年賀状やビジネスメールを書いているとき、「本年と今年は何が違うのだろう」と迷ったことはないでしょうか。
どちらも現在の年を表すため、意味だけを見れば大きな違いはありません。
しかし、取引先への挨拶、上司へのメール、友人への年賀状では、自然に見える表現が異なります。
使い方を誤ると意味が通じなくなるわけではありませんが、場面に合わない言葉を選ぶと、文章が堅すぎたり、反対に軽く見えたりすることがあります。
この記事では、両者の意味と印象の違い、相手別の使い分け、年賀状やビジネスメールで使える例文を分かりやすく解説します。
「本年度」「本年中」「旧年」「昨年」といった間違えやすい関連表現も取り上げるため、挨拶文を作るときの参考にしてください。
「本年」と「今年」の違いをひと目で確認
「本年」と「今年」の意味は基本的に同じ
「本年」と「今年」は、どちらも話している時点を含む現在の年を指す言葉です。
たとえば、2026年に「本年の目標」と言っても、「今年の目標」と言っても、指しているのは2026年の目標です。
小学館の『デジタル大辞泉』では、「今年」を「現在を含んでいる年」と説明しています。
『精選版 日本国語大辞典』では、「本年」を現在進行している年としたうえで、「ことし」の改まった言い方と説明しています。
つまり、両者の違いは指している期間ではなく、言葉から受ける印象や適した場面にあります。
「本年」は、会社からのお知らせ、式典の挨拶、取引先へのメール、年賀状など、改まった雰囲気を出したいときに使いやすい言葉です。
一方の「今年」は、普段の会話、家族や友人との連絡、社内の気軽なやり取りなど、自然で親しみやすい文章に向いています。
ここで注意したいのは、「本年」が「今年」の尊敬語や謙譲語ではないことです。
辞書の定義に照らすと、「本年」は敬語というよりも、同じ内容を改まった調子で表す言葉と理解するのが適切です。
そのため、「本年」を使っただけで文章全体が丁寧になるわけではありません。
相手への敬意を示したいときは、「本年もよろしく」だけで終わらせず、「本年もよろしくお願いいたします」や「本年もよろしくお願い申し上げます」のように、文末まで整えることが大切です。
意味の違いを探すよりも、「同じ年を指すが、文章の改まり具合が異なる」と覚えると迷いにくくなります。
「本年」は改まった場面で使う丁寧な表現
「本年」は「ほんねん」と読み、現在の年を改まった調子で表したいときに使います。
会社の代表挨拶で使われる「本年の経営方針」や、取引先への連絡で使われる「本年も変わらぬご支援を賜りますようお願い申し上げます」などが代表的な形です。
年賀状では、「旧年中は大変お世話になりました」に続けて、「本年もどうぞよろしくお願い申し上げます」と書く形がよく使われます。
日本郵便が案内している年賀状の文例でも、「旧年中は大変お世話になり、誠にありがとうございました」と感謝を伝えたあとに、「本年もどうぞよろしくお願い申し上げます」と続けています。
「本年」は新年の挨拶で目にする機会が多いため、年始だけに使う言葉だと思われることがあります。
しかし、辞書では現在進行している年を表す言葉とされているため、定義上は年始だけに限定されません。
夏に「本年上半期の実績をご報告いたします」と書くこともできます。
秋に「本年中の完成を予定しております」と案内しても、言葉の使い方として不自然ではありません。
ただし、日常会話で「本年は旅行に行きたい」と言うと、少しかしこまった印象になります。
家族や友人との会話なら、「今年は旅行に行きたい」のほうが自然です。
「本年」が適しているかを判断するときは、相手が目上かどうかだけでなく、文書全体をどのくらい改まった雰囲気にしたいかを考えましょう。
会社を代表して発信する文章や、多くの人が読む案内文では「本年」がなじみやすく、個人的な会話では「今年」がなじみやすいと考えると選びやすくなります。
「今年」は会話でも使いやすい日常的な表現
「今年」は、一般的には「ことし」と読み、話している時点を含む年を表します。
「今年は暑いね」「今年の夏休みはどこへ行くの」「今年から新しい仕事を始めました」など、日常のあらゆる場面で使えます。
表記は同じでも、「今年」には「こんねん」という読み方もあります。
『デジタル大辞泉』には「ことし」と「こんねん」の両方が掲載されており、どちらも現在の年を指す言葉です。
一般的な会話では、「ことし」と読むのが自然です。
「こんねん」は日常会話で耳にする機会が少なく、「本年」と同じように改まった印象を持たれる場合があります。
文章を書くときに読み方の誤解を避けたいなら、かしこまった内容では「本年」、親しみやすい内容では「今年」と書き分ける方法が分かりやすいでしょう。
「今年」は日常的な言葉ですが、ビジネスで使ってはいけないわけではありません。
日本郵便が案内している目上の人向けの年賀状にも、「今年も引き続きご指導のほどよろしくお願いいたします」という文例があります。
この例からも分かるように、「今年」を使っただけで失礼になるわけではありません。
「今年もよろしく」では軽く感じられる場面でも、「今年も変わらぬご指導を賜りますようお願い申し上げます」と文末を整えれば、丁寧な文章になります。
反対に、「本年」を選んでも、「本年もよろしく」とだけ書けば、相手や状況によっては説明不足に見えるかもしれません。
言葉を一つだけ見て判断するのではなく、相手との関係、文章を送る目的、文末の丁寧さを合わせて考えることが大切です。
迷ったときに役立つ使い分け早見表
両者の違いを簡単に整理すると、次のようになります。
| 比較する点 | 本年 | 今年 |
|---|---|---|
| 主な読み方 | ほんねん | ことし |
| 基本的な意味 | 現在の年 | 現在の年 |
| 言葉の印象 | 改まっている | 自然で親しみやすい |
| 向いている場面 | 公式文書、取引先への挨拶、式典、年賀状 | 日常会話、社内の気軽な連絡、家族や友人とのやり取り |
| 使用例 | 本年もよろしくお願い申し上げます | 今年もよろしくお願いします |
| 敬語かどうか | 単語自体は敬語ではない | 単語自体は敬語ではない |
意味だけを比べれば、どちらを使っても同じ年を指します。
迷ったときは、文章を声に出して読んでみる方法も役立ちます。
会社の代表者として挨拶する場面を想像し、「今年も変わらぬご愛顧を」と読むと少し柔らかく感じるなら、「本年も変わらぬご愛顧を」に替えると文章が引き締まります。
反対に、友人へのメッセージで「本年も一緒に遊びましょう」と書くと堅く感じるなら、「今年も一緒に遊ぼう」に替えたほうが自然です。
公的な文章について文化庁は、正確さだけでなく、読み手や文書の目的に応じて分かりやすい表現を選ぶ考え方を示しています。
使い分けに絶対的な境界線があるわけではないため、「誰が誰に、何の目的で伝える文章なのか」を基準にするとよいでしょう。
重要な取引先やお客様に送る文章で迷った場合は、「本年」を選ぶと改まった印象を出しやすくなります。
親しい相手や社内の短い連絡で迷った場合は、「今年」を選ぶと堅くなりすぎません。
相手や場面に合わせた正しい使い分け
取引先やお客様には「本年」が適している
取引先やお客様への年始の挨拶では、「本年」を選ぶと落ち着いた印象になります。
たとえば、「今年もご愛顧のほどよろしくお願いいたします」でも意味は通じますが、「本年も変わらぬご愛顧を賜りますようお願い申し上げます」とすると、企業からの正式な挨拶になじみやすくなります。
日本郵便の年賀状文例でも、今後の付き合いや相手の発展を願う結びとして、「本年もどうぞよろしくお願いいたします」などの表現が案内されています。
ただし、すべてのビジネスメールを「本年」に統一する必要はありません。
取引先の担当者と日頃から気軽にやり取りしている場合は、「今年も一緒に良い成果を出せるよう取り組んでまいります」という文章でも失礼ではありません。
正式な挨拶状、会社名義の年賀状、経営者からの挨拶、顧客全体に送る案内では、「本年」が使いやすいでしょう。
担当者同士の会話、打ち合わせ後のメール、親しい取引先への個人的なメッセージでは、「今年」を使うと自然な場合があります。
また、「本年」を使うときは、後ろに続く表現とのバランスも大切です。
「本年もよろしく」よりも、「本年も変わらぬお引き立てを賜りますようお願い申し上げます」のほうが、会社としての挨拶には向いています。
一方で、必要以上に難しい表現を重ねると、何を伝えたいのか分かりにくくなります。
文化庁の「公用文作成の考え方」でも、改まった表現には重厚さや正確さを高める効果がある一方、分かりやすさや親しみやすさを妨げるおそれがあると示されています。
丁寧さを保ちながら、相手が一度で理解できる文章を目指しましょう。
上司や目上の人にはどちらを使うべき?
上司や目上の人に対しては、「本年」を選べば間違いないと考えがちですが、「今年」を使っても直ちに失礼になるわけではありません。
日本郵便が案内している上司向け年賀状には、「今年も引き続きご指導のほどよろしくお願いいたします」という文例があります。
同じく日本郵便の文例には、「本年も昨年同様ご指導のほどよろしくお願いいたします」という形も掲載されています。
この二つを比べると、相手が目上だから必ず「本年」でなければならないとは言えません。
使い分けの基準になるのは、相手との距離と文章の改まり具合です。
会社の役員、普段あまり話さない上司、恩師などに送る正式な年賀状では、「本年」が落ち着いて見えます。
日常的にやり取りしている直属の上司へのメールでは、「今年もご指導のほどよろしくお願いいたします」と書いても自然です。
大切なのは、「今年」か「本年」かだけで丁寧さを判断しないことです。
「今年もよろしくね」と書けば親しみの強い文章になりますが、「今年も変わらぬご指導を賜りますよう、お願い申し上げます」と書けば丁寧な文章になります。
文化庁の「敬語の指針」では、「です」「ます」は話や文章の相手に丁寧さを添える丁寧語と説明されています。
目上の人へ送る文章では、年を表す単語よりも、感謝の言葉、依頼の表現、文末の整え方を含めて確認しましょう。
迷ったときは、正式な年賀状なら「本年」、普段のメールなら「今年」も使えると覚えておくと便利です。
社内メールや同僚との会話での選び方
社内では、文章を送る範囲によって使い分けると分かりやすくなります。
全社員に向けた社長挨拶、年度初めの方針説明、社内報などでは、「本年」が改まった文章になじみます。
たとえば、「本年は新規事業の成長に力を入れてまいります」と書けば、会社としての方針を伝える落ち着いた文章になります。
一方で、同じ部署のメンバーに送る連絡なら、「今年は新しい企画にも挑戦していきましょう」のほうが親しみやすく感じられます。
少人数のチームチャットで、「本年の昼食会は金曜日に開催します」と書くと、内容に対して表現が堅すぎる場合があります。
そのような場面では、「今年の昼食会は金曜日に開催します」で十分です。
文化庁は、公用文を作成するときも、言葉だけを一律に禁止したり固定したりするのではなく、使用する場面や読み手がどう感じるかを考えることが大切だとしています。
この考え方は社内文章にも応用できます。
会社全体を代表する文章では、一定の格式を保つために「本年」を使う方法があります。
行動を呼びかける文章や、社員との距離を縮めたいメッセージでは、「今年」を使うと柔らかく伝わります。
社内で表記ルールが決まっている場合は、個人の好みよりも社内ルールを優先しましょう。
特に広報、法務、総務などが確認する文書では、過去の文書との統一感も重要になります。
決まりがない場合は、「全社向けなら本年、日常的な連絡なら今年」を基本にすると迷いにくいでしょう。
友人や家族には「今年」が自然
友人や家族とのやり取りでは、「今年」を使うのが自然です。
「今年もよろしく」「今年は一緒に旅行しよう」「今年こそ資格を取りたい」など、普段の会話にそのまま使えます。
親しい相手に「本年も変わらぬお付き合いをお願い申し上げます」と送ることも、文法上の間違いではありません。
ただし、文章が必要以上に堅くなり、冗談のように受け取られる可能性があります。
家族に送るメッセージなら、「今年もみんな元気に過ごそう」のほうが、気持ちがまっすぐ伝わります。
友人への年賀状なら、「今年もたくさん遊ぼう」「今年こそ一緒に旅行へ行こう」のように、具体的な予定を添えると温かい文章になります。
日本郵便が案内している年賀状の一言にも、「今年は飛躍の年にできればと思います」という自然な表現が掲載されています。
親しい相手への文章では、格式よりも関係性に合っているかを重視しましょう。
ただし、友人であっても仕事上の取引相手を兼ねている場合や、年齢が大きく離れている場合は、少し丁寧に整えたほうが安心です。
その場合は、「本年もどうぞよろしくお願いいたします」と書くこともできます。
「今年」と「本年」のどちらが正解かを一律に決めるのではなく、自分と相手の普段の話し方を思い浮かべることが大切です。
いつもの会話で使わないほど堅い言葉を選ぶ必要はありません。
親しみを伝えたいなら「今年」、節目として丁寧に挨拶したいなら「本年」と使い分けましょう。
年賀状やビジネスメールで使える例文
取引先へ送る年賀状の丁寧な例文
取引先に送る年賀状では、前年への感謝、新しい年の挨拶、今後の付き合いを願う言葉を入れると内容がまとまります。
日本郵便の文例でも、「旧年中」の感謝に続けて、「本年もどうぞよろしくお願い申し上げます」と結ぶ構成が示されています。
基本的な形は次のとおりです。
謹んで新春のお慶びを申し上げます。
旧年中は格別のご厚情を賜り、誠にありがとうございました。
本年もより一層ご満足いただけるサービスをお届けできるよう、社員一同努めてまいります。
変わらぬご愛顧を賜りますよう、お願い申し上げます。
長い付き合いのある取引先には、次のように書けます。
新年を迎え、謹んでお慶び申し上げます。
旧年中は多大なるご支援を賜り、心より御礼申し上げます。
本年も皆様のご期待にお応えできるよう、誠心誠意取り組んでまいります。
引き続きお力添えを賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
個人で仕事を受けている相手には、少し柔らかくしてもよいでしょう。
あけましておめでとうございます。
昨年は多くの機会をいただき、誠にありがとうございました。
本年も一つ一つの仕事に丁寧に取り組んでまいります。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
相手との間に具体的な出来事がある場合は、「昨年は新商品の開発に際し、多大なるご協力をいただきました」のように内容を加えると、定型文だけの挨拶より気持ちが伝わります。
「本年」を使うことだけに意識を向けず、何に感謝しているのかを短く具体的に書くことが大切です。
上司や目上の人へ送る新年メールの例文
上司への新年メールでは、挨拶だけでなく、前年の指導に対する感謝や新しい年の抱負を加えると内容が整います。
「本年」を使った丁寧な例は次のとおりです。
あけましておめでとうございます。
旧年中は公私にわたり温かいご指導をいただき、誠にありがとうございました。
本年はこれまで以上に責任を持ち、業務に取り組んでまいります。
引き続きご指導のほど、よろしくお願いいたします。
普段からよく話す上司には、「今年」を使っても問題ありません。
あけましておめでとうございます。
昨年はプロジェクトを通して多くのことをご指導いただき、ありがとうございました。
今年は自分で考えて行動できる場面を増やし、チームに貢献してまいります。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
一つの文章の中に「今年」と「本年」が両方入っても、意味が矛盾するわけではありません。
ただし、短い文章の中で何度も入れ替えると統一感がなくなるため、基本的にはどちらかにそろえると読みやすくなります。
恩師に送る場合は、仕事の表現を避けて次のように書けます。
謹んで新年のお慶びを申し上げます。
昨年も温かいお心遣いをいただき、ありがとうございました。
本年が先生にとりまして、健やかで実り多き一年となりますようお祈り申し上げます。
今後とも変わらぬご指導を賜りますよう、お願い申し上げます。
日本郵便の年賀状文例でも、目上の人に対して「本年も昨年同様ご指導のほどよろしくお願いいたします」という表現が案内されています。
相手との関係に合わせて、「ご指導」「お力添え」「お心遣い」などの言葉を選びましょう。
社内や親しい相手に使える例文
同僚や社内のメンバーには、必要以上に堅くせず、今後の協力につながる文章にするとよいでしょう。
同僚へのメールなら、次のように書けます。
あけましておめでとうございます。
昨年は忙しい時期に何度も助けていただき、ありがとうございました。
今年もお互いに協力しながら、良い仕事をしていきましょう。
どうぞよろしくお願いします。
チーム全体へのメッセージなら、次のようにまとめられます。
あけましておめでとうございます。
昨年はチームの皆さんのおかげで、多くの課題を乗り越えることができました。
本年も意見を出し合いながら、より良い成果を目指していきましょう。
引き続きよろしくお願いいたします。
友人への年賀状では、普段の関係が伝わる言葉を選びましょう。
あけましておめでとう。
昨年は一緒に楽しい時間を過ごせてうれしかったです。
今年もたくさん笑える一年にしよう。
また近いうちに会えるのを楽しみにしています。
家族には、健康を願う文章が使いやすいでしょう。
あけましておめでとうございます。
今年も家族みんなが元気に過ごせますように。
またみんなで集まれる日を楽しみにしています。
社内や親しい相手への文章では、定型的な挨拶だけで終わらせず、相手との出来事や今年したいことを一文加えると、温かみが生まれます。
日本郵便も、年賀状に手書きの言葉を添える際は、印刷済みの内容を繰り返すのではなく、相手に関係する内容を加える方法を案内しています。
「本年もよろしくお願いいたします」の言い換え例
「本年もよろしくお願いいたします」は幅広い相手に使えますが、相手との関係や伝えたい内容に合わせて言い換えると、より具体的な挨拶になります。
取引先やお客様には、次のような表現が使えます。
本年も変わらぬご愛顧を賜りますよう、お願い申し上げます。
本年もより一層のお引き立てを賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
本年も皆様のご期待にお応えできるよう、誠心誠意努めてまいります。
上司や恩師には、次のような表現が自然です。
本年もご指導のほど、よろしくお願いいたします。
本年も変わらぬご指導ご鞭撻を賜りますよう、お願い申し上げます。
本年もお気付きの点がございましたら、ご指導いただけますと幸いです。
同僚や親しい仕事仲間には、少し柔らかくできます。
今年も力を合わせて頑張りましょう。
今年もお互いに助け合いながら、良い一年にしていきましょう。
本年も引き続き、よろしくお願いいたします。
友人や家族には、定型的な表現にこだわる必要はありません。
今年も変わらず仲良くしてください。
今年もたくさん楽しい思い出を作ろう。
今年も元気に過ごそうね。
「何卒」を加えると依頼の気持ちが強くなり、より改まった印象になります。
一方で、親しい相手に「何卒よろしくお願い申し上げます」と書くと距離を感じさせる場合があります。
言葉を丁寧にすることだけを目的にせず、相手との関係に合う表現を選びましょう。
関連表現との違いと間違えやすいポイント
「本年」と「本年度」は期間が異なる
「本年」と「本年度」は似ていますが、必ずしも同じ期間を指すとは限りません。
「本年」は、現在の暦の年を表す言葉です。
通常は、1月1日から12月31日までの一年を考えます。
一方の「本年度」は、学校、会社、行政、会計など、それぞれの制度で区切られた年度を指します。
国の会計年度については、財政法で毎年4月1日に始まり、翌年3月31日に終わると定められています。
小学校の学年についても、学校教育法施行規則により、4月1日に始まり、翌年3月31日に終わるとされています。
総務省統計局も、年平均を1月から12月の平均、年度平均を当年4月から翌年3月の平均として区別しています。
たとえば、2月の時点で「本年の売上」と言えば、その年の1月以降の売上を指すのが一般的です。
同じ時点で「本年度の売上」と言えば、4月から翌年3月までを年度としている会社では、前年4月からの売上を指すことがあります。
そのため、計画書、決算資料、学校関係の書類では、「年」と「年度」を何となく入れ替えてはいけません。
「本年の目標」は暦の一年を対象とし、「本年度の目標」は組織が定めた年度を対象とします。
期間を誤解されるおそれがある場合は、「2026年1月から12月まで」や「2026年4月から2027年3月まで」のように、開始月と終了月を明記するのが確実です。
「本年中」と「今年中」に意味の違いはある?
「本年中」と「今年中」は、どちらも現在の年が終わるまでの期間を表します。
「本年」と「今年」が同じ年を指すため、「中」を付けた場合も、基本的な期限は同じです。
違うのは、文章から受ける印象です。
「本年中に納品いたします」と書くと、取引先への正式な連絡になじみます。
「今年中に片付けます」と書くと、日常的で親しみやすい表現になります。
会社からお客様へ送る案内なら、次のように書けます。
お申し込みいただいた商品は、本年中に発送する予定です。
社内の気軽な会話なら、次の表現が自然です。
この作業は今年中に終わらせましょう。
家族との会話では、次のように使えます。
今年中に部屋を片付けたいと思っています。
どちらを使っても期限そのものは変わりませんが、契約や納期に関わる文章では、「本年中」だけでは具体的な最終日が分かりにくい場合があります。
重要な期限は、「12月31日まで」や「12月27日の営業時間内まで」のように日付を明記しましょう。
特に年末は、会社の最終営業日と暦上の年末が一致しないことがあります。
「本年中」という表現を選ぶことよりも、相手が期限を正しく理解できる書き方を優先してください。
「旧年・昨年」と組み合わせるときの選び方
「旧年」と「昨年」は、どちらも現在の年から見た前の年を表します。
『精選版 日本国語大辞典』では、「昨年」を今年の前の年、「旧年」を過ぎ去った年や去年と説明しています。
意味は近いものの、使われる場面には違いがあります。
「旧年」は、新しい年を迎えたときの挨拶でよく使われます。
日本郵便の年賀状文例でも、「旧年中は大変お世話になり、誠にありがとうございました」という表現が採用されています。
「昨年」は、新年の挨拶に限らず、一年を通して使える表現です。
年賀状では、次のどちらも使えます。
旧年中は格別のご厚情を賜り、ありがとうございました。
昨年は大変お世話になり、ありがとうございました。
「旧年中」は、新年らしい改まった挨拶にしたいときに向いています。
「昨年」は、具体的な出来事を振り返る文章に使いやすいでしょう。
昨年は新店舗の開設に際し、多大なるご協力をいただきました。
昨年の研修では、丁寧にご指導いただきありがとうございました。
「旧年中」と「本年」は相性がよく、年賀状では次の組み合わせが定番です。
旧年中は大変お世話になりました。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
一方で、「昨年」と「今年」を組み合わせると、少し親しみやすい文章になります。
昨年はたくさん助けてくれてありがとう。
今年もよろしくお願いします。
正式な挨拶では「旧年中」と「本年」、柔らかい挨拶では「昨年」と「今年」を基本にすると、文章全体の雰囲気をそろえやすくなります。
「今年」をビジネスで使うと失礼になる?
ビジネス文章で「今年」を使っても、それだけで失礼になるわけではありません。
日本郵便が案内する上司向けの文例にも、「今年も引き続きご指導のほどよろしくお願いいたします」という表現があります。
大切なのは、「今年」という単語だけではなく、文章全体が相手との関係に合っているかどうかです。
たとえば、「今年もよろしく」だけでは、取引先への正式な挨拶としては軽く見える場合があります。
しかし、次のように整えれば、十分に丁寧です。
今年も変わらぬお力添えを賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
それでも、会社名義の年賀状や顧客全体への挨拶では、「本年」を選ぶほうが文章の格式を整えやすいでしょう。
一方で、日常的にやり取りしている担当者へのメールで「今年の販売計画についてご相談いたします」と書くことに問題はありません。
むしろ、「本年の販売計画につきまして、ご相談を申し上げたく存じます」のように言葉を重ねすぎると、回りくどく感じられることがあります。
文化庁は、改まった表現を使う場合でも、読み手にとって分かりやすいか、親しみやすさを妨げていないかに注意する考え方を示しています。
迷った場合は、次の基準で考えるとよいでしょう。
| 場面 | 選びやすい表現 |
|---|---|
| 会社を代表する正式な挨拶 | 本年 |
| 取引先への年賀状 | 本年 |
| 上司への改まった挨拶 | 本年 |
| 上司との日常的なメール | 今年、本年のどちらも可 |
| 社内の気軽な連絡 | 今年 |
| 家族や友人との会話 | 今年 |
「本年なら必ず正しい」「今年なら失礼」と決めつけず、相手、目的、媒体、文末の丁寧さを合わせて判断しましょう。
「本年」と「今年」の違いまとめ
「本年」と「今年」は、どちらも現在の年を指すため、基本的な意味は同じです。
最も大きな違いは、「本年」が改まった言い方であり、「今年」が日常的で親しみやすい言い方であることです。
取引先への正式な挨拶、会社名義の年賀状、式典や代表挨拶では、「本年」を選ぶと文章が整います。
社内の気軽な連絡、家族や友人との会話では、「今年」を選ぶと自然です。
ただし、「今年」をビジネスで使っても、それだけで失礼になるわけではありません。
日本郵便の上司向け文例にも「今年」を使った文章があるため、相手との関係や文章全体の丁寧さで判断することが大切です。
また、「本年」と「本年度」は期間の考え方が異なります。
暦の年を表す場合は「本年」、会社や学校などが定める年度を表す場合は「本年度」を使いましょう。
迷ったときは、「同じ年を指しているが、改まり具合が異なる」と考えれば、適切な表現を選びやすくなります。
- 本年(読み)ホンネン|コトバンク
- 今年(読み)コトシ|コトバンク
- 季節の挨拶の文例 お祝い 年賀状|日本郵便
- 「公用文作成の考え方」について(建議)|文化庁
- 【文例あり】上司に送る年賀状に入れられる「気の利いた一言」|郵便局のプリントサービス
- 【文例50選】年賀状の挨拶文はもう迷わない!相手・状況別に使える気の利いた一言とは|郵便局のプリントサービス
- 年賀状に添える一言文例集 一言添えるポイントと関係別に文例を紹介|郵便局のプリントサービス
- 敬語の指針|文化審議会
- 財政法|e-Gov法令検索
- 4月1日生まれの児童生徒の学年について|文部科学省
- 消費者物価指数のしくみと見方「3 消費者物価指数の見方」|総務省統計局
- 旧年(読み)キュウネン|コトバンク
