してわかります。
「子どもの主体性を助長する教育」なら「子どもの主体性を伸ばす教育」としたほうが柔らかくなります。
法律や専門文書では「助長」という表現が適切な場合もありますが、一般向けの文章では、わかりやすさも大切な判断基準です。
言葉は辞書的に正しくても、読者に違う意味で受け取られれば伝達としては失敗することがあります。
迷った場合は、「この言葉を初めて読む人でも意味がわかるか」という視点で言い換えてみましょう。
「助長する」の意味と使い方を一言でまとめると?
「助長する」を短くまとめるなら、「成長や発展を助けたり、ある傾向をさらに強くしたりすること」です。
悪い意味だけの言葉ではありません。
「不安を助長する」であれば、不安をさらに強くするというマイナスの意味になります。
「自立を助長する」であれば、自立できるように支えるという前向きな意味になります。
また、語源となった『孟子』の故事では、苗を早く成長させようと無理に引き上げた結果、苗を枯らしてしまいます。
そこから、「余計な手助けをして、かえって害を与える」という意味も生まれています。
覚えるときは、「助長=悪化」と固定してしまわないことが大切です。
「何を助長しているのか」を確認し、良い方向なのか悪い方向なのかを文脈から判断しましょう。
これだけ押さえておけば、ニュースや仕事の文書などで「助長する」を見かけても、意味を取り違えにくくなります。
「助長する」の意味・使い方まとめ
「助長する」は、「悪い意味だけを持つ言葉」ではありません。
物事の成長や発展を助ける意味と、ある傾向をさらに強くする意味があります。
また、『孟子』の故事に由来して、余計な手助けによってかえって害を与えるという意味もあります。
「不安を助長する」「混乱を助長する」のような文章では、好ましくない状態をさらに強める悪い意味になります。
一方、「自立を助長する」のように、良い方向への成長を支える意味でも使えます。
現行の生活保護法第1条にも「その自立を助長すること」という表現があり、良い意味の用法が現在も存在することを確認できます。
そのため、「助長する=悪化させる」とだけ覚えるのは正確ではありません。
意味がわからないときは、まず「何を助長しているのか」を確認してください。
悪い傾向なら「さらに強める」、前向きな変化なら「促進する」「支える」「後押しする」と置き換えると理解しやすくなります。
また、「助長」と「増長」は似ていますが、別の言葉です。
「助長」は別の物事の成長や傾向を強めることを表し、「増長」は程度が激しくなったり、人が高慢になってつけあがったりする場合に使われます。
良い意味で「助長する」を使おうとして文章がわかりにくくなる場合は、「促進する」「後押しする」「伸ばす」などへ言い換えても問題ありません。
言葉そのものを良い・悪いと決めつけるのではなく、文脈から意味を判断することが、「助長する」を正しく理解する一番のポイントです。
