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口語体と文語体の違いとは?例文と比較表で使い分けをわかりやすく解説

口語体と文語体の違いとは?例文と比較表で使い分けをわかりやすく解説

口語体と文語体について調べていると、「口語体は話し言葉で、文語体は書き言葉」と説明されることがあります。

しかし、この覚え方だけでは、現代の文章を正しく分類できません。

私たちが普段読んでいるブログ、新聞、ビジネスメール、レポートの多くは、文字で書かれていても口語体です。

さらに、「です・ます調は口語体で、だ・である調は文語体」と思われることもありますが、どちらも現代語を使った口語体に含まれます。

違いを正しく理解するには、文章が話し言葉らしいかどうかではなく、使われている文法や語尾に注目することが大切です。

この記事では、口語体と文語体の基本的な違いから、話し言葉や書き言葉との関係、例文による見分け方、場面に応じた使い分けまで分かりやすく解説します。

目次

口語体と文語体の違いを簡単に理解しよう

口語体とは現代の話し言葉をもとにした文章形式

口語体とは、現代の人が普段使っている言葉や文法を土台にして書く文章の形式です。

会話に近い表現を使えるため、読んだときに意味をつかみやすく、現在の小説、新聞、Web記事、学校のレポート、ビジネス文書などで広く使われています。

この記事の文章も、「説明します」「使われています」のような現代語で書かれているため、口語体です。

ただし、口語体だからといって、会話をそのまま文字にすればよいわけではありません。

日常会話では、「これ、マジで難しいよね」「っていうか、よく分からない」のように、くだけた言葉や省略された表現がよく使われます。

一方、口語体の文章では、読み手や目的に合わせて言葉を整える必要があります。

例えば、友人との会話では「今日、雨っぽいね」と言っても自然ですが、天気について説明する文章なら「今日は雨が降る可能性があります」と書いたほうが正確です。

どちらも現代語を使っていますが、前者は話し言葉、後者は書き言葉です。

つまり、口語体は「現代の話し方をそのまま書いた文章」ではなく、「現代の話し言葉を基礎にした文章形式」と考えると理解しやすくなります。

国立国語研究所は、近代の言文一致が進むなかで、書き言葉の表現が従来の文語的な語法から、話し言葉に根付いた口語的な語法へ移っていったと説明しています。

文化庁が示す「現代仮名遣い」も、主として現代文のうち口語体の文章に適用されるものとされています。

文語体とは古い言葉や文法を使った文章形式

文語体とは、主に古典語の文法や歴史的な言葉遣いを用いて書く文章の形式です。

「なり」「けり」「べし」「たり」「ず」など、現代の日常会話ではあまり使われない助動詞や語尾が現れることがあります。

例えば、「春が来た」を文語的に表すと、「春来たり」のような形になります。

「忘れてはいけない」は、「忘るべからず」のように表せます。

現代の読者には少し硬く感じられますが、短い言葉で強い印象を与えたり、格調の高さや時代の雰囲気を表したりできる点が特徴です。

ここで気を付けたいのは、文語体を単なる「文字で書かれた言葉」だと思わないことです。

現代のメール、ニュース記事、説明書も文字で書かれていますが、古典語の文法ではなく現代語の文法を使っているため、基本的には口語体です。

「文語」という言葉には、広い意味で書き言葉を指す用法もありますが、「口語体と文語体を比べる」という場面では、古典的な語法を使う文章形式という意味で捉えるのが一般的です。

国立国語研究所の日本語史に関する解説では、中世には口頭で使われる言葉が発達し、文章で使われる言葉との違いが大きくなったと説明されています。

また、同研究所の解説によると、現在の学校文法には、現代語を扱う口語文法と古典語を扱う文語文法という区別があります。

文語体を理解するときは、見た目の古さだけではなく、動詞の活用や助動詞の使い方まで確認することが大切です。

口語体と文語体の違いがわかる比較表

両者の違いは、使われる時代の言葉、文法、読みやすさ、使用される場面を比べると見えてきます。

比べる点口語体文語体
基礎となる言葉現代の話し言葉古典語や歴史的な文章語
主な文法現代語の文法文語文法
代表的な語尾です、ます、だ、であるなり、けり、べし、たり
否定の表現ない、ませんず、ぬ、じ
仮名遣い現代仮名遣いが中心歴史的仮名遣いが使われることがある
読みやすさ現代の読者が理解しやすい文語文法の知識がないと難しい場合がある
主な使用場面Web記事、新聞、小説、レポート、ビジネス文書古典作品、短歌、俳句、詩、格調を出したい表現
与えやすい印象親しみやすい、現代的、明快格調高い、重厚、古風、簡潔

最も大きな違いは、話題の硬さではなく、文法の仕組みです。

難しい専門用語を多く使った文章でも、現代語の文法で書かれていれば口語体です。

反対に、扱う内容が日常的でも、「今日は楽しき日なり」のように文語文法を使えば文語体になります。

また、仮名遣いは重要な手掛かりですが、仮名遣いだけで判断できるとは限りません。

文化庁の「現代仮名遣い」は、現代語の音韻に従って書くことを原則としており、歴史的仮名遣いとの対照表も示しています。

ただし、「思ふ」と書いてあっても、文章全体の文法が現代語なら、古い仮名遣いを意図的に取り入れた口語文である可能性があります。

確実に見分けるには、語尾、助動詞、動詞の活用、仮名遣いをまとめて確認しましょう。

同じ内容を口語体と文語体で書き比べた例文

同じ意味の文章を並べると、違いがはっきり分かります。

意味口語体文語体
春が来た春が来た春来たり
月が美しい月が美しい月美し
努力すれば成功するだろう努力すれば成功するだろう努力せば成功すべし
このことを忘れてはいけないこのことを忘れてはならないこのこと忘るべからず
旅に出よう旅に出よう旅に出でむ
彼はここにいない彼はここにいない彼はここにあらず

例を見ると、文語体は単語を古風なものに置き換えるだけではないことが分かります。

「忘れる」は「忘る」、「出る」は「出づ」のように、動詞の形そのものが変わることがあります。

否定も「ない」から「ず」や「あらず」に変わります。

推量や意志には、「だろう」「よう」ではなく、「む」や「べし」などが使われる場合があります。

ただし、文語の助動詞は一つの意味だけを持つとは限りません。

「べし」には、文脈によって当然、義務、推量、可能、命令などの意味が生じます。

そのため、現代語から文語体へ書き換えるときは、単語を機械的に置き換えるのではなく、元の文が何を伝えたいのかを考える必要があります。

例えば、「明日は晴れるだろう」と「明日は晴れるべきだ」は、どちらにも「べし」が使われる可能性がありますが、推量と当然では意味が異なります。

文語体を正しく読むには、語尾だけでなく、前後の内容から意味を判断することが欠かせません。

話し言葉・書き言葉との関係を整理しよう

「口語体=会話」「文語体=文章」ではない

口語体と話し言葉は、似ていますが同じものではありません。

文語体と書き言葉も、完全に同じ意味ではありません。

口語体と文語体は、主に文章に使われる文法や語法の種類を表す言葉です。

それに対して、話し言葉と書き言葉は、言葉を音声で伝えるのか、文字で伝えるのかという使われ方の違いを表します。

例えば、「明日の会議は午後からです」という文は、会話でも使えますし、メールにも書けます。

会話で使えば話し言葉になり、メールに書けば書き言葉になりますが、どちらも現代語の文法を使っているため口語です。

一方、「明日の会議は午後より始まるべし」と書けば、文字で伝える書き言葉であり、文語的な表現を含む文章になります。

文部科学省の学習指導要領では、話し言葉と書き言葉の違いを理解し、目的や場面に応じて使い分けることが学習内容として示されています。

このことからも、話し言葉と書き言葉は、口語体と文語体とは別の観点で整理する必要があると分かります。

関係を簡単にまとめると、現代の書き言葉の多くは「口語体で書かれた文章」です。

「口語」という文字だけを見て、「口から話す言葉だけを指す」と決め付けないことが大切です。

現代の文章は「口語体の書き言葉」が中心

現在、私たちが目にする文章の多くは、現代語の文法を使って整えられた書き言葉です。

つまり、口語体でありながら、会話よりも情報が整理された文章になっています。

例えば、日常会話では、主語や目的語を省略しても、その場の状況から意味が伝わることがあります。

「あれ、もうやった?」という短い言葉でも、話している人同士が状況を共有していれば理解できます。

しかし、不特定多数が読む文章で「あれ」「それ」「やった」とだけ書いても、何を指しているのか分かりません。

文章では、「申込手続は完了しましたか」のように、対象を具体的に示す必要があります。

このように、口語体の書き言葉は、現代語を使いながら、会話に頼らなくても意味が伝わるように整えられています。

国立国語研究所が明治期から大正期の雑誌を調べた研究では、当初は文語文が大半だったものの、時代が進むにつれて口語文へ置き換わっていった様子が確認されています。

国立国会図書館の展示でも、明治期の言文一致運動を背景に、話し言葉に近い口語体の翻訳が登場したことが紹介されています。

ただし、言文一致によって、話す言葉と書く言葉が完全に同じになったわけではありません。

対面の会話では、声の調子、表情、身振り、その場の状況からも意味が伝わります。

文章ではそれらを使えないため、言葉だけで誤解なく伝わるように情報を補う必要があります。

現代の読みやすい文章とは、会話をそのまま書いた文章ではなく、現代語を使って読み手向けに整えた文章なのです。

「です・ます調」と「だ・である調」はどちらも口語体

「です・ます調」は口語体で、「だ・である調」は文語体だと思われることがあります。

しかし、この分け方は正確ではありません。

「です」「ます」「だ」「である」は、いずれも現代語の文章で使われる表現です。

そのため、文語体と口語体を区別する場面では、どちらも基本的に口語体に含まれます。

両者の違いは、文語か口語かではなく、読み手に対する丁寧さや文章の印象です。

「です・ます調」は敬体と呼ばれ、読み手に丁寧な印象を与えます。

「だ・である調」は常体と呼ばれ、説明を簡潔にしたい文章や、客観的な印象を出したい文章に向いています。

国立国語研究所は、日本語の文末のスタイルを敬体と普通体に大きく分ける場合があると説明しています。

文化審議会の「公用文作成の考え方」では、一般の人に向けた対外的な文書について、「です・ます」体を基本にして簡潔に敬意を表すという考え方が示されています。

次の二つは、どちらも口語体です。

この方法は効果的です

この方法は効果的である

一つの記事のなかで両方を無計画に混ぜると、文章の調子が不安定になります。

最初に「です・ます調」と「だ・である調」のどちらで書くかを決め、原則として統一しましょう。

例文から口語体と文語体を見分けよう

語尾や助動詞の違い|「だろう」と「べし」

口語体と文語体を見分けるとき、最初に確認したいのが文末です。

文語体では、現代語でほとんど使われなくなった助動詞や活用形が現れます。

代表的な表現を比べると、次のようになります。

働き口語体の例文語体の例
断定だ、であるなり、たり
否定ない、ぬず、じ
過去や詠嘆き、けり
推量だろうむ、らむ、べし
意志しよう
義務や当然しなければならないべし
禁止してはいけないするべからず
完了したつ、ぬ、たり、り

ただし、表にある言葉を一対一で置き換えればよいわけではありません。

文語の助動詞は、前に付く言葉の活用形や文章の流れによって意味が変わります。

例えば、「べし」は「きっとそうなるだろう」という推量を表すこともあれば、「そうするのが当然だ」という意味を表すこともあります。

「む」も、話し手の意志、未来の推量、相手への勧誘など、複数の意味を持ちます。

そのため、「べしがあるから文語体だ」と見分けることはできても、その文章を正確に現代語訳するには文脈の確認が必要です。

また、「知らぬ」「分からぬ」のような「ぬ」は、現在の文章でも硬い言い回しとして使われることがあります。

一つの古風な語尾が入っているだけで、文章全体が完全な文語体になるとは限りません。

広告のコピーや小説では、基本は口語体にしながら、一部分だけ文語表現を加えて印象を強めることもあります。

見分けるときは、一語だけではなく、文章全体の文法が現代語と古典語のどちらを基礎にしているかを確認しましょう。

仮名遣いや言葉の違い|「思う」と「思ふ」

「思う」と「思ふ」の違いは、現代仮名遣いと歴史的仮名遣いの違いです。

現在は「思う」と書きますが、歴史的仮名遣いでは「思ふ」と書きます。

同じように、「言う」は「言ふ」、「今日」は「けふ」、「川」は「かは」と書かれることがあります。

文化庁は、現代仮名遣いについて、現代語の音韻に従って書き表すことを原則とした仮名遣いだと説明しています。

また、歴史的仮名遣いは、昭和二十一年に「現代かなづかい」が告示される以前、社会一般の基準として使われていたものとされています。

そのため、「思ふ」「言ふ」「けふ」のような形は、文章が古い時代に書かれたことや、古風な雰囲気を意図していることを見分ける手掛かりになります。

ただし、歴史的仮名遣いと文語体は同じものではありません。

仮名遣いは言葉をどう書き表すかという表記の決まりです。

文語体は、どのような文法や語法で文章を組み立てるかという文章形式です。

例えば、「わたしはさう思ひます」は歴史的仮名遣いを含みますが、「ます」という現代的な敬体を使っています。

反対に、「我はかく思ふなり」は、歴史的仮名遣いと文語的な助動詞を組み合わせた表現です。

見分ける順番としては、まず「ふ」「ゐ」「ゑ」などの表記を確認し、次に「なり」「けり」「べし」などの文法を確認すると効率的です。

古風な単語、仮名遣い、文法がそろっているほど、文語体である可能性が高くなります。

文語体を現代の口語体に書き換える手順

文語体を現代語に直すときは、古い単語だけを置き換えるのではなく、文の骨組みから確認します。

最初に、動詞、形容詞、助動詞の区切りを探します。

次に、否定、過去、推量、意志、命令など、文末が表している意味を判断します。

そのうえで、現代の読み手に自然に伝わる語順と表現に整えます。

例えば、次の文を考えてみましょう。

学ぶ者は日々努むべし

まず、「学ぶ者」は「学ぶ人」という意味です。

「日々」は「毎日」、「努む」は「努力する」、「べし」はこの文脈では義務や当然を表すと考えられます。

そのため、直訳に近い形なら「学ぶ人は毎日努力すべきだ」となります。

さらに、読みやすさを優先するなら「学ぶ人は、毎日努力することが大切です」と言い換えられます。

もう一つ、次の文を見てみましょう。

月出でて野を照らせり

「出でて」は「出て」、「照らせり」は「照らしている」または「照らした」と解釈できます。

前後の文章によって時間の捉え方は変わりますが、現代的に整えると「月が昇り、野原を照らしている」のようになります。

書き換える際に大切なのは、古い雰囲気を残すのか、意味だけを分かりやすく伝えるのかを決めることです。

文学作品の味わいを伝えたいなら、「月が出て、野を照らしていた」のように原文の言葉を少し残してもよいでしょう。

説明資料に使うなら、「月が昇り、野原が明るく照らされている」のように、現代の読者が情景を浮かべやすい表現にできます。

文語体を口語体に直す作業は、単純な置換ではなく、意味を読み取って現代の文章として組み直す作業です。

口語体と文語体はどの場面で使われる?

ブログ・Web記事・SNSでは口語体が基本

ブログやWeb記事では、現代の読者が短時間で内容を理解できる口語体が適しています。

検索から記事を訪れる人は、分からないことを早く解決したいと考えている場合が多いため、古風な言い回しや複雑な文法は理解の負担になります。

ただし、口語体で書くことと、会話のようにくだけることは別です。

「これって、ぶっちゃけヤバいです」のような表現は、親しみを出せる一方で、意味が曖昧になりやすく、読者によって受け取り方も変わります。

解説記事では、「この方法には注意が必要です」のように、具体的で落ち着いた言葉を選ぶほうが伝わりやすくなります。

SNSはブログよりくだけた表現が許されやすい媒体ですが、発信者の立場や読者との関係によって適切な文体は変わります。

個人の日常投稿なら「今日はすごく疲れた」でも自然です。

企業の案内なら「本日の受付は終了しました」のように、情報が正確に伝わる表現が向いています。

文部科学省は、オンライン上のコミュニケーションについて、相手を意識し、誰が読んでも分かるような言葉を使う指導例を紹介しています。

Web上の文章は、書き手が想定していなかった人に読まれる可能性もあります。

内輪だけに通じる言葉、省略しすぎた表現、意味が変わりやすい流行語は、必要性を考えて使いましょう。

読みやすい口語体とは、軽い文章ではなく、読者が迷わず理解できる現代的な文章です。

ビジネス文書・レポート・論文も基本は口語体

ビジネス文書、学校のレポート、研究論文の多くも、現代語の文法で書かれているため口語体です。

内容が専門的で硬いからといって、文語体になるわけではありません。

例えば、「本調査の結果を以下に示す」は硬い印象がありますが、「示す」という現代語を使っているため口語体です。

ビジネスメールでは、相手への配慮が伝わる「です・ます調」がよく使われます。

報告書や論文では、簡潔で客観的な印象を出しやすい「だ・である調」が選ばれることがあります。

どちらを使う場合でも、所属する学校、会社、学会、媒体が定める書式を優先する必要があります。

文化審議会の「公用文作成の考え方」では、文章を読み手とのコミュニケーションとして捉え、一般向けの文章は義務教育で学ぶ範囲の知識で理解できるよう努めることが示されています。

同資料では、専門用語や外来語をむやみに使わず、読み手に通じる言葉を選ぶことも求めています。

これは、文章を必要以上にくだけさせるという意味ではありません。

正確さを保ちながら、古い言い回しや難しい表現を減らすという考え方です。

例えば、「ご査収の程よろしくお願い申し上げます」が読者に伝わりにくい場面では、「添付資料をご確認ください」と書くほうが明確です。

「可及的速やかに対応する」も、「できるだけ早く対応する」と直せば、意味がすぐ伝わります。

仕事や学習で必要なのは、文語体らしい重々しさではなく、目的に合った正確で分かりやすい口語体です。

小説・短歌・俳句・古典作品では文語体が使われることもある

文語体は、古い時代の文章だけに使われるものではありません。

現代の小説、短歌、俳句、詩、広告などでも、表現上の効果を狙って使われることがあります。

文語体には、現代の会話から距離を置き、文章に格調、静けさ、緊張感、余韻を与えやすい特徴があります。

例えば、「花が散った」と書けば、出来事を現代的に説明する印象になります。

「花散りぬ」と書けば、完了の意味に加えて、古風な響きや余韻が生まれます。

「忘れないでください」と「忘るべからず」も、伝えている内容は似ていますが、後者のほうが強い戒めや標語のような印象を与えます。

短歌や俳句では、限られた音数に意味を収める必要があります。

文語の活用や助動詞を使うことで、短い表現のなかに時間、推量、余韻などを込められる場合があります。

一方、作品の雰囲気だけを求めて文語を使うと、文法上の組み合わせが不自然になることがあります。

「なり」「けり」「べし」などを使うときは、前に付く言葉の活用形や助動詞の意味を確認する必要があります。

国立国会図書館の近代翻訳文学に関する展示では、明治期の翻訳作品において、文語や漢語を減らした口語体が新しい表現として受け入れられていった過程が紹介されています。

この歴史を逆から見ると、現在の創作で文語体を使うことは、普段の文章とは異なる時代感覚や響きを意図的に呼び戻す表現だといえます。

文語体は、現代では実用文章の標準ではありませんが、作品の世界観をつくるための有力な選択肢です。

読みやすい文章を書くための使い分け方

読み手と文章の目的に合わせて文体を選ぶ

文体を選ぶときは、「どちらが正しいか」ではなく、「誰に何を伝えるのか」を考えます。

商品や制度の使い方を説明するなら、すぐ理解できる現代的な口語体が適しています。

学校のレポートや社内報告書なら、感情的な表現を抑え、筋道を立てた口語体が向いています。

小説や詩で古い時代の空気を表したいなら、文語体を使う意味があります。

読者との距離感も重要です。

「です・ます調」は、丁寧で柔らかい印象を与えやすいため、初心者向けの記事、案内文、顧客向けの文章に向いています。

「だ・である調」は、簡潔で断定的な印象を与えやすいため、論説、報告、研究内容の説明などに使いやすい文体です。

文化審議会は、公用文についても、文書の目的、種類、想定する読み手に応じて書き方を工夫する考え方を示しています。

また、広く一般に向けた解説や広報では、専門知識を持たない人の読みやすさを優先することが示されています。

この考え方は、ブログや企業サイトにも応用できます。

専門家が専門用語を使うこと自体は問題ではありません。

ただし、その言葉を知らないと内容を理解できない場合は、短い説明や具体例を添える必要があります。

文体は、書き手の知識を見せるためのものではなく、読み手に内容を届けるためのものです。

迷ったときは、文章を読む人が最も理解しやすい形を選びましょう。

口語体にくだけすぎた話し言葉を混ぜない

親しみやすい文章を書こうとして、話し言葉を増やしすぎると、かえって読みにくくなることがあります。

会話では自然でも、文章では意味が曖昧になりやすい表現があるためです。

くだけた表現文章向けの表現
でもってそのため、そこで
みたいなのような
っていうという
ちゃんと正しく、確実に
すごく非常に、大きく
やっぱりやはり
ぶっちゃけ率直に言うと
こっちこちら、この方法
いろんなさまざまな
なのでそのため、したがって

ただし、左側の表現が常に間違いというわけではありません。

個人ブログ、小説の会話文、親しみを重視するSNSでは、自然な話し言葉が文章の魅力になることもあります。

問題は、文章の目的に合っているかどうかです。

例えば、商品の安全性を説明する文章で「ちゃんと使えば大丈夫です」と書いても、何をすれば安全なのか分かりません。

「説明書に記載された手順を守って使用してください」と書けば、読者が取るべき行動が明確になります。

また、「すごく増えました」よりも、「前年より二十パーセント増えました」のほうが具体的です。

読みやすさは、ひらがなを増やしたり、会話らしくしたりするだけでは生まれません。

意味の範囲がはっきりした言葉を選び、必要な情報を省略せずに書くことが重要です。

親しみやすさと正確さのどちらか一方を選ぶのではなく、読者に伝わる範囲でバランスを取りましょう。

文体の混在を防ぐチェックポイントとよくある疑問

文章を書き終えたら、文末、言葉遣い、時代の異なる表現が混ざっていないかを確認します。

次の表を使うと、短時間で文体を点検できます。

確認する点チェック内容
文末です・ます調と、だ・である調が無計画に混ざっていないか
助動詞なり、けり、べしなどが突然入っていないか
仮名遣い思うと思ふ、言うと言ふが混ざっていないか
語彙現代的な言葉と古風な言葉の組み合わせが不自然でないか
丁寧さ読み手に対する距離感が途中で変わっていないか
省略あれ、それ、これだけで内容を理解できるか
目的読者が知りたい答えを分かりやすく伝えているか

よくある疑問の一つが、「である調は文語体ではないのか」というものです。

「である」は硬い印象を与えますが、現代語で使われる常体であり、通常は口語体に分類されます。

「です・ます調なら話し言葉なのか」という疑問もあります。

「です」「ます」は会話にも文章にも使われるため、それだけで話し言葉とは判断できません。

「古い言葉を一つ使えば文語体になるのか」という疑問に対しては、文章全体の文法を見る必要があります。

「知らぬ間に」「思わぬ結果」のような表現は現代の文章にも定着しているため、一語だけで文語体とは決められません。

反対に、「春来たりて花咲きぬ」のように、動詞の活用や助動詞まで文語文法で組み立てられていれば、文語体と判断しやすくなります。

最後に音読すると、文体の揺れを見つけやすくなります。

前半は丁寧なのに途中から断定的になっている部分や、古風な言葉だけが浮いている部分は、声に出すと違和感として現れます。

文章の目的に合わせて意図的に混ぜる場合を除き、基本となる文体を決めて統一しましょう。

口語体と文語体の違いまとめ

口語体は、現代の話し言葉を土台にした文章形式です。

文語体は、古典語の文法や歴史的な語法を使った文章形式です。

両者を見分けるときは、文章が硬いか柔らかいかではなく、語尾、助動詞、動詞の活用、仮名遣いを確認します。

「です・ます調」と「だ・である調」は、どちらも基本的には現代の口語体です。

敬体と常体の違いを、口語体と文語体の違いと混同しないようにしましょう。

また、口語体と話し言葉も同じものではありません。

現在のWeb記事、ビジネス文書、レポートなどの多くは、口語体を使って整えられた書き言葉です。

読みやすい文章を書くには、会話をそのまま文字にするのではなく、読み手が状況を共有していなくても理解できるように情報を補う必要があります。

文語体は日常的な説明文には向きませんが、小説、短歌、俳句、詩などでは、格調や余韻を生み出す表現として活用できます。

迷ったときは、「誰が読むのか」「何を伝えるのか」「どのような印象を与えたいのか」を基準に選びましょう。

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