MENU

断酒と禁酒の違いは?意味・期間・目的と自分に合う選び方をわかりやすく解説

断酒と禁酒の違いは?意味・期間・目的と自分に合う選び方をわかりやすく解説

「断酒と禁酒は、どちらもお酒をやめることではないのか」と疑問に感じていませんか?

一般的には、一定期間だけ飲まないことを禁酒、飲まない生活を継続することを断酒と表現する傾向があります。

ただし、2つの言葉には法律や医療制度で定められた明確な期間の違いがあるわけではありません。

飲酒量を減らす節酒や減酒、飲まない日を作る休肝日との違いも知っておかないと、自分に合わない方法を選んでしまう可能性があります。

この記事では、断酒と禁酒の意味や使われ方を整理し、どちらを選べばよいのか、安全にお酒をやめるには何に注意すべきかを、公的機関と専門医療機関の情報に基づいて分かりやすく解説します。

目次

断酒と禁酒の違いを最初に理解しよう

結論:一般的な違いは期間と飲酒再開の考え方

断酒と禁酒は、どちらも「お酒を飲まない」という点では同じです。

一般的な会話では、禁酒は健康診断やダイエットなどをきっかけに、一定期間お酒を飲まない場合に使われることが多くあります。

一方の断酒は、期間を決めず、飲まない生活を継続していく場合に使われる傾向があります。

たとえば「健康診断までの1か月は禁酒する」とは言いやすいですが、「アルコール依存症から回復するために断酒を続ける」という場面では断酒という言葉が自然です。

ただし、禁酒は短期間、断酒は生涯と法律や公的な基準で厳密に定められているわけではありません。

国語辞典を見ると、断酒は「酒を絶って飲まないこと。禁酒」と説明され、禁酒は「酒を飲むことを禁止すること。また、自ら飲酒をやめること」と説明されています。

つまり、言葉そのものの意味は大きく重なっています。

違いを理解するポイントは、言葉だけを見るのではなく、「いつまで飲まないのか」「将来は再開するのか」「何のためにやめるのか」を確認することです。

比較する点禁酒断酒
基本的な意味お酒を飲まないことお酒を断って飲まないこと
一般的な期間期間を決める場合が多い継続を前提にする場合が多い
飲酒再開予定している場合がある原則として再開しない
よくある目的健康診断、生活改善、節約、ダイエット依存症治療、再飲酒の防止、健康回復
医療での使われ方日常的な表現として使われる治療目標として使われることが多い

この表は、あくまで一般的な使い分けを整理したものです。

「禁酒と言ったから短期間でなければならない」「断酒と言ったら必ず一生続けなければならない」という決まりではありません。

大切なのは呼び方よりも、本人が目標を理解し、安全な方法で実行できているかどうかです。

禁酒は一定期間お酒を飲まないときに使われやすい

禁酒は、自分で決めた期間や、医師から指示された期間にお酒を飲まない取り組みを表すときによく使われます。

「今月は禁酒する」「健康診断が終わるまで禁酒する」「薬を飲んでいる間は禁酒する」といった使い方です。

始める日と終える日が明確なら、目標を立てやすく、初めてお酒を控える人にも取り組みやすいでしょう。

一定期間飲まないことで、これまでの飲酒習慣を見直すきっかけにもなります。

毎晩の飲酒が習慣になっている人は、飲まない日を作るだけでも「食事中に何となく飲んでいた」「仕事の疲れをお酒だけで解消しようとしていた」といった行動に気づけます。

厚生労働省も、毎日飲み続けることを避け、1週間のうちに飲酒しない日を設けるよう案内しています。

ただし、一定期間飲まなかった後に、以前と同じ量へ戻ってしまう可能性には注意が必要です。

禁酒期間が終わった反動で一度に多く飲むと、急性アルコール中毒や外傷などの危険が高まります。

厚生労働省は、1回の飲酒機会で純アルコールを60グラム以上摂取する一時多量飲酒を避けるべきだとしています。

ビール500ミリリットルでアルコール度数が5%の場合、含まれる純アルコールは20グラムです。

同じ条件のビールを短時間に3本飲むと、純アルコールは60グラムになります。

禁酒を終える日を決める場合は、再開後に飲む量や頻度についても先に考えておくことが大切です。

医師から飲酒を止められている人や、服薬中の人は、自分の判断だけで再開しないでください。

病気の種類や薬の性質によっては、飲酒で薬の効果が弱まったり、副作用が生じたりする可能性があるため、飲酒の可否は主治医に確認する必要があります。

断酒は飲まない生活を継続するときに使われやすい

断酒は、一定期間だけ我慢するのではなく、飲まない生活を継続するという意味で使われることが多い言葉です。

特に、アルコール依存症の治療や、飲酒によって重大な健康問題、家庭問題、仕事上の問題が起きた場合に用いられます。

日本アルコール・アディクション医学会と日本アルコール関連問題学会の手引きでは、アルコール依存症の治療について、継続した断酒が最も安定した目標とされています。

断酒は、単にお酒を飲まない日数を増やす取り組みではありません。

飲酒を中心に組み立てられていた時間、人間関係、ストレスへの対処法を見直し、お酒がなくても生活できる状態を作っていく取り組みです。

そのため、「意思を強く持てば一人で続けられる」とは限りません。

飲みたくなる場面への対応を練習したり、医療機関へ通ったり、断酒会やAAなどの自助グループに参加したりする方法があります。

厚生労働省の依存症情報サイトでは、断酒会を「飲酒をやめ続けるための自助グループ」と紹介しています。

アルコール依存症の人が飲酒をやめると、不眠、発汗、手の震え、不安、いら立ちなどの離脱症状が現れることがあります。

重い場合には、幻覚やけいれん発作が起こることもあります。

このような症状が疑われる人にとって、断酒は根性だけで始めるものではありません。

毎日多量に飲んでいる人や、飲まないと手が震える人、朝から飲んでしまう人は、急に一人でやめる前に医療機関へ相談する必要があります。

断酒とは、強く我慢し続けることではなく、必要な支援を利用しながら安全に飲まない生活を作ることだと考えましょう。

断酒と禁酒は本当に別の意味なのか

辞書では断酒と禁酒がほぼ同じ意味とされている

断酒と禁酒を調べると、まったく別の行動を表しているように説明されることがあります。

しかし、国語としての意味を確認すると、両者の境界はそれほど明確ではありません。

精選版日本国語大辞典では、断酒は「酒を絶って飲まないこと。禁酒」とされています。

同じ辞典で禁酒は、「酒を飲むことを禁止すること。また、自ら飲酒をやめること」とされています。

この定義に従えば、自分の意思でお酒をやめる行為は、断酒とも禁酒とも表現できます。

「3日間なら禁酒、1年以上なら断酒」といった、日数による公的な線引きもありません。

それでも実際の会話で使い分けられるのは、それぞれの漢字が持つ印象と、使われてきた場面が異なるからです。

「禁」という字には、行為を禁止するという意味があります。

そのため禁酒は、医師から止められる、家族と期間を決める、自分にルールを課すといった場面になじみます。

「断」という字には、続いているものを断ち切るという印象があります。

そのため断酒は、飲酒習慣との関係を断ち、飲まない状態を継続する場面になじみます。

ただし、これは言葉の使われ方を理解するための整理であり、医学的な診断基準ではありません。

「禁酒中」と話している人が、将来も飲まないと決めている場合もあります。

反対に「断酒を始めた」と話していても、具体的な期間や将来の方針が決まっていない場合もあります。

相手の状況を理解するときは、用語だけで判断せず、「どのくらいの期間を考えているのか」「医師の指示があるのか」「飲酒による問題が起きていないか」を確かめることが重要です。

医療や回復支援では「断酒」が使われることが多い

アルコール依存症の医療や回復支援では、「禁酒治療」よりも「断酒治療」「断酒継続」「断酒会」といった表現が多く使われます。

これは、治療が一時的にお酒を止めることだけを目指しているのではなく、飲まない状態を安定して続けることを重視しているためです。

日本アルコール・アディクション医学会などの診断治療の手引きでは、アルコール依存症の治療目標として「断酒」と「飲酒量低減」という言葉が使われています。

手引きでは、入院治療が必要な人、飲酒による問題が重く家庭や社会での生活が難しい人、重い臓器障害がある人、緊急治療が必要な離脱症状がある人について、断酒を選ぶべきだとしています。

一方で、アルコール依存症と診断された人全員に、最初から同じ方法を強制するわけではありません。

軽症で明確な合併症がなく、本人が断酒を希望していない場合などには、医師の判断のもとで飲酒量低減を治療目標にする選択肢があります。

断酒が必要な状態であっても、本人が受け入れられず治療から離れてしまうことを防ぐため、一時的に飲酒量を減らす治療から始める場合もあります。

ただし、飲酒量をうまく減らせない場合には、断酒へ切り替えることが示されています。

この点からも、「断酒か減酒か」は、本人が好きな言葉を選べばよいという単純な話ではありません。

飲酒量、離脱症状、合併症、これまでに起きた問題、本人の希望を確認したうえで判断する医療上の目標です。

飲み始めると予定した量で止められない人や、健康上の問題を指摘されても飲み続けてしまう人は、自己判断で「少し減らせば大丈夫」と考えず、専門家へ相談しましょう。

期間・目的・再開・使われる場面を比較表で整理

断酒と禁酒を、期間だけで区別しようとすると混乱しやすくなります。

期間に加えて、目的、再開の予定、医療との関係まで合わせて考えると、違いを整理しやすくなります。

項目禁酒と表現されやすい状態断酒と表現されやすい状態
期間数日、数週間、数か月など終了日を決めずに継続
主な目的健康診断、体調管理、節約、生活改善依存症からの回復、再飲酒防止、病気の治療
再開の予定期間終了後に再開する場合がある原則として再開を予定しない
取り組み方自分で期間とルールを決めることが多い医療や自助グループを利用する場合が多い
使われる場面日常生活、健康管理、服薬中医療、回復支援、断酒会
公的な日数基準なしなし

たとえば、健康診断で肝機能の数値を指摘され、医師から次の受診まで飲まないよう指示された場合は、日常的には「禁酒」と表現できます。

ただし、重いアルコール性肝障害があり、再飲酒が生命に関わる状態であれば、医療上は継続的な断酒が必要になる可能性があります。

厚生労働省の情報では、アルコール性肝硬変まで進行した場合でも、長期間の完全な断酒に成功し、腹水や黄疸が改善する段階であれば、肝臓の再生を期待できるとされています。

反対に、特に健康上の問題がなく、「1か月だけ飲まない生活を試してみたい」という場合は、期間を決めた禁酒として取り組みやすいでしょう。

どちらの言葉を使っても、お酒を飲まないという行動自体は変わりません。

それでも使い分けが役立つのは、自分の目標を明確にできるからです。

期間を終えたら再開するのか、飲まない生活を続けるのかが曖昧だと、飲酒を勧められた場面で判断が揺らぎます。

「次の健康診断までは飲まない」「医師と相談するまでは再開しない」「今後は飲まない生活を続ける」と言葉にしておくと、行動を選びやすくなります。

節酒・減酒・休肝日との違いも確認しよう

節酒と減酒は飲酒量や回数を減らす取り組み

節酒と減酒は、お酒を完全にやめるのではなく、飲む量や回数を減らす取り組みです。

断酒や禁酒が「飲むか飲まないか」を決めるのに対し、節酒や減酒では「どのくらい飲むか」を管理します。

たとえば、毎日ビールを2本飲んでいた人が1本にする、週7日飲んでいた人が週3日にする、外食時だけ飲むといった方法があります。

医療では、「減酒」よりも「飲酒量低減」という表現が使われることがあります。

アルコール依存症の診断治療の手引きでも、断酒と並ぶ治療目標として飲酒量低減が示されています。

ただし、飲酒量を減らす方法がすべての人に適しているわけではありません。

飲み始めると止まらない人、減らそうとしても何度も失敗する人、重い臓器障害がある人、飲酒による社会的な問題が深刻な人などは、断酒を検討すべき状態に含まれます。

お酒の量を管理するときは、缶やグラスの数だけでなく、純アルコール量で確認することが重要です。

純アルコール量は「飲んだ量×アルコール度数÷100×0.8」で計算できます。

同じ500ミリリットルでも、5%のビールなら純アルコールは20グラムですが、9%の缶チューハイなら36グラムです。

本数だけを減らしても、度数の高い商品へ変えれば、摂取するアルコール量が増える場合があります。

なお、厚生労働省が示す「男性40グラム以上、女性20グラム以上」という数値は、生活習慣病のリスクを高める飲酒者を減らすための指標です。

個人にとって安全な飲酒量や、ここまでなら飲んでも問題ないという許容量を表すものではありません。

節酒や減酒を始めるときは、現状を記録し、減らせているかを数値で確認しましょう。

休肝日はお酒を飲まない日を部分的につくる方法

休肝日は、1週間の中にお酒を飲まない日を設ける方法です。

飲酒そのものを継続的にやめる断酒とは異なり、飲む日と飲まない日を分けます。

禁酒との違いは、禁酒では連続した一定期間を設定する場合が多いのに対し、休肝日では毎週決まった曜日などに飲まない日を作る点です。

厚生労働省の飲酒ガイドラインでは、毎日の継続的な飲酒を避けるため、1週間のうちに飲酒しない日を設けることが勧められています。

ただし、休肝日を作れば、飲む日にどれだけ飲んでもよいわけではありません。

月曜日と火曜日を休肝日にしても、水曜日に3日分をまとめて飲めば、一時多量飲酒の危険が高まります。

大切なのは、飲まない日を作ることと、1回の飲酒量や1週間全体の純アルコール量を抑えることです。

また、「休肝日を決めたのに飲んでしまう」という状態が繰り返される場合は、単なる習慣ではなく、飲酒を自分で調整しにくくなっている可能性があります。

アルコール依存症の診断治療の手引きでは、「休肝日と決めても飲んでしまう」「飲み始めたら止まらない」「予定した量以上に飲む」といった行動が、飲酒行動のコントロールが難しくなった具体例として示されています。

休肝日を守れなかっただけで、すぐにアルコール依存症と決まるわけではありません。

しかし、同じことが何度も続くなら、意思が弱いと責めるのではなく、飲酒習慣を詳しく確認する必要があります。

体調不良、ストレス、不眠などをお酒で解消しようとしていないかも振り返りましょう。

厚生労働省は、不安や不眠を解消する目的で飲酒を続けると、依存症の可能性を高めたり、眠りが浅くなったりすることがあると注意を促しています。

断酒・禁酒・減酒・節酒・休肝日を一覧表で比較

似た言葉を並べると違いが分かりにくいため、飲酒の有無、期間、目的をまとめて確認しましょう。

言葉お酒を飲むか主な期間基本的な考え方
断酒飲まない継続飲まない生活を続ける
禁酒飲まない一定期間または継続飲酒を禁止する
減酒飲む継続これまでより量や回数を減らす
節酒飲む継続自分で量や頻度を控える
休肝日飲む日もある週単位定期的に飲まない日を作る

健康管理として始めやすいのは、飲酒量の記録、休肝日の設定、期間を決めた禁酒です。

ただし、どの方法が適しているかは、現在の飲酒量や健康状態によって異なります。

飲酒習慣が軽く、量を自分で調整できる人なら、休肝日や減酒で改善を目指せる場合があります。

一方、飲み始めると止まらない人や、飲酒による問題が重大な人には、量を調整しながら飲み続ける方法が適さない可能性があります。

アルコール依存症の治療では、継続した断酒が最も安定した目標とされる一方、軽症で明確な合併症がない場合などには、医師の判断により飲酒量低減も選択肢になります。

自分に合う方法を選ぶときは、「できそうな方法」だけでなく、「安全に続けられる方法か」という視点が欠かせません。

たとえば、毎日多量に飲んでいる人が急に完全な断酒をすると、離脱症状が現れる可能性があります。

反対に、重い臓器障害がある人が自己判断で少量の飲酒を続けると、病気を悪化させる恐れがあります。

言葉の違いを知ることは大切ですが、最終的な目的は、自分や家族の健康と生活を守ることです。

判断に迷った場合は、かかりつけ医、専門医療機関、保健所、精神保健福祉センターなどへ相談しましょう。

断酒と禁酒のどちらを選べばよい?

健康管理や生活改善なら期間を決めた禁酒から考える

飲酒による重大な問題がなく、健康管理や生活習慣の見直しが目的なら、期間を決めた禁酒は始めやすい方法です。

最初から「一生飲まない」と考えると負担を感じる人でも、「まず2週間」「次の健康診断まで」なら行動に移しやすくなります。

期間中は、飲まなかった日だけでなく、睡眠、体重、食費、気分、飲みたくなった時間帯も記録してみましょう。

お酒を飲んでいないときの生活を観察すると、自分が何をきっかけに飲んでいたのかが分かります。

夕食の開始と同時に飲む人は、飲酒が食事の合図になっているのかもしれません。

帰宅直後に飲む人は、仕事と休息を切り替える道具として使っている可能性があります。

禁酒期間を決めるときは、終了日だけでなく、終了後の方針も決めておくことが大切です。

再開するなら、飲む曜日、1回の量、飲まない場面を具体的にします。

厚生労働省は、飲酒する場合でも、あらかじめ量を決める、食事を取る、水や炭酸水を挟む、飲酒しない日を設けるといった方法を案内しています。

量を決めるときは、純アルコール量を確認しましょう。

純アルコール量は、缶の容量や本数だけでは判断できません。

アルコール度数5%のビール500ミリリットルは20グラム、9%の缶チューハイ500ミリリットルは36グラムとなり、同じ容量でも大きな差があります。

高血圧など、少量の飲酒でも発症リスクが高まるとされる病気もあります。

「少しなら健康によい」「基準以下なら安全」と決めつけず、持病がある人は医師に確認してください。

飲酒を自分で止められない場合は断酒や専門相談を考える

飲む量や回数を自分で決められない状態では、期間を決めた禁酒だけで解決しようとすると、失敗を繰り返しやすくなります。

次のような状態がある場合は、断酒を含む治療や専門家への相談を考える必要があります。

  • 飲み始めると予定した量で止められない
  • 休肝日を決めても飲んでしまう
  • 朝や仕事中にも飲んでしまう
  • 家族に隠れて飲んでいる
  • 健康診断で指摘されても飲み続ける
  • 酒が切れると手の震えや発汗が起こる
  • 飲酒が原因で仕事や家庭に問題が出ている

これらは、アルコール依存症の診断治療の手引きで、渇望、飲酒行動のコントロール困難、離脱症状、飲酒中心の生活、有害な使用の継続などを説明する具体例として挙げられています。

当てはまる項目があるからといって、自分だけで診断することはできません。

しかし、「自分はまだ大丈夫」と放置するのではなく、医師に相談する理由にはなります。

特に、重い臓器障害、幻覚、けいれん、強い震えなどがある場合は、断酒を目標とした専門的な治療が必要になる可能性があります。

一人でお酒をやめられないことは、性格や根性の問題とは限りません。

身体依存が生じると、お酒を減らしたり止めたりした際に離脱症状が現れ、その苦しさを抑えるために再び飲むという悪循環が起こります。

この段階では、「もう飲まない」と宣言するだけでなく、離脱症状の管理、飲酒欲求への対処、生活環境の調整などが必要です。

本人が受診を拒む場合でも、家族だけで保健所や精神保健福祉センターへ相談できます。

厚生労働省は、保健所でアルコールなどの依存症に関する本人や家族の相談を受け付けており、保健師、医師、精神保健福祉士などが対応すると案内しています。

AUDITを活用して現在の飲酒習慣を確認する

自分の飲み方に問題があるか分からない場合は、AUDITを使って確認する方法があります。

AUDITは、世界保健機関が開発した、危険な飲酒や有害な飲酒を見つけるためのスクリーニングテストです。

質問は全部で10項目あり、飲酒頻度、1回の飲酒量、多量飲酒の頻度、飲酒を止められなかった経験、生活への影響、罪悪感、記憶を失った経験、けが、周囲からの心配などを確認します。

久里浜医療センターでは、各項目の合計点を最大40点として、飲酒問題の程度を評価すると説明しています。

厚生労働省の飲酒ガイドラインでも、自分の飲酒状況を把握する方法としてAUDITが紹介されています。

ただし、点数だけを見て「依存症ではない」「このまま飲んでも安全」と判断するのは適切ではありません。

AUDITは診断を確定する検査ではなく、問題のある飲酒を早めに見つけるための道具です。

評価の区切りとなる点数は、対象となる集団や目的によって変わる場合があります。

点数が低くても、妊娠中、服薬中、運転前、重い病気の治療中など、飲酒を避けるべき状況があります。

厚生労働省は、20歳未満の飲酒、酒気帯び運転、妊娠中や授乳期の飲酒、体質的にアルコールを受け付けない人の飲酒などについて、禁止または回避が必要な事項として示しています。

反対に、点数が高かったとしても、自分を責める必要はありません。

結果は、現在の飲み方を見直し、医療機関や相談窓口へつながるための情報として使います。

AUDITの回答では飲酒量を正直に記入することが重要です。

少なく見積もるのではなく、缶の容量、度数、本数から純アルコール量を確認しましょう。

安全にお酒をやめて継続するためのポイント

目的と期間を決めて飲酒したくなる状況を減らす

お酒をやめると決めたら、最初に「何のためにやめるのか」を具体的にします。

「健康のため」だけでは曖昧なので、「次の検査で医師と数値を確認するため」「朝の時間を増やすため」「家族との約束を守るため」のように、自分の生活と結び付けましょう。

禁酒なら開始日と終了日を決め、断酒なら終了日を設けず、今日飲まないための行動を決めます。

次に、飲みたくなる状況を洗い出します。

帰宅したとき、夕食中、入浴後、眠れないとき、嫌なことがあったとき、飲酒する友人と会ったときなど、人によって引き金は異なります。

家にお酒があると飲みやすい人は、目につく場所から片付けます。

帰り道に酒屋やコンビニへ寄る人は、道順を変える方法もあります。

飲酒を勧められる可能性がある場では、「治療中なので飲みません」「今はお酒をやめています」と、短く答える言葉を準備しておきます。

久里浜医療センターの認知行動療法では、酒を断る方法、飲酒欲求への対処、問題解決、再飲酒時の計画などを扱っています。

代わりの飲み物を用意する方法もありますが、アルコール依存症で断酒を目指す人は、ノンアルコールビールなどが飲酒の引き金になる可能性に注意が必要です。

久里浜医療センターの追跡調査では、断酒を目指すアルコール依存症患者において、ノンアルコールビールの使用が再飲酒と関連したことが報告されています。

一般的な期間限定の禁酒と、依存症治療としての断酒では、代替飲料の選び方も同じとは限りません。

炭酸水、お茶、コーヒーなどを含め、自分の状態に合う飲み物を医師や支援者と相談しましょう。

飲んでしまっても失敗と決めつけず原因を振り返る

禁酒や断酒の途中で飲んでしまうと、「すべて無駄になった」「自分には無理だ」と考えやすくなります。

しかし、一度の飲酒を理由に、その後も飲み続ける必要はありません。

まず安全を確保し、車の運転、入浴、高所作業、機械操作などは避けてください。

厚生労働省は、飲酒によって情報処理能力、注意力、判断力が低下し、事故や危険な行動につながる可能性があるとしています。

落ち着いたら、飲んだ事実だけでなく、その前に何があったかを振り返ります。

空腹だった、眠れなかった、人に勧められた、家にお酒があった、強いストレスを感じたなど、再飲酒につながった条件を整理しましょう。

振り返りの目的は、自分を責めることではありません。

同じ状況が起きたときに、別の行動を取れるように準備することです。

久里浜医療センターの対処技術トレーニングでも、緊急時や再飲酒したときの計画を立てることが扱われています。

アルコール依存症の治療では、治療を継続することが重要です。

断酒の同意が得られない場合にも、治療から離れてしまうことを防ぎながら、本人の状態に応じて目標を検討する考え方が示されています。

通院中の人が飲んでしまった場合は、隠さず医師や支援者へ伝えましょう。

飲酒量、飲んだ時間、体調、薬の服用状況を伝えると、次の対応を考えやすくなります。

何度も同じ状況で飲んでしまう場合は、目標や環境、治療方法を見直す必要があります。

自力で量を調整できない状態なら、期間限定の禁酒ではなく、医療とつながった断酒が必要かもしれません。

離脱症状に注意して必要なら医療機関や相談窓口を頼る

長期間にわたって多量に飲んでいる人は、急にお酒をやめることで離脱症状が現れる場合があります。

代表的な症状は、不眠、発汗、手の震え、血圧上昇、不安、いら立ちなどです。

重症になると、幻覚やけいれん発作が起こることもあります。

久里浜医療センターも、不眠、いら立ち、手の震え、発汗を代表的なアルコール離脱症状として挙げています。

「飲まないと震えるが、飲むと治まる」「朝から迎え酒をする」「以前に断酒してけいれんを起こした」といった経験がある人は、自己判断で急にやめないでください。

幻覚、けいれん、意識の混乱、激しい震えなどがある場合は、緊急の治療が必要になる可能性があります。

安全にやめるため、内科、精神科、心療内科、依存症専門医療機関などへ相談しましょう。

どこへ相談すればよいか分からない場合は、地域の保健所や精神保健福祉センターを利用できます。

保健所では、本人の受診相談だけでなく、アルコール問題を抱える人の家族からの相談にも対応しています。

精神保健福祉センターでは、アルコールや薬物に関する相談に応じ、必要に応じて医療機関を案内しています。

回復を支える場所は医療機関だけではありません。

断酒会、AA、回復支援施設、家族会などもあり、厚生労働省の依存症情報サイトから関連団体や相談先を確認できます。

相談する段階で、断酒を決意できている必要はありません。

「飲み方が気になる」「家族のお酒に困っている」「やめると体調が悪くなる」と伝えるだけでも相談できます。

断酒と禁酒の違いまとめ

断酒と禁酒は、どちらもお酒を飲まない行動を表す言葉です。

国語辞典では意味が大きく重なっており、期間による公的な区切りはありません。

一般的には、禁酒は一定期間お酒を飲まない取り組み、断酒は飲まない生活を継続する取り組みとして使い分けられています。

健康診断や生活改善が目的で、飲酒量を自分で管理できる人なら、期間を決めた禁酒や休肝日から始める方法があります。

一方、飲み始めると止まらない、健康や家庭に問題が出ても飲み続ける、酒が切れると手が震えるといった状態では、断酒を含む専門的な支援が必要になる可能性があります。

アルコール依存症の治療では継続した断酒が安定した目標とされていますが、軽症の場合などには、医師の判断で飲酒量低減を選ぶこともあります。

どの方法を選ぶ場合でも、飲酒量は缶や杯の数ではなく、純アルコール量で把握することが重要です。

ビール500ミリリットルで度数5%なら、純アルコールは20グラムです。

長期間多量に飲んでいる人は、急にやめると離脱症状が起こる場合があります。

手の震え、発汗、不眠、幻覚、けいれんなどが疑われる場合は、一人で我慢せず医療機関へ相談してください。

言葉の違い以上に大切なのは、現在の飲み方を正しく知り、自分の健康状態に合った方法を選ぶことです。

参考・出典情報
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次