文章を書いていると、「ここは『また』でつなぐべきか、それとも『なお』がよいのか」と手が止まることがあります。
どちらも情報を付け加える言葉なので、違いが分かりにくいのは無理もありません。
しかし、二つの役割は同じではありません。
「また」は情報を横に並べる言葉で、「なお」は前の内容を補う言葉です。
この基本を押さえるだけで、メール、案内文、レポート、ブログなどの文章がぐっと読みやすくなります。
この記事では、意味の違いだけでなく、すぐ使える例文、間違いやすい書き方、読点や改行の考え方、似た言葉との区別まで分かりやすく解説します。
「また」と「なお」の違いを先に結論から解説
「また」は同じ重要度の情報を並べて追加する言葉
「また」は、前に述べた内容と並ぶ情報を付け加えるときに使います。
たとえば、「この店は料理がおいしい。また、店内も落ち着いている」という文章では、料理と店内の雰囲気という二つの長所を並べています。
どちらか一方が単なる注意書きなのではなく、どちらも店を評価するための大切な情報です。
このように、同じ方向を向いている情報を横に並べたいときには、「また」が自然です。
国立国語研究所の研究資料でも、「また」は「そして」「さらに」「しかも」などとともに、情報を加える働きを持つ添加型の接続詞に分類されています。
ただし、「同じ重要度」という説明は、使い分けを理解しやすくするための目安です。
文章の中で本当に重要度が完全に同じかどうかを、細かく測る必要はありません。
「前の話題に続けて、もう一つ伝えたいことがある」と考えたときに使う言葉だと覚えておけば十分です。
たとえば、商品の特徴を紹介するときには、次のように書けます。
「このパソコンは軽く、持ち運びに便利です。また、バッテリーが長時間持つため、外出先でも安心して使えます。」
軽さとバッテリー性能は、どちらも商品の魅力として並んでいます。
そのため、この文章では「また」がよく合います。
「なお」は前の内容に補足や注意を加える言葉
「なお」は、すでに伝えた内容に対して、補足、注意、条件、関連情報などを付け加えるときに使います。
たとえば、「受付は午後5時までです。なお、土曜日は午後3時に終了します」という文章を考えてみましょう。
最初の文で基本の受付時間を伝え、その後に土曜日だけの補足情報を加えています。
土曜日の終了時間は重要ですが、文章の中心となる基本情報とは役割が異なります。
国立国語研究所の研究資料では、「なお」は「ただし」「もっとも」「ちなみに」などとともに、補足型の接続詞として整理されています。
「なお」は、本文を読み終えようとした人を少しだけ呼び止めるような言葉です。
「大事な説明は終わりましたが、知っておいてほしいことがもう一つあります」という感覚に近いでしょう。
案内文やビジネスメールでは、参加条件、例外、持ち物、料金に含まれないものなどを示す際によく使われます。
たとえば、次の文章です。
「参加費は無料です。なお、会場までの交通費は各自でご負担ください。」
無料であることが中心の情報であり、交通費については関連する注意事項です。
このような関係では、「また」よりも「なお」が自然です。
「並列か補足か」を判断できる比較表
二つの言葉は、次のように整理すると迷いにくくなります。
| 比較する点 | また | なお |
|---|---|---|
| 主な役割 | 情報を並べて加える | 前の内容を補う |
| 情報の関係 | 前後が同じ流れにある | 後ろが説明や注意になる |
| 読み手が受ける印象 | もう一つあります | 付け加えておきます |
| よく使う場面 | 特徴、理由、予定の追加 | 条件、例外、注意、関連事項 |
| 言い換えの目安 | そのうえ、加えて | 補足すると、付け加えると |
実際の文章では、どちらを使っても意味が通じる場合があります。
しかし、意味が通じることと、読みやすく自然であることは同じではありません。
たとえば、「会議は10時に始まります。また、開始5分前までに着席してください」と書いても、内容は理解できます。
ただし、着席時刻が会議の追加情報ではなく、参加者への注意であるなら、「なお」のほうが関係を明確にできます。
「会議は10時に始まります。なお、開始5分前までに着席してください。」
この形なら、読み手は後ろの文を注意事項として受け取りやすくなります。
接続詞は、文と文の関係を示す案内板のようなものです。
案内板が適切であれば、読み手は立ち止まって考えなくても文章の流れを追えます。
どちらを使うか迷ったときの3秒チェック
迷ったときは、後ろに続く内容へ「もう一つ」と「補足すると」を当てはめてみましょう。
「もう一つ」と言い換えて自然なら、「また」が有力です。
「補足すると」と言い換えて自然なら、「なお」が有力です。
たとえば、次の文章で考えます。
「当ホテルには大浴場があります。候補の文として、朝食会場もあります。」
ここには「もう一つ」を当てはめられます。
「当ホテルには大浴場があります。もう一つ、朝食会場もあります。」
設備を並べて紹介しているため、「また」が自然です。
「当ホテルには大浴場があります。また、朝食会場もあります。」
次の例ではどうでしょうか。
「当ホテルには大浴場があります。候補の文として、利用時間は午後3時から午前0時までです。」
ここには「補足すると」が合います。
「当ホテルには大浴場があります。補足すると、利用時間は午後3時から午前0時までです。」
大浴場の存在を伝えた後、その利用時間を説明しているため、「なお」が自然です。
「当ホテルには大浴場があります。なお、利用時間は午後3時から午前0時までです。」
判断に迷ったら、次の順番で考えてください。
まず、後ろの文だけでも新しい魅力や事実として成り立つかを確認します。
成り立つなら、「また」が使いやすいでしょう。
次に、後ろの文が前の文を説明したり、条件を加えたりしていないかを確認します。
その役割が強ければ、「なお」が向いています。
「また」と「なお」の意味と基本的な使い方
接続詞として使う「また」の意味
接続詞としての「また」は、前の文を受けて、関連する別の情報を加えます。
文章の流れを止めず、話題を同じ方向へ広げる働きがあります。
「このアプリは無料で利用できます。また、会員登録も必要ありません」という文章では、利用しやすさに関する二つの特徴を並べています。
一つ目は料金、二つ目は登録の手間に関する情報です。
内容は異なりますが、どちらも利用者にとっての利点です。
このような追加には「また」がよく合います。
「また」は、理由を複数示す場合にも使えます。
「この案を採用した理由は、費用を抑えられるためです。また、短期間で実施できる点も評価しました。」
費用と期間という二つの理由を並べているため、自然な使い方です。
予定を追加するときにも使えます。
「午前中は工場を見学します。また、午後には担当者との意見交換を予定しています。」
午前と午後の予定が一日の計画として並んでいます。
ただし、何でも「また」でつなげばよいわけではありません。
後ろの文が前の文に対する強い例外や制限なら、「ただし」のほうが適切な場合があります。
後ろの文が細かな補足なら、「なお」が適しています。
大切なのは、言葉の意味だけを見るのではなく、前後の情報がどのような関係にあるかを見ることです。
接続詞として使う「なお」の意味
接続詞としての「なお」は、中心となる説明の後に、関連する情報を付け加えます。
前の文を否定する言葉ではありません。
前の内容を変更するのではなく、その理解に役立つ情報を添えるのが基本です。
「申し込みはウェブサイトで受け付けます。なお、電話での申し込みには対応していません」という文章では、申し込み方法を示した後、利用できない方法を補足しています。
電話で受け付けないことは、読み手が手続きを間違えないために必要な情報です。
このような注意事項には「なお」が合います。
「なお」は、すでに説明した内容の範囲を明らかにするときにも便利です。
「料金には教材費が含まれています。なお、試験の受験料は含まれていません。」
最初の文だけでは、どこまで料金に含まれるのかが分かりません。
後ろの文が範囲を補うことで、誤解を防げます。
文化庁の「公用文作成の考え方」は、文書の内容を読み手に過不足なく理解してもらうことや、必要な情報を省かず正確に伝えることを重視しています。
「なお」を使う目的も、文章を難しく見せることではありません。
読み手が後から困らないように、必要な情報を適切な位置へ置くことが大切です。
補足が長くなりすぎる場合は、「なお」で一文につなぐよりも、段落を分けたり、箇条書きにしたりしたほうが読みやすくなります。
副詞として使う場合は意味が変わる
「また」と「なお」は、文と文をつなぐ接続詞以外の働きも持っています。
この違いを知らないと、辞書や例文を見たときに混乱しやすくなります。
「また会いましょう」の「また」は、「再び」や「次の機会に」という意味です。
この文では、前後の文章をつないでいるわけではありません。
「昨日に続いて、今日もまた雨が降った」の「また」も、「再び」に近い意味です。
一方、「問題はなお残っている」の「なお」は、「今もまだ」という意味です。
「こちらの方法のほうがなお良い」のように使うと、「さらに」や「いっそう」に近い意味になります。
接続詞かどうかを見分けるには、文頭から取り除いたときの変化を考えると分かりやすくなります。
「この商品は軽い。また、丈夫である」から「また」を取り除いても、「丈夫である」という文は残ります。
この「また」は、二つの文の関係を示しています。
「また会いましょう」から「また」を取り除くと、「会いましょう」になり、会う回数や時期に関する意味が変わります。
こちらの「また」は、動作そのものを修飾しています。
「なお」も同じように確認できます。
「受付は終了しました。なお、予約済みの方は入場できます」の「なお」は、二つの文を結び付けています。
「工事はなお続いています」の「なお」は、工事が続く状態を修飾しています。
今回の使い分けで中心になるのは、文頭に置かれ、前後の関係を示す接続詞としての用法です。
「又」「尚」ではなく平仮名で書くのが基本
一般向けの文章では、「また」「なお」と平仮名で書くと読みやすくなります。
特に「また」については、内閣訓令の「公用文における漢字使用等について」で、原則として仮名で書く接続詞の例に挙げられています。
そのため、ビジネスメール、案内文、ブログ、社内資料などでは、「又」よりも「また」を選ぶのが無難です。
「尚」も、一般的な文章では「なお」と書いたほうが意味をすぐにつかめます。
漢字にすると、文章全体が古風で硬い印象になることがあります。
ただし、漢字で書かれていれば、すべて誤りというわけではありません。
会社独自の表記ルール、契約書の形式、引用元の表記などに合わせる場合もあります。
大切なのは、一つの文書内で表記をばらばらにしないことです。
前半では「また」、後半では「又」と書くと、特別な意図があるように見えてしまいます。
文化庁の資料でも、符号や表記の使い方を文書内で統一し、読み手に意図が伝わるようにする考え方が示されています。
特別な決まりがない文章なら、次の形に統一するとよいでしょう。
「また、次回の開催日は後日お知らせします。」
「なお、参加には事前登録が必要です。」
平仮名にするだけで、文章の印象がやわらかくなり、読み間違いも起こりにくくなります。
例文で覚える「また」と「なお」の使い分け
日常的な文章での使い分け例
日常的な文章では、まず「情報を並べたいのか」「前の内容を詳しくしたいのか」を考えます。
次の文章は、「また」が自然な例です。
「この公園には大きな遊具があります。また、芝生の広場もあります。」
遊具と芝生の広場は、公園にある設備として並んでいます。
どちらも公園を紹介する新しい情報です。
次の文章では、「なお」が自然です。
「この公園は午前9時に開園します。なお、雨天時は開園時刻が変更される場合があります。」
開園時刻が基本情報であり、雨天時の扱いが補足です。
料理の説明でも使い分けられます。
「このカレーには玉ねぎを使っています。また、数種類のスパイスを加えています。」
材料と調理上の特徴を並べているため、「また」が合います。
「このカレーには玉ねぎを使っています。なお、辛さは注文時に変更できます。」
辛さの変更は、料理の材料を並べる情報ではなく、注文に関する補足です。
家族や友人への連絡でも、考え方は同じです。
「駅前で買い物をします。また、郵便局にも寄る予定です。」
二つの予定を並べています。
「駅前で買い物をします。なお、帰宅は午後6時ごろになる予定です。」
帰宅時刻は、外出に関連する追加連絡です。
日常文では厳密な使い分けを気にしすぎる必要はありません。
ただし、案内、予約、予定変更など、相手の行動に影響する文章では、関係を明確にしたほうが誤解を防げます。
ビジネスメールや案内文での使い分け例
ビジネスメールでは、一通のメールに複数の情報を入れることが多いため、接続詞の選び方が読みやすさを左右します。
たとえば、会議の案内を送る場合を考えてみましょう。
「会議では新商品の販売計画を確認します。また、今後の広告方針についても話し合います。」
販売計画と広告方針は、どちらも会議で扱う議題です。
そのため、「また」で並べると自然です。
続いて、参加者への注意を加えるなら、「なお」を使えます。
「会議は午後2時から開始します。なお、資料は開始時刻までに共有フォルダーへ保存してください。」
開始時刻が中心の案内で、資料の保存が関連する注意事項です。
イベント案内では、次のように使い分けられます。
「会場では講演会を開催します。また、講演終了後には個別相談会を行います。」
二つの企画を紹介しているため、「また」が適しています。
「参加費は無料です。なお、個別相談会への参加には予約が必要です。」
予約が必要であることは、参加者が知っておくべき補足です。
商品発送の連絡にも応用できます。
「ご注文の商品は本日発送しました。また、発送完了メールを登録アドレスへお送りしています。」
発送とメール送信という二つの実施事項を並べています。
「ご注文の商品は本日発送しました。なお、天候により到着が遅れる可能性があります。」
到着の遅れは、発送に関する注意事項です。
ビジネス文書では、丁寧な言葉を使うことだけでなく、読み手が次に何をすればよいかを迷わず理解できることが重要です。
文化庁の資料でも、読み手が何を知りたいかを想像しながら文書を作成する必要性が示されています。
よくある間違いと自然な書き直し例
よくあるのは、条件や例外まで「また」でつないでしまう書き方です。
修正前の文章を見てみましょう。
「商品の返品は到着後7日以内に受け付けます。また、開封済みの商品は返品できません。」
意味は伝わりますが、後ろの文は返品に関する新しい長所や並列情報ではありません。
返品を受け付けない条件を示しています。
次のように書くと、関係が分かりやすくなります。
「商品の返品は到着後7日以内に受け付けます。なお、開封済みの商品は返品できません。」
制限を強く示したい場合は、「ただし」を使う方法もあります。
「商品の返品は到着後7日以内に受け付けます。ただし、開封済みの商品は返品できません。」
反対に、並べるべき情報をすべて「なお」でつなぐと、文章が注意書きばかりに見えます。
修正前の例です。
「当施設には図書室があります。なお、学習室もあります。なお、カフェも利用できます。」
図書室、学習室、カフェは、施設内の設備として並んでいます。
次の形のほうが自然です。
「当施設には図書室があります。また、学習室とカフェも利用できます。」
接続詞を減らして、箇条書きにする方法もあります。
「当施設では、図書室、学習室、カフェを利用できます。」
もう一つ多いのが、補足を重ねすぎる文章です。
「参加費は無料です。なお、資料代も無料です。なお、飲み物も用意します。なお、駐車場も無料です。」
すべてを「なお」でつなぐと、文章の強弱が分からなくなります。
情報を整理して書き直します。
「参加費と資料代は無料です。また、会場には飲み物を用意しています。なお、駐車場も無料で利用できます。」
接続詞は多く使うほど丁寧になるわけではありません。
前後の関係を示す必要がないなら、使わない選択も大切です。
ビジネス文書で迷いやすい順番・改行・読点
「また」と「なお」を続けて使う順番に絶対ルールはある?
「また」と「なお」を一つの文章やメールで使う場合、必ず「また」が先で「なお」が後になるという絶対的な文法規則はありません。
文章の内容によって、必要な順番は変わります。
ただし、実務的には、中心となる情報を並べた後、最後に注意事項を加える流れが読みやすいため、「また」の後に「なお」が置かれることが多くなります。
たとえば、次の文章です。
「当日は会社概要をご説明します。また、製品の実演も行います。なお、実演会場では安全のため係員の指示に従ってください。」
最初に二つの実施内容を伝え、最後に注意事項を示しています。
情報が「基本内容」「追加内容」「注意事項」の順に並んでいるため、理解しやすい構成です。
一方で、必ずこの順番にする必要はありません。
「受付は午前9時に開始します。なお、混雑時には整理券を配布します。また、会場内では関連商品の販売も予定しています。」
整理券の情報を受付の直後に説明する必要があるなら、「なお」を先に置いても不自然ではありません。
その後で、別の企画を「また」で追加できます。
判断するときは、接続詞の順番だけを見るのではなく、情報のまとまりを見ます。
同じ話題に関する説明は、できるだけ近くに置いたほうが読みやすくなります。
接続詞を並べるために文章を組み立てるのではなく、読み手が知りたい順番に情報を並べ、その関係に合う接続詞を選びましょう。
「また、」「なお、」の読点と改行の位置
文頭で接続詞として使う場合は、「また、」「なお、」のように読点を置くと、文の区切りが分かりやすくなります。
特にビジネスメールや案内文では、この形に統一すると安定した読みやすさが生まれます。
「また新しい制度を開始します」と書くと、「また新しい」が一つのまとまりに見える場合があります。
「また、新しい制度を開始します」と書けば、「前の内容に加えて、新しい制度を始める」という関係が伝わりやすくなります。
「なお必要な方は」のような文章も、「なお、必要な方は」と区切ったほうが読みやすいでしょう。
ただし、日本語の接続詞の直後には、どのような場合でも必ず読点を打たなければならないという単純な決まりがあるわけではありません。
国立国語研究所のコーパスを使った研究でも、接続詞後の読点の有無には、使われる語、前後の文字、文の長さなど複数の要素が関係することが報告されています。
実務では、文頭の「また」「なお」の後に読点を置くという社内ルールを決め、表記をそろえる方法が分かりやすいでしょう。
改行については、接続詞が出てくるたびに必ず行を変える必要はありません。
ただし、話題が変わる場所や、注意事項を目立たせたい場所では、改行が効果的です。
文化庁の「公用文作成の考え方」でも、ウェブ上の文章では段落間を広く空けるなど、読み取りやすくする工夫が認められています。
メールでは、予定の追加と注意事項を別の段落に分けると、読み落としを防ぎやすくなります。
同じ接続詞を繰り返さず読みやすくする方法
「また」や「なお」が何度も続くと、文章の内容が正しくても、機械的で単調な印象になります。
たとえば、次の文章です。
「当店ではパンを販売しています。また、ケーキも販売しています。また、飲み物も販売しています。また、店内で飲食できます。」
この文章は、情報を一文にまとめられます。
「当店では、パン、ケーキ、飲み物を販売しており、店内での飲食も可能です。」
複数の項目を紹介する場合は、箇条書きも便利です。
- パンとケーキの販売。
- コーヒーや紅茶の提供。
- 店内の飲食スペース。
- 持ち帰りへの対応。
注意事項が多い場合も、すべてを「なお」でつなぐ必要はありません。
「なお、受付には身分証明書が必要です。なお、代理人による受付はできません。なお、受付後の変更はできません。」
次のように整理できます。
「受付の際は、本人確認ができる身分証明書をお持ちください。」
「代理人による受付と、受付後の内容変更には対応していません。」
文化庁の資料は、回りくどい言い方や不要な繰り返しを避け、必要のない言葉を削ることを勧めています。
接続詞を減らすときは、前後の関係が分からなくならないかを確認してください。
関係が明らかなら削り、誤解が生まれそうなら残します。
同じ接続詞が短い範囲に三回以上出てきたら、文章を整理できないか検討する目安になります。
似た言葉との違いと最終チェック
「また」と「さらに」の違い
「また」と「さらに」は、どちらも情報を加えるときに使えます。
国立国語研究所の研究資料でも、両方とも添加型の接続詞として整理されています。
ただし、読み手が受ける印象には違いがあります。
「また」は、別の情報を横に並べる感覚が強い言葉です。
「このカメラは軽量です。また、防水機能を備えています。」
軽さと防水機能という二つの特徴を紹介しています。
「さらに」は、前の内容から一段進んだ情報や、程度が増す内容を加えるときに向いています。
「このカメラは従来品より軽くなりました。さらに、連続撮影時間も2時間延びています。」
改善がもう一段進んだような印象を与えます。
次の二文を比べると違いが分かりやすいでしょう。
「来場者には資料を配布します。また、記念品もお渡しします。」
資料と記念品を並べて紹介しています。
「来場者には資料を配布します。さらに、先着100名には記念品もお渡しします。」
通常の配布物に加え、もう一つ特典が増える印象です。
ただし、この違いも絶対的なものではありません。
文章の流れや書き手の強調したい点によって、どちらも使える場合があります。
単純な追加なら「また」、追加によって内容がより強まるなら「さらに」と考えると選びやすくなります。
「なお」と「ちなみに」「ただし」の違い
「なお」「ちなみに」「ただし」は、いずれも前の内容に情報を付け加える場面で使われます。
国立国語研究所の分類でも、これらは補足型として同じグループに整理されています。
ただし、補足の性質が異なります。
「なお」は、本題に関係が深く、読み手に知っておいてほしい情報を加える言葉です。
「説明会は午後3時に終了します。なお、希望者には終了後に個別相談を行います。」
個別相談は、説明会に直接関係する実用的な情報です。
「ちなみに」は、本題と関係はあるものの、少し脇へ広がる情報を添えるときに向いています。
「説明会は昨年も開催しました。ちなみに、昨年は約200人が参加しました。」
昨年の参加人数を知らなくても、今回の説明会への参加はできます。
知ると参考になる情報ですが、中心の案内ではありません。
「ただし」は、前の内容に条件、制限、例外を加えるときに使います。
「説明会には無料で参加できます。ただし、事前の申し込みが必要です。」
無料参加という内容に、「申し込みが必要」という条件を加えています。
「なお」でも意味は通じますが、条件であることをはっきり示したいなら、「ただし」のほうが強く伝わります。
迷ったときは、「知っておいてほしい補足」なら「なお」、「本題から少し外れる参考情報」なら「ちなみに」、「守る必要がある条件」なら「ただし」と考えましょう。
「なお」と「おって」の違い
「なお」と「おって」は、改まった案内文やビジネス文書で見かけることがあります。
両者の大きな違いは、情報を今伝えるのか、後で伝えるのかという点です。
「なお」は、その場で補足情報を続けます。
「採用結果はメールでお知らせします。なお、電話によるお問い合わせには回答できません。」
電話対応に関する情報を、今ここで伝えています。
「おって」は、詳細や結果を後から知らせることを表します。
「会場の詳細は、おってご連絡します。」
この文では、詳細はまだ示されていません。
後日の連絡を約束しています。
二つを入れ替えると、意味が変わる場合があります。
「会場の詳細は、なおご連絡します」という書き方は不自然です。
「なお、会場の詳細をご連絡します」と書けば、この後に詳細が続くように読めます。
「会場の詳細は、おってご連絡します」と書けば、別の機会に連絡する意味になります。
表記については、内閣訓令で「おって」も原則として仮名で書く接続詞の例に挙げられています。
ただし、一般向けの文章では「おって」が少し硬く感じられる場合があります。
そのときは、「詳細は後日お知らせします」と書き換えると、より分かりやすくなります。
使い分けに関するよくある疑問
「また」と「なお」を同じ段落で使っても問題ありません。
それぞれが異なる役割を持っていれば、むしろ情報の関係が分かりやすくなります。
「当日は新サービスをご紹介します。また、操作体験の時間も設けます。なお、体験には事前予約が必要です。」
サービス紹介と操作体験を「また」で並べ、予約条件を「なお」で補っています。
「また、なお、」と二つの言葉を直接続ける書き方は、通常は避けたほうがよいでしょう。
二つを重ねても、関係が二倍分かりやすくなるわけではありません。
「また、なお、参加費は無料です」では、追加なのか補足なのかがかえって曖昧になります。
どちらか一つを選ぶか、文章を分けてください。
「または」は、「また」と同じ言葉として扱わないように注意が必要です。
「また」は情報の追加に使われますが、「または」は複数の選択肢を示します。
「郵送またはメールで提出してください」という文では、二つの提出方法から選べます。
「なおさら」も、接続詞の「なお」とは働きが異なります。
「雨が強くなり、風も出てきたので、外出はなおさら危険です」の「なおさら」は、「いっそう」という意味です。
最終確認では、次の三点を見てください。
後ろの文が新しい情報として前の文と並ぶなら、「また」が適しています。
後ろの文が説明、注意、関連事項として前の文を補うなら、「なお」が適しています。
後ろの文が条件や例外を示すなら、「ただし」も検討してください。
まとめ
「また」と「なお」は、どちらも情報を加える言葉ですが、加え方が異なります。
「また」は、前の内容と並ぶ情報を追加するときに使います。
「なお」は、前の内容に説明、注意、条件、関連事項などを補うときに使います。
迷ったときは、後ろの文を「もう一つ」と言い換えられるか、「補足すると」と言い換えられるかを確認してください。
「もう一つ」が自然なら「また」、「補足すると」が自然なら「なお」を選ぶと、多くの場合は分かりやすい文章になります。
ただし、条件や例外を強く示したいときには、「ただし」のほうが適切です。
参考程度の話を加えるなら、「ちなみに」が合う場合もあります。
接続詞は、正解の言葉を当てるためだけのものではありません。
前後の情報がどのような関係にあるのかを、読み手へ伝えるためのものです。
文化庁の公用文資料でも、読み手を意識し、必要な情報を過不足なく、正確で分かりやすく伝えることが重視されています。
意味が通じるかどうかだけでなく、読み手が立ち止まらずに理解できるかという視点で選びましょう。
