アフリカの草原を歩くハイエナ、リカオン、ジャッカルは、どれも犬のような顔と長い脚を持っています。
写真を見て「全部ハイエナでは?」と思ったことがある人もいるかもしれません。
ところが、ハイエナは犬の仲間ではなく、リカオンとジャッカルも名前や姿が似ているだけで同じ動物ではありません。
耳、模様、体格を見れば簡単に区別でき、狩りの方法や群れの作り方にも驚くほど大きな違いがあります。
この記事では、3種の分類、見分け方、食べ物、狩り、群れ、強さ、絶滅の危険まで、初めて調べる人にも分かりやすく比較します。
ハイエナ・リカオン・ジャッカルの違いを一覧で比較
まずは結論!3種の違いが30秒で分かる比較表
ハイエナ、リカオン、ジャッカルは、いずれも細長い脚と大きな耳を持つ肉食動物なので、写真を一瞬見ただけでは区別しにくいことがあります。
しかし、分類、体格、模様、暮らし方を比べると、実際にはかなり異なる動物です。
ここでは、アフリカで比較されることが多いブチハイエナ、リカオン、セグロジャッカルを基準に整理します。
| 比較項目 | ブチハイエナ | リカオン | セグロジャッカル |
|---|---|---|---|
| 分類 | ハイエナ科 | イヌ科 | イヌ科 |
| 学名 | Crocuta crocuta | Lycaon pictus | Lupulella mesomelas |
| 体重の目安 | 約40~86kg | 約17~36kg | 平均約7~8kg |
| 耳 | 丸みがある | 非常に大きく丸い | 大きくとがる |
| 毛の特徴 | 茶色や灰色の地に黒い斑点 | 黒・白・黄褐色の不規則な模様 | 背中に黒い鞍のような模様 |
| 体形 | 首と上半身が太く、腰が低く見える | 細身で脚が長い | 小柄でキツネに似る |
| 主な食べ物 | 自ら狩った獲物、死肉など | 主に中型の有蹄類 | 小動物、昆虫、死肉、果実など |
| 集団生活 | クラン | パック | つがい、家族 |
| IUCNの評価 | 低懸念 | 絶滅危惧 | 低懸念 |
体重や体長は性別、地域、個体によって差がありますが、基本的にはブチハイエナが最も重く、リカオンがその次、セグロジャッカルが最も軽いと考えると分かりやすいでしょう。
分類と保全状況については、ブチハイエナがハイエナ科で低懸念、リカオンがイヌ科で絶滅危惧、セグロジャッカルがイヌ科で低懸念とされています。
ハイエナはハイエナ科、リカオンとジャッカルはイヌ科
3種の決定的な違いは、分類です。
リカオンとジャッカルは、オオカミ、キツネ、コヨーテ、家庭で飼われる犬などと同じイヌ科に属します。
一方のハイエナは、独立したハイエナ科に属する動物であり、犬の仲間ではありません。
ハイエナは犬のような顔や歩き方をしていますが、食肉目の中では犬型のグループではなく、猫型のグループに分類されます。
そのため、犬よりもネコ科、ジャコウネコ科、マングース科などに近い系統です。
ただし、ハイエナがネコ科に入るわけではなく、あくまでハイエナ科という独自のグループです。
リカオンの学名はLycaon pictusで、現生種ではリカオン属を単独で構成しています。
セグロジャッカルは以前Canis mesomelasとされていましたが、現在のMammal Diversity DatabaseではLupulella mesomelasとして扱われています。
比較の基準にする種類を最初に確認しよう
「ハイエナ」は一つの動物だけを示す名前ではありません。
現生のハイエナ科には、ブチハイエナ、シマハイエナ、カッショクハイエナ、アードウルフの4種が含まれます。
この中で大型になり、丸い耳と斑点模様を持つのがブチハイエナです。
シマハイエナやカッショクハイエナはブチハイエナより耳がとがっており、見た目や社会構造も異なります。
アードウルフは主にシロアリを食べる小型の動物なので、一般に想像される強力な大型ハイエナとは性質が大きく異なります。
「ジャッカル」も一つの種の名前ではなく、複数のイヌ科動物に使われる一般名です。
代表的なものには、キンイロジャッカル、セグロジャッカル、ヨコスジジャッカルがいます。
現在の分類では、キンイロジャッカルはCanis属、セグロジャッカルとヨコスジジャッカルはLupulella属に置かれており、名前にジャッカルと付いていても同じ属とは限りません。
この記事では見た目や生息地を比較しやすくするため、ハイエナはブチハイエナ、ジャッカルはセグロジャッカルを中心に解説します。
大きさ・体重・生息地・食べ物をまとめて比較
ブチハイエナの体重はおよそ40~86kgで、肩までの高さは約77~81cmとされています。
メスがオスよりやや重くなる傾向があり、太い首と大きな頭部を持っています。
リカオンはおよそ17~36kgで、ブチハイエナより軽く、走ることに適した細身の体をしています。
アフリカのサバンナや開けた森林などに暮らし、主にインパラ、ガゼル、クーズーなどの有蹄類を群れで狩ります。
セグロジャッカルはオスが平均約8kg、メスが平均約7kgとされ、3種の中ではかなり小柄です。
昆虫、トカゲ、ネズミ、鳥、アンテロープの子、果実、死肉など、利用できるものを幅広く食べます。
生息地にも違いがあります。
ブチハイエナとリカオンは現在の分布が主にサハラ砂漠以南のアフリカに限られますが、セグロジャッカルは東アフリカと南部アフリカに分かれて分布しています。
3種を簡単に覚えられる判別方法
覚え方は、体格、耳、模様の順番で見ることです。
最もがっしりしていて、首が太く、腰が低く見えるならブチハイエナの可能性が高いでしょう。
体が細く、耳がうちわのように大きく、黒・白・黄褐色のまだら模様があればリカオンです。
小柄で顔が細く、耳がとがり、背中に黒い鞍を載せたような模様があればセグロジャッカルです。
特に分かりやすいのは、背中の線です。
ブチハイエナは肩が高く、後ろ脚に向かって背中が下がって見えます。
リカオンは背中が比較的水平で、長い脚と大きな丸耳が目立ちます。
セグロジャッカルも背中は比較的水平ですが、リカオンよりはるかに小さく、耳の先が鋭くとがっています。
見た目から3種を見分けるポイント
ハイエナは太い首と前下がりに見える体形が特徴
ブチハイエナを横から見ると、前半身が大きく盛り上がり、後ろに向かって低くなる独特の体形をしています。
前脚が後ろ脚より長く、頭部と首の筋肉が発達しているためです。
この体形は、犬やオオカミのように背中がほぼ水平な動物とは大きく異なります。
頭もリカオンやジャッカルより幅広く、鼻先が太く見えます。
骨までかみ砕ける強いあごを持ち、皮、ひづめ、骨なども食べることができます。
ブチハイエナの耳は、ほかの大型ハイエナと比べても丸みがあります。
毛は黄褐色や灰色を基調としており、黒や濃い茶色の斑点が全身に広がります。
高齢になると斑点が薄くなることもあるため、模様だけではなく、体形と耳も一緒に確認することが大切です。
リカオンは大きな丸い耳と不規則なまだら模様が目印
リカオンの最大の目印は、頭の幅に対して非常に大きく見える丸い耳です。
耳は黒っぽく、内側に白い毛が見える個体もいます。
毛には黒、白、黄色、茶色などが混ざり、絵の具を塗ったような不規則な模様があります。
この模様は個体ごとに異なり、人間の指紋のように個体を識別する手がかりとして使えます。
しっぽの先が白いことも重要な特徴です。
背の高い草の中を走るとき、白い先端が仲間から見えやすく、群れが互いの位置を知る助けになると考えられています。
リカオンの足には4本の指があり、一般的なイヌ科動物に見られる前脚の狼爪を持ちません。
この点もリカオンらしい特徴ですが、野外写真で指の本数まで確認するのは難しいため、耳、模様、しっぽを見るほうが現実的です。
ジャッカルは細い体とキツネに似た顔で見分ける
セグロジャッカルは、細長い鼻先、とがった耳、軽い体つきが特徴です。
3種を並べると最もキツネに近い印象を受けるでしょう。
ただし、キツネより脚が長く、体全体は小型の野生犬に近い姿です。
名前の由来にもなっている黒い背中は、首の後ろからしっぽの付け根まで続きます。
横から見ると、黒や銀色の毛でできた鞍を背負っているように見えます。
顔、脇腹、脚には赤褐色が入り、胸や腹は白っぽくなります。
セグロジャッカルのしっぽは黒く、毛が豊かです。
リカオンのように先端がはっきり白くなるわけではないため、後ろ姿からでも区別できます。
体高は約40cmで、ブチハイエナやリカオンと並べると明らかに小柄です。
顔・耳・脚・しっぽの違いを並べて比較
顔だけを拡大した写真では、大きさが伝わらないため判断しにくくなります。
その場合は、耳の形と鼻先の太さを見ると区別しやすくなります。
| 部位 | ブチハイエナ | リカオン | セグロジャッカル |
|---|---|---|---|
| 顔 | 幅広く、鼻先が太い | 短めで幅がある | 細長く、キツネに似る |
| 耳 | 丸みがある | 非常に大きく丸い | 大きくとがる |
| 首 | 太く筋肉質 | 細い | 細い |
| 脚 | 前脚が長く、がっしり | 非常に長く細い | 細く軽快 |
| 背中 | 後ろに向かって低く見える | 比較的水平 | 比較的水平 |
| しっぽ | 短めで先が黒っぽい | ふさふさして先が白い | 黒くふさふさしている |
ブチハイエナとリカオンで迷ったら、背中の傾きに注目してください。
リカオンとセグロジャッカルで迷ったら、耳の丸さと背中の模様を見るのがおすすめです。
リカオンの模様は体全体に不規則に広がりますが、セグロジャッカルの黒い部分は主に背中へまとまっています。
この違いを覚えるだけでも、写真の判別はかなり簡単になります。
写真で迷ったときに使える5秒チェック
最初の1秒で、体が大型か小型かを確認します。
大型で上半身が重そうならブチハイエナ、小型でキツネのようならセグロジャッカル、その中間で脚が長ければリカオンを疑います。
次に耳を見ます。
うちわのように大きく丸ければリカオン、三角形にとがっていればセグロジャッカル、丸みはあるもののリカオンほど大きくなければブチハイエナです。
最後に模様を見ます。
小さな斑点が多数あればブチハイエナ、大きく不規則な三色模様ならリカオン、背中に黒い一枚の模様があればセグロジャッカルです。
ただし、暗い場所、逆光、子どもの個体では色や体形が分かりにくいことがあります。
一つの特徴だけで決めず、耳、背中、体格の三つを組み合わせると誤判定を減らせます。
狩り・食べ物・群れの暮らし方の違い
ハイエナは死肉だけでなく自分たちでも狩りをする
ハイエナには、ほかの動物が倒した獲物を横取りする印象があります。
しかし、少なくともブチハイエナは、自ら獲物を追い、倒す能力を持つ優れたハンターです。
群れの規模に応じて、ガゼル、インパラ、イボイノシシから、ヌー、シマウマ、バッファローまで狙います。
単独で行動しているときには、ウサギ、鳥、ヤマアラシ、魚などの比較的小さな獲物を狙うこともあります。
大きな獲物を狩る場合には複数の個体が協力します。
もちろん、利用できる死肉があれば食べます。
ただし、死肉だけに頼る動物ではなく、狩りと腐肉食の両方を利用する柔軟な捕食者です。
ライオンがハイエナの獲物を奪うこともあり、食べ物の横取りは一方通行ではありません。
リカオンは群れの連携と持久力に優れたハンター
リカオンは、走力と協力行動を組み合わせて獲物を追います。
開けた場所では獲物に近づき、相手が逃げ始めてから本格的な追跡に移ります。
追跡は数km続くことがあり、南アフリカ国立生物多様性研究所の資料では、時速66kmほどを2km維持した記録が紹介されています。
ただし、すべての狩りが成功するわけではなく、群れに参加する成獣の数や獲物の大きさによって結果は変わります。
同資料で紹介されている研究例では、成獣が3頭の群れで狩りの成功率が42%、20頭では67%に上がっています。
この数字はあらゆる地域にそのまま当てはまるものではありませんが、仲間が増えるほど役割分担をしやすくなることを示しています。
リカオンは仕留めた肉を食べた後、巣に戻って子どもや留守番役へ吐き戻して与えます。
けがや病気で狩りに参加できない仲間にも食べ物を分けることがあり、群れ全体で支え合う性質が強い動物です。
ジャッカルは小動物から果実まで利用する適応上手
セグロジャッカルは、狩りをする肉食動物であると同時に、非常に幅広い食べ物を利用する雑食性の動物です。
昆虫、トカゲ、ネズミ、鳥、卵、小型の哺乳類などを自ら捕まえます。
アンテロープの子どもを狙ったり、複数で協力して比較的大きな獲物を弱らせたりする場合もあります。
一方で、大型肉食獣が残した死肉や果実も食べます。
肉が余ったときには、小さく分けて土の中へ隠し、後で食べることがあります。
獲物が少ない時期にもさまざまな食べ物を利用できることが、広い環境で暮らせる理由の一つです。
ジャッカルが大型肉食獣のそばにいるからといって、いつも食べ残しだけを待っているわけではありません。
自分で捕まえられる小さな獲物は自分で狩り、危険が少ない場面で死肉も利用する、効率のよい生存戦略を取っています。
クラン・パック・つがいで異なる社会の仕組み
ブチハイエナの集団は、一般にクランと呼ばれます。
クランはメスを中心とした複雑な順位社会で、大きな集団では100頭近くになる場合があります。
ブチハイエナのメスはオスよりやや大きく、社会的にも優位になる傾向があります。
若いメスは生まれたクランに残ることが多く、若いオスは成長すると別のクランへ移ります。
リカオンの集団はパックと呼ばれ、平均的には5~20頭ほどです。
中心となる繁殖ペアとその子ども、繁殖を手伝う成獣などで構成され、狩り、子育て、給餌を協力して行います。
セグロジャッカルの基本的な生活単位は、つがいとその子どもです。
前年に生まれた子どもが残り、親の子育てを手伝う場合もあります。
つまり、ブチハイエナは大きく複雑な順位集団、リカオンは協力性の高い狩猟集団、セグロジャッカルは夫婦と家族を中心にした小集団と整理できます。
活動時間と獲物を探す方法にも違いがある
ブチハイエナは昼夜を問わず活動できますが、一般には夜間の活動が多い動物です。
人の活動が多い地域では、接触を避けるために夜行性が強まることもあります。
リカオンは早朝や夕方に狩りをすることが多く、視覚を使って獲物を見つけ、追跡します。
仲間から遅れた個体は、においを手がかりに群れを追うこともあります。
セグロジャッカルは単独またはつがいで歩き回り、耳を立てながら小動物の音を探します。
昆虫やネズミを見つけると、上から飛びかかるように捕らえます。
また、夕方から夜にかけて特徴的な鳴き声を出し、近くにいる家族やほかの個体と連絡を取ります。
鳴き声、尿、ふん、姿勢、しっぽの動きなど、複数の方法で情報を伝えています。
ハイエナ・リカオン・ジャッカルはどれが強い?
1対1なら体格の大きなハイエナが有利なのか
3種を同じ条件で戦わせる科学的な比較実験はなく、野生動物の勝敗を断定することはできません。
年齢、性別、健康状態、地形、逃げ道の有無などによって結果が大きく変わるからです。
それでも体格だけを比較すれば、ブチハイエナが最も有利です。
ブチハイエナは40kgを超える個体が多く、リカオンは17~36kg、セグロジャッカルは平均7~8kgほどなので、体重差が非常に大きくなります。
ブチハイエナは太い首、大きな頭、骨を砕けるあごを持っています。
正面から組み合う状況では、リカオンやセグロジャッカルより優位に立つ可能性が高いでしょう。
ただし、リカオンやジャッカルは、危険な相手と正面から戦うことを基本戦略にしていません。
相手との距離を取り、仲間を呼び、逃げ道を確保する能力も、生き残るうえでは重要な強さです。
あごの力・走る速さ・持久力を比較
ブチハイエナの最大の武器は、強いあごとがっしりした体です。
皮、ひづめ、歯、骨まで食べられるため、一度確保した獲物を効率よく利用できます。
走る能力も低いわけではなく、サンディエゴ動物園は獲物を追う際に時速約60kmに達するとしています。
長い距離を追跡できる持久力もあります。
リカオンはブチハイエナより軽く、脚が長く、長距離の追跡に適した体をしています。
時速66kmほどを2km維持した記録もあり、速さを一瞬だけ出すのではなく、仲間と連携しながら追い続けることが得意です。
セグロジャッカルは大型獲物との力比べでは不利ですが、小回りと素早い方向転換に優れます。
通常は軽い足取りで移動し、小さな獲物を見つけると飛びかかって捕らえます。
なお、あごの力や最高速度は、測定方法や個体条件が異なる数字を単純に並べても、正確な順位にはなりません。
ブチハイエナは破壊力、リカオンは持久走と連携、ジャッカルは小回りと適応力に強みがあると捉えるのが適切です。
群れでの狩りではリカオンの連携力が武器になる
リカオンは、1頭の力よりもパック全体の動きによって能力を高める動物です。
仲間が獲物の進行方向を読み、近道をしながら追跡へ加わることで、逃げる相手へ継続的に圧力をかけます。
群れの数が多ければ、複数の方向から追ったり、疲れた個体に代わって別の個体が接近したりできます。
成獣の数が増えるほど、狩りの成功率や狙える獲物の大きさが上がることも確認されています。
仕留めた後にも協力は続きます。
子どもが食べられる年齢になると、大人たちは周囲を警戒し、子どもを先に食べさせることがあります。
巣に残った子どもや仲間には、肉を吐き戻して運びます。
この仕組みがあるため、リカオンの強さは単なる足の速さではなく、情報共有、役割分担、食料の分配を含む集団全体の能力だといえます。
ハイエナとリカオンが獲物をめぐって争う理由
ブチハイエナとリカオンは、インパラやガゼルなど、似た大きさの草食動物を利用します。
食べ物と活動地域が重なれば、仕留めた獲物をめぐる争いが起こります。
調査地域によっては、リカオンの獲物がブチハイエナに奪われることが大きな負担になると報告されています。
南アフリカ国立生物多様性研究所がまとめた事例では、失った獲物を補うために狩りの時間とエネルギーが増えることが示されています。
ブチハイエナは体が大きく、単独でもリカオン1頭より重いため、少数のリカオンでは獲物を守りにくくなります。
一方、十分な数のリカオンが集まっていれば、追い払おうと取り囲んだり、激しく威嚇したりすることがあります。
どちらが獲物を確保するかは、単純な種の強弱だけではなく、その場に集まった個体数に左右されます。
リカオンが早朝や夕方に狩りをする習性には、ライオンやハイエナとの接触を減らす意味もあると考えられています。
小柄なジャッカルが大型肉食獣のそばで生き残れる秘密
セグロジャッカルは、ブチハイエナやライオンに勝てるほど大きくありません。
その代わり、危険な相手に正面から挑まず、相手の動きを見ながら利用できる食べ物だけを素早く持ち去ります。
大きな死体の周辺で見られることはありますが、常に近くにとどまるわけではありません。
危険が大きければ離れ、自分で昆虫やネズミを探すこともできます。
食べ物が多いときには一部を土へ隠し、後で利用します。
大型肉食獣がいない地域では、より大きな捕食者に近い役割を担うこともあります。
仲間との連絡も重要です。
セグロジャッカルは特徴的な鳴き声を使い、家族や近くの個体へ危険や居場所を知らせます。
大型肉食獣を見つけると、繰り返し鳴いて警戒する行動も知られています。
つまり、ジャッカルの強さは戦闘力ではなく、食性の広さ、警戒心、判断の速さ、家族との協力にあります。
よくある疑問と間違いやすい知識
ハイエナは犬と猫のどちらに近い?
二者択一で答えるなら、ハイエナは犬より猫に近い系統です。
食肉目は大きく犬型と猫型の系統に分けられ、ハイエナ科は猫型の系統に含まれます。
ただし、ハイエナはネコ科の動物ではありません。
ネコ科、ジャコウネコ科、マングース科などと同じ側に分かれた、ハイエナ科の動物です。
犬のように見える姿は、長い距離を地上で移動したり、獲物を追ったりする生活に適応した結果と考えると理解しやすいでしょう。
見た目が似ていることと、分類上近いことは、必ずしも同じではありません。
イルカと魚が似ていても分類が異なるのと同じように、似た環境で似た動きをすると、離れた動物でも似た体形になることがあります。
リカオンは野犬やオオカミの仲間なの?
リカオンはイヌ科なので、広い意味ではオオカミ、ジャッカル、キツネ、家庭犬の仲間です。
しかし、野生化した家庭犬ではなく、独立した野生動物です。
学名はLycaon pictusで、現在生きているリカオン属の唯一の種です。
オオカミはCanis属、リカオンはLycaon属に分けられています。
どちらも群れで行動し、協力して狩りをしますが、体の特徴や社会の仕組みには違いがあります。
リカオンは前脚の狼爪を持たず、黒・白・黄褐色の不規則な毛色と、非常に大きな丸耳を持ちます。
「アフリカン・ワイルド・ドッグ」という英名から、単なる野犬を連想することがありますが、家庭犬が野生化した存在ではありません。
アフリカの自然環境で独自に進化してきた捕食者です。
ジャッカルという名前は1種類だけを指すの?
ジャッカルは、単一の種だけを示す名前ではありません。
現在一般にジャッカルと呼ばれる動物には、キンイロジャッカル、セグロジャッカル、ヨコスジジャッカルなどがいます。
しかも、すべてが同じ属に分類されているわけではありません。
キンイロジャッカルはCanis aureusで、オオカミやコヨーテと同じCanis属です。
セグロジャッカルはLupulella mesomelas、ヨコスジジャッカルはLupulella adustaとして、Lupulella属に分類されています。
古い図鑑や記事では、セグロジャッカルをCanis mesomelasと記載している場合があります。
これは以前使われていた学名であり、現在の主要な哺乳類分類データベースではLupulella属へ移されています。
ジャッカルを比較するときは、どのジャッカルを指しているか確認しないと、体重、分布、毛色、食べ物の説明が食い違う可能性があります。
姿が似ているのに分類が違うのはなぜ?
ハイエナ、リカオン、ジャッカルには、長い脚、大きな耳、細長い鼻先、発達した歯などの共通点があります。
これらは地上を移動しながら獲物や死肉を探す生活に役立つ特徴です。
しかし、分類は見た目だけで決まるものではありません。
骨格、歯、体の構造、化石、遺伝情報、進化の歴史などを総合して判断されます。
リカオンとジャッカルはイヌ科ですが、ハイエナはハイエナ科で、進化の系統は大きく異なります。
異なる系統の動物が、似た環境で似た役割を持つうちに、似た姿へ近づく現象は収れん進化と呼ばれます。
犬のようなハイエナの姿も、血縁が近いからではなく、地上を長く移動する捕食者として似た特徴が発達したと考えると分かりやすいでしょう。
それでも細部を見ると、ブチハイエナは太い首と下がった腰、リカオンは巨大な丸耳とまだら模様、セグロジャッカルはとがった顔と黒い背中を持っています。
似ている部分の中に、それぞれの進化と暮らし方が表れています。
絶滅の危険が最も高いのはどの動物?
今回比較した3種の中で、絶滅の危険が最も高いのはリカオンです。
Mammal Diversity Databaseに掲載されたIUCNの評価では、リカオンは絶滅危惧に分類されています。
ブチハイエナとセグロジャッカルは、いずれも低懸念に分類されています。
低懸念は危険がまったくないという意味ではなく、現在の世界規模の評価では、絶滅危惧の基準に達していないという意味です。
リカオンが減少する大きな原因には、生息地の分断、人との衝突、わなや毒による死亡、家庭犬から広がる感染症などがあります。
広い範囲を移動する動物なので、保護区が小さく分かれていると道路や牧草地へ出やすくなり、人や家庭犬と接触する機会が増えます。
リカオンのパックでは、仲間の数が狩りや子育ての成功に関わります。
個体数が減って群れが小さくなると、狩り、子育て、けがをした仲間への給餌など、集団生活の利点も失われやすくなります。
見た目の強さと、種として絶滅に耐えられる強さは別のものです。
高い狩猟能力を持つリカオンでも、人間による環境の変化や感染症が重なると、生き残ることが難しくなります。
ハイエナ・リカオン・ジャッカルの違いまとめ
ハイエナ、リカオン、ジャッカルは、犬に似た姿をしていますが、分類も体格も暮らし方も異なります。
ハイエナはハイエナ科で、犬よりも猫側の系統に属します。
リカオンとジャッカルはイヌ科ですが、リカオンはLycaon属、セグロジャッカルは現在Lupulella属に分類されています。
見分けるときは、ブチハイエナの太い首と下がった腰、リカオンの大きな丸耳と三色のまだら模様、セグロジャッカルのとがった顔と黒い背中に注目してください。
体格や正面からの力では、ブチハイエナが有利になる可能性が高いでしょう。
一方、リカオンは群れの連携と持久力、セグロジャッカルは小回りと食性の広さを武器にしています。
ハイエナは死肉だけを食べる動物ではなく、自分たちで狩りをする能力があります。
ジャッカルも食べ残しを待つだけではなく、小動物を捕まえ、家族で子育てをする優れたハンターです。
3種を比べると、動物の強さには、あごの力だけでなく、走力、協力、判断力、環境への適応力など、さまざまな形があることが分かります。
- Spotted Hyena | San Diego Zoo Animals & Plants
- Striped Hyena | San Diego Zoo Animals & Plants
- Painted Dog (African Hunting Dog) | San Diego Zoo Animals & Plants
- African Wild Dog | South African National Biodiversity Institute
- Black-backed Jackal | South African National Biodiversity Institute
- Crocuta crocuta(Spotted Hyena)| Mammal Diversity Database
- Lycaon pictus(African Wild Dog)| Mammal Diversity Database
- Canis aureus(Golden Jackal)| Mammal Diversity Database
- Lupulella mesomelas(Black-backed Jackal)| Mammal Diversity Database
- Parahyaena brunnea(Brown Hyena)| Mammal Diversity Database
- Crocuta crocuta(Carnivora: Hyaenidae)| Mammalian Species
