国語の授業やテストで文章を読んでいると、「これは随筆なのか、小説なのか、それとも評論なのか」と迷うことがあります。
随筆にも登場人物や出来事が書かれ、小説にも作者の体験が使われ、評論にも個人的な感想が登場するため、題材だけでは簡単に区別できません。
三つを見分ける鍵は、文章の中に何が書かれているかではなく、何を中心に伝えようとしているかです。
この記事では、随筆・小説・評論の基本的な違いを比較表と例文で整理し、国語のテストで役立つ読み方まで分かりやすく解説します。
似ている文章との違いや、境界が分かりにくい場合の判断方法も紹介するので、文章の分類に迷ったときの参考にしてください。
随筆・小説・評論の違いをまず結論から理解しよう
一言で表すと「体験・物語・主張」の違い
随筆・小説・評論の違いを簡単に整理すると、随筆は「体験や身近な出来事から生まれた思い」、小説は「人物や出来事によって描かれる物語」、評論は「ある問題に対する考えや主張」が中心の文章です。
ただし、これは三つを見分けやすくするための基本的な目安です。
随筆にも物語のような場面描写がありますし、小説にも作者の体験や考えが反映されます。
評論の中に、筆者自身の経験や印象が書かれる場合もあります。
そのため、文章に何が含まれているかだけでなく、文章全体の中心がどこにあるかを考えることが大切です。
文部科学省の中学校学習指導要領解説では、小説と随筆は文学的な文章の例に挙げられ、説明・解説・論説などは説明的な文章として整理されています。
高等学校の学習指導要領解説では、評論や論説などが論理的な文章として扱われています。
迷ったときは、次のように考えてみてください。
「筆者が体験を通して何を感じたか」が中心なら随筆に近くなります。
「登場人物に何が起こり、どのように変化したか」が中心なら小説に近くなります。
「筆者が何を問題と考え、どのような理由で意見を述べているか」が中心なら評論に近くなります。
三つの違いが一目で分かる比較表
随筆・小説・評論の基本的な違いを表にまとめると、次のようになります。
| 比較するポイント | 随筆 | 小説 | 評論 |
|---|---|---|---|
| 中心となるもの | 体験・感想・気づき | 人物・出来事・物語 | 問題・意見・主張 |
| 主な目的 | 感じ方や考え方を伝える | 物語世界を描く | 考えを筋道立てて伝える |
| よく使われる材料 | 日常の出来事、記憶、観察 | 登場人物、場面、事件、会話 | 事実、資料、具体例、比較 |
| 文章の進み方 | 体験から思索へ広がる | 出来事に沿って展開する | 問題提起から結論へ進む |
| 読むときの注目点 | 思いや考えの変化 | 人物の心情と関係 | 主張と根拠のつながり |
| 事実との関係 | 実体験をもとにすることが多い | 虚構を含むことが多い | 事実や資料を根拠に用いる |
| 書き手の表れ方 | 比較的前面に出やすい | 語り手や人物を通して表れる | 主張する人として表れやすい |
この表は、文章を分類するための絶対的なルールではありません。
たとえば、筆者の実体験をもとにした小説もあれば、想像を交えた随筆もあります。
大切なのは、一つの表現だけで決めつけず、文章全体の目的や構成まで確認することです。
文部科学省の解説でも、文章の種類は書き手の目的や意図、虚構性の有無など、複数の観点から整理できると説明されています。
文章を書く目的と読者への伝え方の違い
随筆では、書き手が経験したことや目にしたものを入り口にして、自分の感じ方や考え方を読者に伝えます。
たとえば、通学途中に見かけた花について書く場合、花の名前や特徴を説明するだけでは随筆らしさはあまり生まれません。
その花を見たことで昔の記憶がよみがえったり、季節の変化に気づいたりするところに、書き手ならではの味が表れます。
小説では、読者に物語の世界を体験してもらうことが大きな目的になります。
作者が伝えたい考えを直接説明するとは限りません。
登場人物の行動、会話、風景、出来事などを通して、読者自身に意味を感じ取らせることがあります。
評論では、ある問題について読者に理解や納得を促すことが中心になります。
そのため、筆者の意見だけでなく、その意見を支える理由や事実が必要です。
文部科学省は、論理の展開について、結論や主張を導くための筋道の通った考えの進め方だと説明しています。
意見を述べ、それを裏付ける事実を示す方法や、具体的な事実から考えを一般化する方法などが基本例として挙げられています。
つまり、三つの違いは題材だけでは決まりません。
同じ「桜」を扱っていても、桜を見た思いを書くなら随筆、桜の下で起きた出来事を描くなら小説、花見のごみ問題について論じるなら評論になります。
事実とフィクションはどのように扱われる?
随筆は、書き手自身の体験や知識をもとに書かれることが多い文章です。
ただし、起きた出来事を時刻や順番まで正確に記録する文章とは限りません。
記憶を整理したり、印象に残った部分を強調したりしながら、読者に伝わる形へ整えることがあります。
そのため、随筆を新聞記事や調査報告書と同じような事実記録として読むのは適切ではありません。
小説は、作者が作り上げた物語として読まれるのが基本です。
実在する土地、歴史上の出来事、作者自身の経験が使われていても、登場人物の会話や心情、出来事の組み立てには創作が含まれる可能性があります。
高等学校学習指導要領解説でも、文学的な文章を書く際には、体験や思いを具体的に伝えるか、虚構の世界を通して描くかを検討すると説明されています。
評論では、主張を支えるために事実、資料、研究結果、歴史的な出来事、具体例などが使われます。
ここで重要なのは、事実と意見を区別することです。
「調査でこの結果が出た」という部分と、「この結果から制度を変えるべきだ」という部分は、役割が異なります。
もっとも、評論で使われる具体例が、必ずしも科学的な証拠として十分とは限りません。
一つの印象的な事例だけで大きな結論を出していないか、資料の使い方に無理がないかまで確認する必要があります。
作者・筆者・語り手・登場人物の違い
「文章を書いた人」を表す言葉には、作者、筆者、語り手などがあります。
似ているようですが、それぞれが指すものは同じではありません。
作者は、小説や詩などの作品を生み出した現実の人物を指す言葉です。
筆者は、評論、説明文、随筆などを書いた人を指すときによく使われます。
ただし、実際の用語の使い方は場面によって異なり、小説を書いた人を筆者と呼ぶことが完全な誤りになるわけではありません。
語り手は、小説の中で出来事を語る存在です。
一人称の「私」が登場する小説でも、その「私」が作者本人だとは限りません。
作者が、作品のために作った架空の人物である可能性があります。
登場人物は、物語の中で行動したり、話したりする人物です。
語り手自身が登場人物になる作品もあれば、物語の外側にいる語り手が人物たちを説明する作品もあります。
随筆の「私」は小説よりも書き手本人に近いことが多いものの、文章として整えられた「私」と、日常生活を送っている本人が完全に同じとは限りません。
国語の問題では、作品に書かれていない作者の経歴や性格を勝手に持ち込まず、本文の表現を根拠に読むことが基本です。
文部科学省の解説でも、文学的な文章では、人物の関係や心情の変化を描写に基づいて捉えることが求められています。
随筆・小説・評論にはどのような特徴がある?
随筆は体験をきっかけに感想や考えをつづる文章
随筆では、日常の小さな出来事が文章の出発点になります。
旅行、食事、季節、家族との会話、昔の記憶、読んだ本など、題材に大きな制限はありません。
重要なのは、起きた出来事の珍しさではなく、書き手がそこから何を感じ、何を考えたかです。
たとえば、「電車が遅れた」という出来事だけを順番に報告すれば、記録や報告に近い文章になります。
電車を待つ間に周囲の人を観察し、普段の自分がどれほど時間に追われているかに気づいたなら、随筆らしい内容へ変化します。
随筆には、小説のように大きな事件やはっきりした結末がなくてもかまいません。
一つの光景から過去の記憶へ移り、そこから人生や社会についての考えへ広がることもあります。
文章の流れが自由に見える一方で、読みやすい随筆には、題材を選んだ理由や最後に残したい思いがあります。
文部科学省の高等学校学習指導要領解説では、随筆を書く活動について、自分の知識や体験から題材を選び、感じたことや考えたことを自分との関わりを踏まえて書くことが示されています。
古典文学では、『枕草子』『方丈記』『徒然草』などが随筆として扱われています。
国文学研究資料館も、これらの作品を随筆に分類して公開しています。
小説は人物と出来事によって世界を描く物語
小説では、人物、場所、時間、出来事などが組み合わされ、作品の世界が作られます。
作者の考えが含まれていても、評論のように結論を直接説明するとは限りません。
人物がどのような選択をし、その結果として何が起きるのかを描くことで、人間や社会について考えさせる作品もあります。
小説を読むときに大切なのは、登場人物が口にした言葉だけではありません。
沈黙、視線、手の動き、部屋の様子、天候などが、人物の心情を表すことがあります。
「悲しかった」と書かれていなくても、人物が大切な手紙を何度も折り直す描写から、迷いや動揺を読み取れる場合があります。
また、小説には語り方の工夫があります。
物語の最初から順番に出来事を述べる作品もあれば、結末に近い場面から始まり、過去を振り返る作品もあります。
後の出来事を予想させる伏線や、特定の人物が見聞きできる範囲だけを描く視点も、小説を理解する手がかりです。
文部科学省の解説では、文学的な文章を読む際に、場面の展開、人物の関係、心情の変化、描写、構成、表現の効果などを捉えることが示されています。
評論は根拠を使って筆者の主張を伝える文章
評論は、文化、社会、科学、芸術、言葉、教育など、ある対象について考察し、筆者の見方を示す文章です。
中心にあるのは、筆者が読者に伝えたい主張です。
ただし、「私はこう思う」と書くだけでは、十分な評論にはなりません。
なぜそのように考えるのかを、理由、事実、具体例、比較、引用などによって支える必要があります。
評論では、最初に読者の常識を取り上げ、その見方に疑問を示すことがあります。
その後、新しい考え方を提示し、具体例や理由で説明して、最後に主張をまとめる流れがよく見られます。
一方で、すべての評論が同じ順番で書かれるわけではありません。
結論を最初に示す文章もあれば、複数の例を検討した後で結論へ進む文章もあります。
読むときは、段落ごとに「問い」「主張」「理由」「例」「反対意見」「結論」のどの役割を持っているか考えると、全体の筋道が見えやすくなります。
文部科学省の高等学校学習指導要領解説では、評論や論説を論理的な文章として扱い、書き手が何を述べようとしているか、どのような筋道で文章を書き進めているかを捉えることが求められています。
意見が書かれている随筆は評論になるの?
随筆にも、書き手の意見や主張が書かれます。
そのため、「意見があるから評論」と判断することはできません。
見分けるポイントは、意見が文章の中でどのような役割を持っているかです。
随筆では、体験、記憶、風景、出会いなどを描きながら、そこから生まれた思いへ進むことが多くなります。
読者は、書き手の体験をたどりながら、その人ならではの感じ方に触れます。
評論では、問題や主張が文章の中心にあり、体験は主張を説明するための材料として使われることが多くなります。
たとえば、筆者が図書館で本を借りた経験を書いていても、思い出や感動を中心に描けば随筆に近くなります。
その経験をきっかけに、公共図書館の役割について問題を提起し、資料や制度を検討するなら評論に近くなります。
実際の文章では、随筆と評論の性格を両方持つものがあります。
国立国語研究所の書き言葉コーパスでも、図書分類上の一つの区分として「日本文学評論・随筆・その他」がまとめられており、実務的な分類が必ずしも一語ずつ完全に分かれるわけではないことが分かります。
分類名だけで決めつけず、文章の中心と目的から判断する姿勢が必要です。
実話をもとにした小説と物語風の随筆の境界
実際に起きた出来事をもとにしていても、小説として発表された作品は、小説として読むのが基本です。
作者本人とよく似た人物が登場しても、その人物の言葉や心情がすべて事実だとは限りません。
出来事の順番を入れ替えたり、複数の人物を一人にまとめたり、会話を創作したりすることも考えられます。
反対に、随筆でも会話や場面を生き生きと描けば、小説のように感じられることがあります。
それでも、書き手が自分の体験や考えを伝える文章として書いているなら、随筆として扱われます。
境界を判断するときは、本文だけでなく、作品がどのようなものとして発表されているかも手がかりになります。
本の表紙、目次、初出時の掲載欄、作者の説明などに「小説」「随筆」と示されていれば、重要な判断材料になります。
ただし、分類名があれば文章の性質がすべて決まるわけではありません。
文学作品には、日記風の小説、物語性の強い随筆、評論的な小説など、複数の性格を持つものがあります。
文部科学省の解説でも、文章の種類は目的や意図、文体、虚構性の有無など、複数の観点から整理できるとされています。
「実話か作り話か」だけでなく、「読者にどのような文章として差し出されているか」を考えることが大切です。
同じ題材の例文で三つの違いを見分けよう
「雨の日」を随筆・小説・評論で書き分けた例
同じ雨の日でも、文章の中心を変えると、随筆・小説・評論の違いが見えてきます。
次の三つは、違いを説明するために作成した例文です。
随筆の例
小学生のころ、雨の日だけ履ける黄色い長靴が好きだった。
水たまりを見つけるたびに飛び込み、母に叱られたことまで楽しい記憶になっている。
大人になった今は、雨を見ると予定の遅れを心配する。
いつから私は、水たまりより時計を見るようになったのだろう。
この文章では、雨の日の記憶から現在の自分を振り返っています。
出来事そのものより、そこから生まれた気づきが中心です。
小説の例
美咲が駅に着いたとき、雨は屋根をたたくほど強くなっていた。
ベンチには、三年前に別れた兄が座っていた。
兄は美咲を見ると、壊れた青い傘を静かに差し出した。
美咲は何も言わず、その傘の下へ入った。
この文章では、登場人物、場所、過去の出来事、再会という物語が描かれています。
人物の関係や、この後の展開が読者の関心になります。
評論の例
雨の日に交通事故が増える理由を、運転技術の問題だけで説明することはできない。
視界の悪化や路面の変化に加え、時間の遅れを取り戻そうとする心理も考える必要がある。
安全対策では、道路設備だけでなく、余裕を持った行動を促す情報提供も重要である。
この文章では、雨天時の交通という問題に対して、理由と考えが示されています。
筆者が読者に納得してもらいたい主張が中心です。
体験から生まれた気づきや感想が中心なら随筆
随筆を見分けるときは、まず「書き手の体験」があるかを確認します。
ただし、体験が書かれているだけでは十分ではありません。
小説にも人物の体験が描かれ、評論にも筆者の経験が具体例として使われるからです。
随筆らしさが表れるのは、体験を通して書き手の感じ方や考え方が見えてくる部分です。
「旅行に行った」「料理を食べた」「友人に会った」という出来事から、記憶、価値観、人生観などへ思いが広がっていないかを確かめます。
時間の流れが自由であることも、随筆によく見られる特徴です。
現在の風景から幼いころを思い出し、再び現在へ戻ることがあります。
目の前の小さな出来事から、社会や人生について考え始めることもあります。
随筆には、書き手の個性が表れやすい言葉遣いもあります。
驚き、懐かしさ、戸惑い、ユーモアなどが、事実の説明だけではなく、文章の調子から伝わってきます。
読み終えたときに「何が起きたか」よりも、「書き手がどのように物事を見ているか」が強く残るなら、随筆である可能性が高いでしょう。
人物・出来事・場面の変化が中心なら小説
小説を見分ける大きな手がかりは、登場人物と物語の世界です。
名前のある人物が登場するとは限りません。
「私」「彼」「老人」「少女」などと呼ばれていても、その人物が作品内で行動し、出来事に関わっていれば、小説の可能性があります。
次に確認したいのは、場面や状況に変化があるかです。
誰かと出会う、秘密を知る、失敗する、決断するなどの出来事によって、人物の関係や気持ちが動いていきます。
小説では、心情が直接書かれないことも珍しくありません。
会話、行動、風景、持ち物などから、人物の思いを読み取る必要があります。
文部科学省の中学校学習指導要領解説でも、文学的な文章について、場面の展開、登場人物の関係、心情の変化を描写に基づいて捉えることが示されています。
また、物語に「私」が登場しても、作者本人の告白とは限りません。
語り手がどこまで知っているのか、誰の目を通して場面が描かれているのかを確認しましょう。
人物と出来事の組み合わせによって読者を作品世界へ導いているなら、小説としての性格が強い文章です。
問題提起・理由・根拠・結論が中心なら評論
評論を読むときは、文章が答えようとしている問いを探します。
問いが疑問文の形で書かれているとは限りません。
「近年、言葉の使い方が乱れていると言われる」という書き出しも、言葉の変化をどう考えるかという問題提起になっています。
次に、筆者の主張を確認します。
主張は「私はこう考える」と明確に書かれる場合もあれば、文章全体を読まなければ分からない場合もあります。
主張を見つけたら、それを支える理由や根拠を探します。
具体例、調査結果、歴史的事実、専門家の考え、他の立場との比較などが使われていないかを確認しましょう。
ただし、具体例があるだけで根拠として十分とは限りません。
一つの例が社会全体に当てはまるのか、引用された資料が筆者の結論を本当に支えているのかを考えることも大切です。
評論では、「しかし」「つまり」「たとえば」「なぜなら」「したがって」などの接続表現が論理の流れを示します。
これらの言葉に印を付けるだけでなく、前後の内容が対立、要約、例示、理由、結論のどれに当たるかを確かめてください。
迷ったときに使える五つの判別チェックポイント
文章の種類に迷ったときは、次の五つの質問を順番に考えると判断しやすくなります。
| 確認すること | 随筆に近い | 小説に近い | 評論に近い |
|---|---|---|---|
| 中心にいるのは誰か | 体験を振り返る書き手 | 物語内の登場人物 | 問題を論じる筆者 |
| 何が文章を進めるか | 記憶や思索の広がり | 出来事や場面の変化 | 主張と理由の積み重ね |
| 読後に何が残るか | 書き手の感じ方 | 人物や物語の印象 | 問題への見方 |
| 具体例の役割は何か | 思いを伝えるきっかけ | 物語を作る出来事 | 主張を支える材料 |
| 最も重要な問いは何か | 何を感じたのか | 何が起きたのか | 何を主張しているのか |
一つの質問だけで決める必要はありません。
三つ以上の答えが同じ種類に集まれば、その文章の中心的な性格が見えてきます。
答えが分かれた場合は、複数の性格を持つ文章かもしれません。
随筆的な評論や、評論性の強い小説も存在します。
学校の問題で作品の種類を答えるときは、教科書の分類、問題文の指示、出典情報も確認してください。
自分の印象だけでなく、本文の構成や表現を根拠に判断することが重要です。
国語のテストで役立つ随筆・小説・評論の読み方
随筆は体験前後の気持ちや考えの変化を読む
随筆の問題では、筆者が体験によってどのように変化したかを問われることがあります。
最初から最後まで同じ考えを持っているとは限りません。
出来事の前には気づいていなかったことを、経験の後で理解する流れがよく見られます。
まず、文章の中で起きた主な出来事を簡単に整理しましょう。
次に、その出来事の前後で使われている感情や評価を表す言葉を比べます。
「面倒だと思っていた」が「ありがたさに気づいた」へ変わっていれば、その変化が文章の中心である可能性があります。
風景の描写にも注目してください。
同じ景色でも、筆者の気持ちが変わると、明るく見えたり、寂しく見えたりします。
情景は単なる背景ではなく、心の変化を示す役割を持つことがあります。
随筆の記述問題では、自分の感想を書くのではなく、本文に書かれた筆者の考えを答えます。
「私も同じ経験がある」と感じても、答案には本文中の言葉や内容を使う必要があります。
体験、感情の変化、最後に得た気づきの三つを結び付けると、答えをまとめやすくなります。
小説は行動・会話・情景から人物の心情を読む
小説の心情問題では、「うれしい」「悲しい」などの感情語を探すだけでは答えられないことがあります。
人物の気持ちは、行動や会話に隠れているからです。
たとえば、人物が「大丈夫」と答えながら視線をそらしているなら、言葉どおりに安心しているとは限りません。
強がり、迷い、不安などが行動に表れている可能性があります。
人物の心情を考えるときは、その直前に何が起きたかを確認します。
理由となる出来事を無視して、表情や行動だけから気持ちを決めると、本文から離れた答えになりやすくなります。
人物同士の関係も重要です。
同じ言葉でも、親しい友人に向けた場合と、初対面の相手に向けた場合では意味が変わります。
また、天候や室内の様子などの情景が、人物の心情と重なることがあります。
文部科学省の解説では、人物や情景の描写を根拠として、関係や変化を捉えることが重視されています。
答案では、「寂しいから」のように感情だけを書くのではなく、「友人が自分に何も告げずに転校すると知り、取り残されたと感じたから」のように、出来事と心情を結び付けましょう。
評論は話題・具体例・根拠・結論を整理する
評論を読むときは、細かな言葉の意味を追う前に、文章全体の地図を作ると理解しやすくなります。
最初に確認するのは、何について論じているかです。
環境問題を扱っていても、中心がごみの量なのか、消費者の意識なのか、行政の制度なのかによって話題は変わります。
次に、筆者が最も伝えたい主張を探します。
結論の段落にあるとは限らないため、繰り返される言葉や、反対意見を退けた後の文にも注目します。
具体例は、そのまま主張ではありません。
具体例によって何を説明しているのかを考えます。
たとえば、動物の行動が紹介されていても、文章全体の主題が動物ではなく、人間のコミュニケーションである場合があります。
段落ごとの役割を短い言葉でメモする方法も有効です。
「一般的な考え」「筆者の疑問」「具体例」「反論」「結論」のように整理すると、文章のつながりが見えてきます。
文部科学省の解説でも、論理的な文章について、書き手が何を伝えようとしているか、どのような筋道で書き進めているかを捉えることが求められています。
文章の種類によって設問の答え方はどう変わる?
随筆では、筆者の体験と考えの関係が問われやすくなります。
「なぜこの出来事を思い出したのか」「この経験から何に気づいたのか」を本文に沿って考えます。
小説では、人物の心情、行動の理由、人物関係、表現の効果などが中心になります。
答えるときは、人物の行動の直前と直後を確認し、どの出来事が気持ちを動かしたかを探します。
評論では、指示語、接続語、段落の役割、主張と根拠、要旨などが問われます。
「それ」「このこと」が何を指すかを答える場合は、直前の一語だけでなく、内容のまとまりを確認してください。
どの文章でも共通するのは、答えの根拠を本文に求めることです。
自分の知識や経験が正しくても、本文が述べていなければ、読解問題の答えには使えないことがあります。
記述問題では、設問が求める内容を分解すると答えやすくなります。
「なぜ」と聞かれたら理由を、「どのような気持ち」と聞かれたら心情を、「どういうこと」と聞かれたら言い換えを求められています。
文章の種類に合った読み方と、設問の言葉に合った答え方の両方が必要です。
テストで間違えやすい思い込みと注意点
最も多い思い込みの一つは、「私と書いてあれば作者本人」という考えです。
小説の「私」は、作者が作った語り手かもしれません。
随筆でも、文章中の「私」は読み手に伝わるよう整理された存在であり、書き手の日常のすべてがそのまま表れているわけではありません。
次に注意したいのは、「実話なら随筆、作り話なら小説」と単純に分けることです。
実体験をもとにした小説もあれば、想像や再構成を含む随筆もあります。
文章がどのような目的で書かれ、どのような構成を持っているかまで確認しましょう。
評論では、「具体例に詳しく書かれている内容が筆者の主張だ」と思い込むことがあります。
具体例は、より大きな考えを説明するための材料である場合が多いため、例の前後を読む必要があります。
また、心情問題を自分の経験だけで答えるのも危険です。
自分なら腹を立てる場面でも、登場人物が同じ気持ちとは限りません。
文部科学省の解説でも、文章の内容や心情は叙述に即して捉えることが重視されています。
根拠となる言葉に線を引き、「この表現があるから、この答えになる」と説明できる状態を目指してください。
似ている文章との違いとよくある疑問
随筆・エッセイ・随想・日記・作文の違い
随筆とエッセイは、現在の出版や日常会話では、かなり近い意味で使われています。
一般には、身近な出来事、体験、考えなどを比較的自由な形で書いた文章を指します。
エッセイという呼び方から、現代的で親しみやすい文章を思い浮かべる人もいますが、両者を分ける絶対的な基準があるわけではありません。
随想は、ある物事に触れて心に浮かんだ思いや考えを書いた文章を指すときに使われます。
出来事の報告よりも、思索や心の動きに重点がある文章に使われやすい言葉です。
日記は、日付に沿って、その日の出来事や気持ちを記録するものです。
基本的には自分のために書かれますが、公開を前提とした日記文学もあります。
随筆は、読者に読まれることを想定して、題材や順番、言葉を選び直す点で、日々の記録とは目的が異なります。
作文は、特定の文学ジャンルというより、文章を書く活動を広く表す言葉です。
学校の作文には、体験文、意見文、物語、説明文など、さまざまな文章が含まれます。
文部科学省も「書くこと」の中で、目的や意図に応じて文章の種類を選び、構成や表現を工夫することを示しています。
評論文・論説文・説明文の違い
評論文は、ある対象を分析、評価、検討し、筆者の見方を示す文章です。
文学、芸術、社会、文化、科学など、幅広い題材が扱われます。
論説文は、社会的な問題などについて、筆者の意見を筋道立てて述べ、読者に理解や賛同を求める文章を指すことが多くなります。
新聞の社説などを考えると分かりやすいでしょう。
説明文は、物事の仕組み、特徴、原因、手順などを、読者に分かるように伝える文章です。
説明することが主な目的であり、必ずしも強い主張や評価を必要としません。
ただし、実際の文章では三つの性格が重なることがあります。
説明をしながら意見を述べる文章もあれば、作品を評価しながら社会への提案を行う文章もあります。
文部科学省の中学校学習指導要領解説では、説明、解説、論説などを説明的な文章の例としてまとめています。
高等学校では、評論や論説などが論理的な文章として扱われています。
学校や教材によって呼び方が異なる場合は、名前だけでなく、説明、評価、主張のどれが中心かを確認してください。
小説・私小説・自伝・ノンフィクションの違い
小説は、作者が作り上げた物語として読まれる文章です。
実在の人物や出来事がモデルになっていても、作品内の内容がすべて事実であるとは限りません。
私小説は、作者自身の生活や経験に近い題材を扱う小説を指す言葉です。
作者と主人公がよく似ていても、小説として発表されている以上、本文のすべてを事実の記録として確認することはできません。
自伝は、本人が自分の人生を振り返って書く文章です。
事実に基づいていることを前提としますが、記憶違い、選択、解釈が入る可能性はあります。
自伝に書かれていることも、ほかの資料と照らし合わせる歴史的な検証が必要になる場合があります。
ノンフィクションは、実在する人物や実際の出来事を扱い、事実に基づいて伝える文章や作品です。
取材、資料、証言などをもとに構成されます。
ただし、事実をどの順番で示すか、誰の視点を中心にするかには、書き手の判断が入ります。
したがって、「ノンフィクションだから完全に中立」とは限りません。
違いを整理すると、小説と私小説は創作として読み、自伝とノンフィクションは事実について述べる文章として読むのが基本です。
読書感想文・書評・レビューはどれに近い?
読書感想文は、本を読んで感じたことや、自分の経験と結び付けて考えたことを書く文章です。
自分の心の変化や気づきが中心であれば、随筆に近い性格を持ちます。
ただし、本の内容を正確に理解し、どの場面から何を感じたかを示す必要があります。
書評は、本の内容や特徴を紹介したうえで、価値、意義、問題点などを評価する文章です。
評価の理由を説明する必要があるため、評論に近い性格を持ちます。
書評では「面白かった」で終わらせず、構成、表現、扱われた問題、ほかの作品との関係などを根拠として考えます。
レビューは、商品、映画、本、店、サービスなどについて、利用した感想や評価を伝える文章です。
短いレビューでは感想が中心になることもありますが、評価の理由を詳しく述べれば、評論的な文章になります。
三つの違いは、文章の長さではなく、目的にあります。
自分がどう感じたかを伝えるなら感想文に近く、対象を分析して読者の判断を助けるなら書評やレビューに近くなります。
感想と評価は似ていますが、評価には「なぜそのように判断したか」という説明が求められます。
自分が書いた文章の種類を判断する方法
自分の文章を分類したいときは、書き終わった文章の最初と最後を読み比べてみましょう。
最初に示した題材が、最後にどのような内容へつながっているかを見ると、文章の中心が分かります。
体験から始まり、自分の感じ方や気づきで終わっているなら、随筆に近い文章です。
人物が出来事に巻き込まれ、選択や変化を経て終わるなら、小説に近い文章です。
問題を示し、理由や具体例を検討して、意見や提案で終わるなら、評論に近い文章です。
次に、文章から一部を削除した場合を考えてみてください。
体験の場面を削ると文章の魅力が失われるなら、随筆的な性格が強いと考えられます。
登場人物や出来事を削ると成り立たないなら、小説的です。
根拠や理由を削ると結論を支えられなくなるなら、評論的です。
複数の性格が混ざっていても問題はありません。
重要なのは、何を読者に伝えたいのかを自分で理解し、その目的に合った構成に整えることです。
文部科学省の解説でも、書く目的や意図に応じて文章の種類を選び、読み手に伝わる構成や表現を工夫することが求められています。
随筆・小説・評論の違いまとめ
随筆・小説・評論を見分ける基本は、文章の中心を探すことです。
随筆では、体験や身近な出来事を通して生まれた感想や考えが中心になります。
小説では、登場人物、出来事、場面の変化によって物語が作られます。
評論では、ある問題に対する筆者の主張が、理由や根拠とともに示されます。
覚え方としては、随筆は「体験から考える文章」、小説は「人物と出来事を描く文章」、評論は「根拠を使って論じる文章」と整理すると分かりやすいでしょう。
ただし、実際の文章には複数の性格が含まれます。
意見のある随筆、実体験をもとにした小説、個人的な経験から始まる評論もあります。
一つの言葉や場面だけで決めず、文章を書く目的、全体の構成、具体例の役割、読後に残るものを確認してください。
国語の読解では、随筆なら書き手の思いの変化、小説なら人物の心情と関係、評論なら主張と根拠に注目します。
文章の種類に合った読み方が分かると、内容を整理しやすくなり、記述問題でも本文に基づいた答えを作りやすくなります。
- 中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 国語編 (文部科学省)
- 高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 国語編 (文部科学省)
- 国語の授業に使える古典籍 (国文学研究資料館)
- 『現代日本語書き言葉均衡コーパス』利用の手引 第1.0版 (国立国語研究所)
