「酒をたつ」と書きたいときは、「断つ」と「絶つ」のどちらを選べばよいのでしょうか。
布や紙を切る場面では、「裁つ」と「切る」の違いに迷うこともあります。
「断つ」「絶つ」「裁つ」はすべて同じ読み方ですが、それぞれが表す切り方や、切った後の状態は異なります。
基本的には、つながりや習慣を切る場合は「断つ」、続いていたものを終わらせる場合は「絶つ」、布や紙を目的に合わせて切る場合は「裁つ」です。
ただし、「関係をたつ」のように二つの漢字を使える表現もあり、単純な暗記だけでは判断しにくいことがあります。
この記事では、文化庁の使い分け例や常用漢字表を基に、三つの意味と違いを身近な例文で解説します。
「断つ・絶つ・裁つ」の違いを先に確認しよう
3つの意味と使い分けが分かる比較表
「断つ」「絶つ」「裁つ」は、どれも「たつ」と読みますが、何をどのような意味で切るのかが異なります。
文化庁の「異字同訓」の漢字の使い分け例では、「断つ」はつながっていたものを切り離したり、何かをやめたりする場合に使うとされています。
「絶つ」は、続くはずだったものを途中で終わらせ、途絶えさせる場合に使います。
「裁つ」は、布や紙を必要な寸法に合わせて切る場合に使う漢字です。
| 表記 | 中心となる意味 | 判断するときの注目点 | 代表的な例 |
|---|---|---|---|
| 断つ | 切り離す、遮る、やめる | つながりや経路、習慣を切る | 退路を断つ、酒を断つ |
| 絶つ | 続いていたものを終わらせる | 継続や存在が途切れる | 縁を絶つ、消息を絶つ |
| 裁つ | 寸法や形に合わせて切る | 何かを作るために素材を切る | 生地を裁つ、紙を裁つ |
最も簡単に分けるなら、「切り離すなら断つ」「終わらせるなら絶つ」「仕立てるために切るなら裁つ」と覚えるとよいでしょう。
ただし、「関係をたつ」のように、どこに注目するかによって二つの漢字を使える表現もあります。
一つの表現に必ず一つの漢字だけが対応するわけではない点が、この三語を難しく感じる理由です。
「断つ」は切り離す・途中で遮る
「断つ」は、続いているものの途中に切れ目を入れ、先へ進めなくするイメージを持つ言葉です。
例えば「退路を断つ」は、後ろへ戻るための道を使えなくすることを表します。
「補給路を断つ」なら、物資が運ばれてくる経路を遮り、補給が続かない状態にするという意味です。
実際に刃物で物を切る場面だけでなく、道、流れ、つながり、習慣などを切る場合にも使われます。
漢字ペディアでは、「断つ」の意味として、つながりを途中で切ること、遮ること、習慣などをやめることが示されています。
「酒を断つ」「食事を断つ」「雑念を断つ」のように、自分の意思で何かをやめる場面でも「断つ」が選ばれます。
ここで大切なのは、必ずしも永久に消滅させる意味ではないことです。
ある期間だけ酒や甘い物を控える場合でも、「断つ」を使えます。
「続いているものを、ここでいったん切る」と考えると理解しやすくなります。
「絶つ」は続いていたものを終わらせる
「絶つ」は、それまで続いていた関係、連絡、命、希望などを終わらせるときに使います。
「断つ」が切る動作や区切りに注目するのに対し、「絶つ」は切れた結果として続かなくなることに重心があります。
「縁を絶つ」は、それまで存在していた人間関係を終わらせる表現です。
「消息を絶つ」は、ある人の状況を伝える情報が届かなくなり、その後が分からなくなることを表します。
「最後の望みが絶たれる」では、残っていた可能性が失われ、希望が続かなくなったことを意味します。
文化庁の資料では、「縁を絶つ」「命を絶つ」「消息を絶つ」「後を絶たない」などが代表例として示されています。
漢字ペディアでも、関係をなくす、続いていたものを途絶えさせる、続いていたものを終わらせるという三つの方向から説明されています。
「なくなる」「続かなくなる」「終わる」という感覚が強いときは、「絶つ」が候補になります。
「裁つ」は布や紙を目的に合わせて切る
「裁つ」は、布や紙などを、決められた寸法や形に合わせて切るときに使います。
単に小さく切ったり、二つに分けたりするだけではなく、その後に何かを作る目的があることが重要です。
例えば、型紙に合わせて布地を切り、洋服を作る準備をする場合は「布を裁つ」と書きます。
着物を仕立てるために反物を必要な長さに切る場合も「裁つ」です。
文化庁の使い分け例には、「生地を裁つ」「着物を裁つ」「紙を裁つ」「裁ちばさみ」が挙げられています。
漢字ペディアでは、「裁つ」を衣服などに仕立てるために布を切ることと説明し、型紙に沿って布地を切る例を示しています。
「裁縫」「裁断」という言葉を思い浮かべると、意味を覚えやすくなります。
「裁つ」は素材を乱雑に切るのではなく、必要な形を考えながら切り分ける言葉です。
迷ったときに使える10秒判定法
三つの漢字で迷ったら、何を切ろうとしているのかを確認します。
次の順番で考えると、多くの文章を短時間で判断できます。
| 確認すること | 当てはまる場合 |
|---|---|
| 布や紙を寸法、型、用途に合わせて切るのか | 裁つ |
| 続いていた関係、消息、命、希望などを終わらせるのか | 絶つ |
| 経路やつながりを切る、または習慣をやめるのか | 断つ |
例えば、「型紙に沿って布をたつ」なら、作るために形を整えて切るので「裁つ」です。
「山に入った後、消息をたった」なら、消息が続かなくなったので「絶った」となります。
「健康のために酒をたった」なら、飲酒という習慣をやめたので「断った」と書くのが基本です。
それでも判断できない場合は、「切り離すことを強調したいのか」「終わった結果を強調したいのか」を考えます。
文化庁の資料でも、意味が近いために複数の漢字を当てられる表現があると説明されており、文脈に応じた判断が必要です。
「断つ」の意味と使い方
「断つ」が表す切断・中断・禁止の意味
「断つ」の中心にあるのは、続いているものを途中で切り離すという感覚です。
そこから、物理的に切る、通り道を遮る、関係を切る、習慣をやめるといった複数の意味が生まれます。
「ロープを断つ」のように、目に見える物を切る場合にも使えます。
「通信を断つ」「補給を断つ」のように、目に見えない流れを遮る場合にも使えます。
さらに、「酒を断つ」のように、自分に対して禁止する意味でも用いられます。
漢字ペディアは、「断つ」に、つながりを切り離す、遮る、やめるという意味を示しています。
「断」という漢字には、「切断」「中断」「遮断」などの言葉があります。
どの言葉にも、続いているものの途中に区切りを入れるイメージがあります。
「断つ」で迷ったときは、「切断する」「遮断する」「中断する」と言い換えられるかを考えてみましょう。
自然に言い換えられる場合は、「断つ」が合う可能性が高くなります。
「退路を断つ」「補給路を断つ」の使い方
「退路を断つ」とは、後ろへ戻るための道を使えなくすることです。
戦いに関する文章では、敵の退却経路をふさぐ意味で使われることがあります。
日常生活では、「もう後戻りできない状況を自分で作り、覚悟を決める」という比喩表現としてよく使われます。
例えば、「退路を断つために会社へ退職届を出した」と書けば、決意を揺らがせる選択肢を自分からなくしたという意味になります。
文化庁は「退路を断つ」を「断つ」の代表例として挙げています。
「補給路を断つ」も同じ考え方です。
人や物資が通る経路を遮り、補給が届かない状態にします。
漢字ペディアでは、「補給路を断つ」「後続を断つ」「退路を断つ」が、途中で遮り切り離す用例として示されています。
道そのものを消滅させるというより、道として機能しないように流れを切る点がポイントです。
そのため、「路」「経路」「流れ」「供給」と結び付く表現では、「断つ」が使いやすくなります。
「酒を断つ」「甘い物を断つ」の使い方
「酒を断つ」は、飲酒をやめることを表します。
文化庁の使い分け例でも、「酒を断つ」が「断つ」の代表的な用法として示されています。
漢字ペディアにも、「酒を断つ」「食事を断つ」という例があります。
この場合に注目しているのは、酒そのものをなくすことではありません。
自分と酒とのつながりや、酒を飲み続けてきた習慣を切ることに注目しています。
「健康診断まで酒を断つ」のように、期間が限られていても使えます。
「願いがかなうまで甘い物を断つ」のように、目的を持って好物を控える場合にも自然です。
一方、「甘い物を絶滅させる」という意味ではないため、「絶つ」を優先する必要はありません。
習慣、欲求、誘惑などから自分を切り離す場面では、「断つ」を基本にすると迷いにくくなります。
「断酒」「断食」「断捨離」などの「断」にも、これまでの習慣や執着を切る感覚が表れています。
「関係を断つ」「国交を断つ」のニュアンス
「関係を断つ」と「関係を絶つ」は、どちらも使用できます。
文化庁は「国交をたつ」と「関係をたつ」について、つながっていたものを切り離す観点では「断」を使い、続くはずだったものを途中で終わらせる観点では「絶」も使えると説明しています。
「関係を断つ」は、相手とのつながりを自分の意思で切る動作に重点があります。
連絡先を削除する、会わないようにする、取引をやめるなど、具体的な行動を連想させやすい表現です。
「関係を絶つ」は、それまで続いていた関係が完全に終わり、その後は続かないという結果を強く感じさせます。
ただし、この差は絶対的なルールではありません。
文章の前後や書き手がどこを強調したいかによって、適した表記が変わります。
判断に迷うときは、関係を切る決断や行動を表したいなら「断つ」、関係が終わって続かなくなることを表したいなら「絶つ」と考えるとよいでしょう。
「断つ」を使う代表的な例文一覧
「断つ」は、物理的なつながり、経路、習慣、迷いなど、幅広い対象に使われます。
次の例文では、何を切っているのかに注目してください。
| 例文 | 表されている意味 |
|---|---|
| 敵の補給路を断つ | 物資が通る経路を遮る |
| 自ら退路を断って挑戦する | 後戻りの選択肢をなくす |
| 健康のために酒を断つ | 飲酒の習慣をやめる |
| 試験前はゲームを断つ | 一定期間、行動を控える |
| 雑念を断って作業に集中する | 不要な考えを切り離す |
| 悪い仲間との関係を断つ | 人とのつながりを切る |
| 問題の原因を断つ | 問題につながる流れを止める |
漢字ペディアの同訓異義欄でも、「補給路」「後続」「退路」「酒」「食事」「雑念」「悪の根」などが「断つ」と結び付く例として示されています。
共通しているのは、続いているものの途中に区切りを入れ、その先へ進ませないことです。
文章を書いた後に「遮る」「切り離す」「やめる」のどれかへ言い換えられるなら、「断つ」の使い方として自然かどうかを判断しやすくなります。
「絶つ」の意味と使い方
「絶つ」が表す終了・消滅・途絶の意味
「絶つ」は、続いていたものを終わらせ、今後は続かない状態にすることを表します。
「絶える」という言葉を思い浮かべると、意味をつかみやすくなります。
人の往来が絶える、笑い声が絶える、便りが絶えるという場合は、それまで存在していた流れがなくなっています。
「絶つ」は、その状態を人や出来事が引き起こす表現です。
例えば、「連絡を絶つ」は、それまで続いていた連絡を終わらせることを表します。
「望みを絶つ」は、残されていた可能性が失われることです。
漢字ペディアは、「絶つ」について、関係をなくす、続いていたものを途絶えさせる、続いていたものを終わらせるという意味を示しています。
「絶交」「絶縁」「絶命」「絶望」「断絶」などの熟語を思い浮かべると、「続かなくなる」「なくなる」という共通点が見えてきます。
終了した結果に重点を置く場合は、「絶つ」が自然です。
「縁を絶つ」「交際を絶つ」の使い方
「縁を絶つ」は、それまで結ばれていた人との縁を終わらせる表現です。
文化庁は「縁を絶つ」を「絶つ」の代表例として示しています。
「交際を絶つ」も、続いていた付き合いを終わらせる場合に使われます。
漢字ペディアでは、「絶つ」の例として「交際を絶つ」が挙げられています。
「縁」や「交際」は、時間の経過とともに続いていく関係です。
その継続がなくなるため、「絶つ」と相性がよいのです。
例文としては、「度重なる裏切りを理由に、その人物との縁を絶った」のように使えます。
「卒業後、以前の仲間との交際を絶った」なら、以前は続いていた付き合いが終わったことを表します。
ただし、「関係を断つ」のように「断つ」が使える場面もあるため、人間関係には必ず「絶つ」を使うというルールではありません。
つながりを切る行動よりも、その関係が終わって続かないことを伝えたい場合に「絶つ」が適しています。
「消息を絶つ」「連絡を絶つ」の使い方
「消息を絶つ」は、ある人の居場所や状況を知らせる情報が届かなくなることです。
文化庁の使い分け例では、「消息を絶つ」が「絶つ」の代表例として挙げられています。
例えば、「登山に出発した後、消息を絶った」と書けば、出発後の状況が分からなくなったことを表します。
自分の意思で連絡をやめた場合だけでなく、事故や通信障害などによって情報が届かなくなった場合にも使われます。
「連絡を絶つ」は、それまで続いていたやり取りを終わらせ、その後は連絡しないという意味になります。
漢字ペディアにも、外部との連絡や関係をなくす意味で「絶つ」が使われています。
一方で、「通信手段を断つ」「連絡経路を断つ」のように、情報が通る手段や経路を遮る場合は「断つ」が自然です。
つまり、やり取りの継続が終わることに注目すれば「絶つ」、連絡が通る経路を切ることに注目すれば「断つ」と考えられます。
「連絡」という一語だけで機械的に決めるのではなく、何が切れたのかを確認することが大切です。
「望みを絶つ」「命を絶つ」の使い方
「望みを絶つ」は、それまで残っていた希望や可能性を失わせることです。
「最後の望みが絶たれた」という受け身の形で使われることも多くあります。
文化庁は「最後の望みが絶たれる」を、「絶つ」の用例として示しています。
希望は物のように切断できるものではありませんが、続く可能性がなくなるため「絶つ」を使います。
「命を絶つ」も、続いていた生命が終わることを表すため「絶つ」です。
文化庁と漢字ペディアの双方で、「命を絶つ」が用例として挙げられています。
「命を断つ」と書くと、物理的に切る印象が前面に出やすく、一般的な表記としては「命を絶つ」が適しています。
ただし、命に関する表現は文脈によって非常に重い意味を持ちます。
報道、案内、教育などでは、必要以上に刺激的な表現にならないよう、文章全体への配慮も必要です。
「後を絶たない」が「絶つ」になる理由
「後を絶たない」は、同じような出来事が次々に発生し、終わらないことを表す慣用的な表現です。
「交通事故が後を絶たない」「同じ手口の被害が後を絶たない」のように使います。
一見すると、出来事が続いているのに「絶つ」を使うため、分かりにくく感じるかもしれません。
この表現は、「後が絶える」という状態を「ない」で打ち消しています。
つまり、「後がなくならない」「次の発生が途切れない」という意味です。
文化庁は「交通事故が後を絶たない」を「絶つ」の例として挙げています。
漢字ペディアでも、「申し込みはあとを絶たない」という例が示されています。
「断たない」と書くのではなく、「絶たない」と書くのが基本です。
「絶えることがない」と言い換えて覚えると、漢字を間違えにくくなります。
「裁つ」の意味と使い方
「裁つ」は寸法や形に合わせて切ること
「裁つ」は、布や紙などを、決められた寸法や形に合わせて切ることです。
何かを壊すためではなく、衣服、作品、製品などを作るための準備として切る点に特徴があります。
文化庁は「裁つ」を、布や紙を一定の寸法に合わせて切ることと整理しています。
「裁断」という熟語にも、材料を必要な形へ切り分ける意味があります。
漢字ペディアでは「裁断」について、布などを型に合わせて切る意味が示されています。
「裁」という漢字には、「裁判」「裁決」のように、物事を判断して決める意味もあります。
「裁つ」でも、必要な部分と不要な部分を考え、形を決めながら切り分ける感覚があります。
ただし、「裁つ」は布にしか使えないわけではありません。
文化庁の例に「紙を裁つ」が含まれているため、紙を寸法に合わせて切る場合にも使用できます。
「布を裁つ」「生地を裁つ」の使い方
「布を裁つ」は、衣服や布製品を作るために、布を必要な形へ切ることです。
型紙を布の上に置き、その線に沿って切る作業が代表的です。
漢字ペディアは、「裁つ」の例として、型紙に沿ってはさみで布地を切る場面を示しています。
「生地を裁つ」も同じ意味です。
文化庁の資料には「生地を裁つ」「着物を裁つ」が挙げられています。
「着物を裁つ」は、完成した着物を切るという意味ではなく、着物を仕立てるために反物や布を裁断する意味で使われます。
「母は型紙に合わせてワンピースの生地を裁った」のように書けば、衣服を作るための作業だと分かります。
単に布を半分に切っただけなら、「布を切る」と書いても問題ありません。
仕立てや製作を意識し、寸法や形を整えている場合に「裁つ」を選ぶと、文章がより正確になります。
紙を切るときは「裁つ」と「切る」のどちらか
紙に使う表現は、切る目的によって変わります。
紙を適当な大きさに分けるだけなら、「紙を切る」が自然です。
子どもが折り紙をはさみで自由に切る場面も、「切る」で十分に意味が伝わります。
一方、印刷物、冊子、型紙などを作るために、決められた寸法へ正確に切りそろえる場合は「紙を裁つ」と表現できます。
文化庁も「紙を裁つ」を「裁つ」の正式な用例として示しています。
例えば、「製本前に大きな紙を規定の寸法に裁つ」という文章では、目的に合わせて紙を整える作業が伝わります。
「紙を裁つ」と書いたからといって、すべての紙切り作業が特別なものになるわけではありません。
「切る」は広い意味を持つ一般的な言葉で、「裁つ」は寸法、型、製作目的を明確にしたいときに使う言葉です。
日常的な文章では無理に「裁つ」を使わず、作業の性質をはっきり示したい場合に選ぶとよいでしょう。
「断つ」と「裁つ」を分けるポイント
「断つ」と「裁つ」は、どちらも物を切る場面で使われるため、混同することがあります。
判断のポイントは、切る目的です。
つながっている物を切り離すことが目的なら「断つ」です。
材料を必要な寸法や形に整え、何かを作ることが目的なら「裁つ」です。
例えば、「ロープを断つ」は、ロープのつながりを切ることが目的です。
「布を裁つ」は、衣服や布製品を作るために必要な形へ整えることが目的です。
「大きな紙を二つに断つ」と表現すれば、紙を切り離す動作が強調されます。
「印刷用紙を規格に合わせて裁つ」と表現すれば、完成品の寸法へ整える作業が強調されます。
文化庁の基準では、「断つ」はつながりを切り離すこと、「裁つ」は布や紙を寸法に合わせて切ることとして区別されています。
使った道具がはさみかカッターかではなく、なぜ切るのかを考えることが大切です。
「裁ちばさみ」「裁ち目」などの関連語
「裁つ」は、裁縫や製作に関係する言葉の中にも使われています。
「裁ちばさみ」は、主に布を裁つために使うはさみです。
文化庁の使い分け例と漢字ペディアの同訓異義欄では、「裁ちばさみ」が「裁つ」の関連例として示されています。
「裁ち目」は、布を裁断した部分や、切った布の切れ目を表す言葉です。
「裁ち物」は、裁縫で布を裁つ作業や、そのための布を指す場合があります。
常用漢字表でも、「裁」の訓として「たつ」が掲げられ、用例として「裁つ」「裁ち物」が示されています。
「裁縫」は、布を寸法に合わせて裁ち、衣服などに縫い上げることです。
「裁断」は、布などを型に合わせて切る意味を持ちます。
これらの言葉に共通するのは、素材を目的に合わせて整えることです。
「裁判」の「裁」と形は同じですが、「裁つ」と「裁く」では読み方も使い方も異なるため、書き間違えないようにしましょう。
迷いやすい「たつ」の使い分けを実例で解決
「関係を断つ」と「関係を絶つ」は両方正しい?
「関係を断つ」と「関係を絶つ」は、どちらも使える表現です。
文化庁も「関係をたつ」について、「断」と「絶」の両方を使えると明示しています。
ただし、二つの表現は注目する部分が少し異なります。
「関係を断つ」は、つながりを切る決断や行動に重点があります。
「問題を起こした取引先との関係を断った」と書けば、取引や連絡をやめる行動が感じられます。
「関係を絶つ」は、それまで続いていた関係が終わり、今後は続かないという結果に重点があります。
「家族と長年にわたって関係を絶っていた」と書けば、関係がない状態が続いていたことを伝えやすくなります。
どちらか一方を誤りと決めつける必要はありません。
切る行為を表したいなら「断つ」、継続が終わることを表したいなら「絶つ」という基準で選びましょう。
文章全体で意味が十分に伝わる場合は、書き手が強調したい内容を優先できます。
「酒を断つ」と「酒を絶つ」の違い
一般的な文章では、「酒を断つ」と書くのが分かりやすく、文化庁の使い分け例にも採用されています。
漢字ペディアの同訓異義欄でも、「酒を断つ」は習慣をやめる用例として示されています。
飲酒は、人が続けている行動や習慣です。
その習慣から自分を切り離すため、「断つ」が適しています。
「健康のために一年間、酒を断つことにした」のように、期限が決まっていても使えます。
「酒を絶つ」と書けば、飲酒を完全に終わらせる意図は推測できますが、一般的な使い分けでは「断つ」を選ぶほうが安定しています。
「絶つ」は、縁、消息、命、望みなど、継続していたものが終わり、途絶える場面に使われるのが基本です。
酒、甘い物、たばこ、夜更かしなど、自分の習慣をやめる文章では、「断つ」を第一候補にするとよいでしょう。
「連絡を断つ」と「連絡を絶つ」の違い
「連絡を断つ」と「連絡を絶つ」は、文章が表す状況によって使い分けられます。
「連絡を絶つ」は、それまで続いていた連絡を終わらせ、その後のやり取りがなくなることを強調します。
「彼は退職後、以前の同僚との連絡を絶った」と書けば、自分の意思で交流を終わらせた印象になります。
「消息を絶つ」が「絶つ」の代表例であることからも、情報の継続がなくなる場面では「絶つ」がなじみやすいと分かります。
一方、「連絡を断つ」は、連絡の手段や経路を切る動作に重点を置く表現です。
「外部との連絡を断つために通信機器を回収した」と書けば、連絡できない状態を意図的に作ったことが伝わります。
より明確にしたい場合は、「通信を断つ」「連絡手段を断つ」「連絡経路を断つ」と書く方法もあります。
連絡が続かなくなった結果を伝えるなら「絶つ」、連絡を可能にする手段を切るなら「断つ」と考えると整理しやすくなります。
「悪の根を断つ」と「悪の根を絶つ」の違い
「悪の根を断つ」と「悪の根を絶つ」は、どちらも意味を理解できる表現ですが、注目点が異なります。
漢字ペディアの同訓異義欄では、「悪の根を断つ」が「断つ」の用例として挙げられています。
この表現では、悪事が生まれる原因や流れを切り、これ以上広がらないようにする感覚があります。
例えば、「不正資金の流れを調査し、犯罪の根を断つ」のような文章に合います。
一方、漢字ペディアの「絶つ」の語義には、「悪の根を絶つ」という例も示されています。
こちらは、悪の原因を残さず終わらせ、再び発生しない状態を目指す印象が強くなります。
原因へつながる経路を切ることに注目するなら「断つ」、悪そのものを根本から終わらせることに注目するなら「絶つ」と考えられます。
ただし、比喩的な表現であるため、前後の文章によって受け取られ方は変わります。
何を具体的に行うのかを続けて説明すると、漢字の細かな違いに頼らなくても意図が正確に伝わります。
例文クイズで覚える「断つ・絶つ・裁つ」
最後に、三つの漢字を正しく選べるか確認してみましょう。
空欄には「断つ」「絶つ」「裁つ」のどれかが入ります。
| 問題 | 答え |
|---|---|
| 健康のために甘い物をたつ | 甘い物を断つ |
| 型紙に沿って布地をたつ | 布地を裁つ |
| 山へ入った後、消息をたつ | 消息を絶つ |
| 自分から退路をたって挑戦する | 退路を断つ |
| 長年の悪縁をたつ | 悪縁を絶つ |
| 冊子を作るために紙をたつ | 紙を裁つ |
| 試験が終わるまでゲームをたつ | ゲームを断つ |
| 同じ種類の被害が後をたたない | 後を絶たない |
「甘い物」「ゲーム」は、習慣や行動をやめるため「断つ」です。
「布地」「紙」は、必要な形や寸法に合わせて切るため「裁つ」です。
「消息」「悪縁」は、それまで続いていたものが途絶えたり、終わったりするため「絶つ」です。
「退路」は、通るための経路を遮るので「断つ」となります。
「後を絶たない」は、「発生が絶えることがない」と言い換えられます。
三つの意味は重なる部分がありますが、切る対象と、切った後にどうなるのかを考えれば判断しやすくなります。
「断つ」「絶つ」「裁つ」の違いまとめ
「断つ」「絶つ」「裁つ」は、すべて「たつ」と読みますが、使う場面は同じではありません。
「断つ」は、つながりや経路を切り離したり、習慣をやめたりするときに使います。
代表例は、「退路を断つ」「補給路を断つ」「酒を断つ」です。
「絶つ」は、続いていた関係、消息、命、希望などを終わらせ、途絶えさせるときに使います。
代表例は、「縁を絶つ」「消息を絶つ」「望みを絶つ」「後を絶たない」です。
「裁つ」は、衣服や印刷物などを作るために、布や紙を寸法や形に合わせて切るときに使います。
代表例は、「生地を裁つ」「紙を裁つ」「裁ちばさみ」です。
迷ったときは、「切り離すなら断つ」「終わらせるなら絶つ」「仕立てるために切るなら裁つ」という基準が役立ちます。
ただし、「関係を断つ」と「関係を絶つ」のように、どちらも使える表現があります。
その場合は、切る行動に注目するのか、続かなくなった結果に注目するのかを考えて選びましょう。
常用漢字表は、一般の社会生活で現代の国語を書き表す際の漢字使用の目安であり、すべての個人的な表記を一律に縛るものではありません。
漢字を機械的に暗記するよりも、文の中で何が切れ、どのような状態になるのかを考えることが、正しい使い分けへの近道です。
