ギャング、マフィア、カルテル、ヤクザは、映画やドラマ、ニュースでよく耳にする言葉です。
どれも怖い犯罪組織という印象がありますが、具体的に何が違うのかと聞かれると、説明に迷う人も多いのではないでしょうか。
単にアメリカ、イタリア、中南米、日本という地域の違いだと思われがちですが、実際には言葉が生まれた背景も、組織の仕組みも異なります。
さらに、ギャングとカルテルが協力したり、マフィアが薬物取引に関わったりすることもあるため、活動内容だけで分けることもできません。
この記事では、公的機関の定義や資料をもとに、それぞれの意味、発祥、組織構造、主な違いをわかりやすく解説します。
4つの関係を整理すれば、ニュースや作品の中で使われる言葉の意味も、これまでより正確に理解できるようになります。
ギャング・マフィア・カルテル・ヤクザの違いを一覧で比較
4つの意味・発祥・組織構造がわかる比較表
ギャング、マフィア、カルテル、ヤクザは、どれも犯罪集団について使われる言葉です。
ただし、同じ基準で分類された名称ではありません。
そのため、「国や地域が違うだけ」と考えると、それぞれの本当の違いを見落としてしまいます。
まずは、4つの言葉が何を基準に使い分けられているのかを整理してみましょう。
| 呼び方 | 言葉の中心的な意味 | 背景や発祥 | 組織の特徴 | 主な注意点 |
|---|---|---|---|---|
| ギャング | 犯罪や暴力に関わる集団を広く表す言葉 | 特定の国だけに限定されない | 小さな地域集団から全国規模の組織まで幅広い | 若者だけの集団とは限らない |
| マフィア | 歴史や伝統、階級制度を持つ組織犯罪集団 | 狭い意味ではシチリアのマフィアやイタリア系組織 | ボスを頂点とするファミリー型の階層を持つ例がある | イタリアの犯罪組織がすべて同じマフィアではない |
| カルテル | 市場や流通を支配・調整する集団や協定 | 本来は経済分野で使われる言葉 | 麻薬取引では生産、輸送、販売などを結ぶネットワーク | 経済用語と犯罪組織の呼び名を区別する必要がある |
| ヤクザ | 日本の暴力団を指す一般的な呼び方 | 日本の博徒や的屋などの歴史と関係する | 親分と子分による階層的な結び付きが特徴 | 法律や警察行政では主に「暴力団」が使われる |
アメリカ司法省は、ギャングについて、集団としての共通した identity を持ち、暴力や威圧を使って犯罪上の目的や勢力を保とうとする集団として説明しています。
一方、FBIはギャングをストリートギャング、刑務所ギャング、モーターサイクルギャングなどに分けており、規模や構造は組織によって大きく異なるとしています。
マフィアという言葉を狭い意味で使う場合は、シチリアのマフィアや、そこに歴史的な起源を持つアメリカのラ・コーザ・ノストラなどを指します。
FBIが示すラ・コーザ・ノストラの組織図では、ボス、アンダーボス、相談役、カポ、ソルジャー、アソシエイトという階層が描かれています。
カルテルは犯罪組織だけを表す言葉ではありません。
公正取引委員会は、複数の企業が、本来自分たちで決めるべき価格や生産量などを共同で取り決める行為をカルテルと説明しています。
ヤクザについて、警察庁は英語による公式説明の中で、暴力団は一般に「Yakuza」と呼ばれるとしています。
つまり、現代の日本では両者がほぼ同じ対象について使われることが多いものの、法律上の正式な言葉は暴力団です。
単に国や地域によって呼び方が違うわけではない
「アメリカならギャング、イタリアならマフィア、中南米ならカルテル、日本ならヤクザ」と覚える方法は、わかりやすく見えます。
しかし、実際の犯罪組織は、そのようにきれいに分けられません。
アメリカ国内にはストリートギャング、刑務所ギャング、モーターサイクルギャングが存在する一方で、イタリア系アメリカ人を中心に形成されたラ・コーザ・ノストラも存在します。
アメリカ司法省も、ラ・コーザ・ノストラと暴力的なストリートギャングを別の捜査対象として扱っています。
また、メキシコを拠点とする麻薬カルテルが、アメリカ国内のギャングと協力する場合もあります。
FBIは、地域のギャングがカルテルの重要な協力相手となり、流通範囲の拡大や捜査機関からの追跡回避を支える場合があると説明しています。
この関係を見ると、カルテルとギャングが単なる地域別の呼び名ではないことがわかります。
カルテルが国境を越える供給側の組織で、地域のギャングが販売や運搬などを担当するという形で、両者が同時に存在することもあるからです。
マフィアについても、イタリア以外で活動する組織があります。
ラ・コーザ・ノストラはシチリアに起源を持ちながら、アメリカでは都市ごとの独立したファミリーを基礎に発展してきたとアメリカ司法省は説明しています。
したがって、活動地域だけで名称を決めるのではなく、歴史、組織構造、活動内容、社会での使われ方を合わせて考える必要があります。
4つの言葉は分類の基準がそれぞれ異なる
4つの違いがわかりにくい最大の理由は、言葉が生まれた基準がそろっていないことです。
ギャングは、共通の identity や仲間意識を持ちながら、犯罪や暴力に関わる集団を広く表す言葉です。
そのため、近所を活動範囲とする小さな集団も、複数の地域に構成員を持つ大きな組織も、ギャングと呼ばれる可能性があります。
マフィアは、より歴史的な背景が強い言葉です。
特に狭い意味では、シチリアのマフィアやアメリカのラ・コーザ・ノストラなど、独自の階級、儀式、沈黙の規律を持つ組織を指します。
カルテルは、もともと市場を調整する協定を表す経済用語です。
麻薬カルテルという場合は、違法薬物の生産、調達、輸送、卸売などの流通網に大きな影響力を持つ犯罪組織を指す呼び名として使われています。
ヤクザは、日本で形成された暴力団を指す一般的な呼称です。
警察や法律は、組織の構成員が集団的または常習的に暴力的不法行為を行うことを助長するおそれがある団体を、暴力団として扱っています。
さらに広い言葉として「組織犯罪集団」があります。
国連の国際組織犯罪防止条約では、一定期間存在する3人以上の組織的な集団が、金銭的または物質的な利益を得るために重大な犯罪を行う場合などを、組織犯罪集団の定義に含めています。
ギャング、マフィア、麻薬カルテル、暴力団は、状況によってはこの大きな分類の中に含まれます。
ギャングとは?意味や組織の特徴
ギャングは犯罪集団を広く表す言葉
ギャングは、4つの中で最も幅広く使われる言葉です。
ただし、日常会話での使われ方と、法律や捜査機関での定義が必ずしも同じではありません。
アメリカ司法省は、暴力的なギャングを、3人以上が共通した集団 identity を持ち、恐怖や威圧を生み出しながら、犯罪活動や組織の勢力維持を目的とする集団として説明しています。
一方、アメリカの法律には、一定の犯罪を継続して行っていることや、州を越える取引への影響など、より細かな要件を設けた犯罪ストリートギャングの規定もあります。
この違いからも、ギャングに世界共通の一つだけの定義があるわけではないことがわかります。
大切なのは、単に人が集まっているだけではなく、集団としての共通性を持ち、犯罪や暴力、威圧などと継続的に関わっているかどうかです。
FBIが捜査対象として説明するギャングには、ストリートギャングだけでなく、刑務所内を基盤とする集団や、犯罪に関わるモーターサイクルギャングも含まれています。
活動内容も一つではありません。
FBIは、強盗、違法薬物や銃器の取引、人身取引、詐欺など、幅広い犯罪に関わるギャングがあると説明しています。
したがって、ギャングを「街角にいる不良少年の集まり」とだけ考えるのは正確ではありません。
ストリートギャングと大規模なギャングの違い
ストリートギャングは、その名のとおり、街や地域社会を基盤として形成された犯罪集団です。
FBIの報告書では、ストリートギャングを、街で形成され、地域社会の中で活動する犯罪組織と説明しています。
ただし、ストリートギャングがすべて小規模とは限りません。
一つの地区だけで活動する近隣型の集団もあれば、複数の州や都市に構成員や下部集団を持つ全国規模の集団もあります。
アメリカ司法省も、ストリートギャングは人数、人種や民族的な構成、組織構造がそれぞれ異なると説明しています。
地域型のギャングは、特定の地区での薬物販売や強盗などに関わることがあります。
全国規模のギャングになると、複数の地域をまたいだ薬物の生産、輸送、販売や、国際的な犯罪組織との取引に関わる場合もあります。
刑務所内で形成されたギャングが、外部のストリートギャングに影響を与えることもあります。
その反対に、街で生まれた組織が、刑務所内にもネットワークを広げる場合があります。
組織の形も、全員が一人のボスに従うピラミッド型とは限りません。
地域ごとに独立した小集団が共通の名称を使っている場合や、緩やかな連合として動いている場合もあります。
FBIは、多くのギャングが高度化し、よく組織されていると説明しているため、「ギャングは無計画でまとまりがない」と決めつけることもできません。
ギャングはアメリカの若者だけを指すのか
映画や音楽の影響から、ギャングと聞くと、アメリカの都市で活動する若者の集団を思い浮かべる人が多いかもしれません。
しかし、ギャングという言葉に、アメリカ人や若者だけを指すという決まりはありません。
アメリカ司法省による説明にも、年齢を若者に限定する条件はありません。
FBIの分類には、ストリートギャングのほか、刑務所ギャングやモーターサイクルギャングも含まれます。
これらの組織には成人の構成員もおり、長期間にわたって犯罪活動を続ける場合があります。
また、国境を越えて活動するギャングも存在します。
FBIは、MS-13や18th Streetのように複数の国や地域に関係する集団を、国境を越えるギャングの例として取り上げています。
このため、ギャングという言葉を理解するときは、年齢や国籍よりも、集団としての identity、犯罪活動、暴力や威圧の利用、縄張りや勢力の維持といった特徴を見る必要があります。
日本語では、不良グループや暴走族などに対して、比喩的にギャングという言葉を使うこともあります。
ただし、日常的な呼び方と、捜査機関が犯罪組織として扱う定義は分けて考えなければなりません。
服装や音楽、仲間同士の呼び名が似ているだけで、犯罪組織だと判断することはできないからです。
反対に、見た目が普通であっても、継続的な犯罪活動や組織的な役割分担があれば、捜査上はギャングや組織犯罪集団として扱われる可能性があります。
マフィアとは?ギャングとの違い
マフィアの発祥と現在の言葉の使われ方
マフィアという言葉を狭い意味で使う場合、その中心にあるのはシチリアのマフィアです。
FBIは、イタリア系組織犯罪の中で最もよく知られた存在としてシチリアのマフィアを挙げています。
シチリアのマフィアと関係する組織として知られているのが、コーザ・ノストラです。
アメリカ司法省は、アメリカのラ・コーザ・ノストラを、シチリアに起源を持ち、19世紀後半からアメリカで活動してきた犯罪組織として説明しています。
ただし、イタリアの犯罪組織がすべて一つのマフィアに属しているわけではありません。
FBIは、シチリアのマフィアのほかに、ナポリを背景とするカモッラ、カラブリアを背景とするンドランゲタ、プーリアを背景とするサクラ・コローナ・ウニータなどを、別の主要なイタリア系犯罪組織として挙げています。
つまり、「イタリアの犯罪組織だから全部マフィア」という説明は、細かく見ると正確ではありません。
現在は、ロシアンマフィアなどのように、イタリア系ではない組織犯罪集団に対してもマフィアという言葉が使われることがあります。
この場合のマフィアは、特定の正式名称というより、強い内部統制や長期的な犯罪活動を持つ組織に対する広い呼び方です。
FBIも、日常的な文脈では「mob」や「mafia」が国境を越える組織犯罪を表す言葉として使われる場合があると説明しています。
記事やニュースを見るときは、歴史的なシチリアのマフィアを指しているのか、似た組織犯罪集団を広く指しているのかを確認することが大切です。
ファミリーや階級を重視する組織構造
マフィアを語るときによく登場するのが「ファミリー」という言葉です。
ここでいうファミリーは、犯罪組織を構成する一つの組織単位として使われています。
実際の家族や親族だけで構成されているという意味ではありません。
FBIが公開しているアメリカのマフィア組織図では、最上位にボスまたはドンが置かれています。
その下には、組織の実務を支えるアンダーボスや、ボスに助言するコンシリエーレが配置されています。
さらに、複数の構成員をまとめるカポが存在し、その下に正式な構成員であるソルジャーや、正式加入前または外部協力者にあたるアソシエイトが置かれます。
ただし、この図は主にアメリカのラ・コーザ・ノストラを理解するためのものです。
世界中でマフィアと呼ばれる組織が、すべて同じ役職名や仕組みを採用しているわけではありません。
マフィア型組織の特徴は、役職の名前そのものよりも、上位者から下位者へ指示が伝わる階層、組織への忠誠、秘密の保持、犯罪収益の分配などが制度化されている点にあります。
アメリカ司法省が扱ったラ・コーザ・ノストラの事件でも、違法賭博、高利貸し、薬物取引、恐喝などで得た利益の一部を上位者に渡す仕組みが説明されています。
このような長期的な統制の仕組みが、単発の犯罪グループとマフィア型組織を分ける重要な要素になります。
マフィアとギャングを分ける決定的な違い
マフィアとギャングは、どちらも犯罪や暴力に関わる可能性があるため、活動内容だけを見ると重なって見えます。
しかし、両者を分けるポイントは、単純な人数や危険度ではありません。
ギャングは、犯罪に関わる集団を広く表せる言葉です。
地域の小さな集団から、複数の地域に支部を持つ高度な組織まで含まれるため、組織の形は一定ではありません。
これに対して、狭い意味でのマフィアは、シチリアやイタリア系組織犯罪の歴史、ファミリー制、階級、加入の儀式、沈黙の規律など、特定の伝統と結び付いた言葉です。
したがって、「規模が大きくなったギャングがマフィアになる」とは限りません。
大規模で厳しい階級制度を持つギャングもありますが、それだけでシチリア系やラ・コーザ・ノストラ系のマフィアになるわけではないからです。
反対に、マフィア型のファミリーであっても、構成員の人数が巨大とは限りません。
違いを一言で表すなら、ギャングは集団の活動や性質を中心とする広い呼び名で、マフィアは歴史的な系譜や組織文化まで含んだ、より限定的な呼び名です。
ただし、英語圏の日常表現では、マフィアの構成員がギャングスターと呼ばれることがあります。
そのため、人を指す言葉と組織を指す言葉が混ざり、さらに違いがわかりにくくなっています。
カルテルとは?マフィアとの違い
カルテルには経済用語と犯罪組織の意味がある
カルテルという言葉を理解するときは、最初に二つの使われ方を分ける必要があります。
本来のカルテルは、複数の独立した企業などが競争を避けるために結ぶ協定です。
公正取引委員会は、企業が互いに連絡を取り、本来自分たちで決めるべき商品の価格、販売量、生産量などを共同で決める行為をカルテルと説明しています。
このようなカルテルが行われると、企業同士の競争が弱くなり、消費者が高い価格で商品を買わなければならなくなる可能性があります。
そのため、日本では不当な取引制限として独占禁止法による規制の対象になります。
一方、ニュースや映画で登場するカルテルは、多くの場合、麻薬カルテルを意味します。
麻薬カルテルは、違法薬物の原料調達、生産、輸送、卸売、資金洗浄などに関わる大規模な犯罪組織やネットワークに対して使われる呼び名です。
DEAは、シナロア・カルテルやハリスコ新世代カルテルを、メキシコを拠点とする国境を越えた薬物取引組織として扱っています。
ただし、経済用語としてのカルテルと、固有名詞として定着した麻薬カルテルが、完全に同じ仕組みを持つとは限りません。
麻薬カルテルという名称が使われていても、実態は一枚岩の組織ではなく、複数の下部集団、協力者、運送役、資金洗浄の担当者などが結び付いたネットワークである場合があります。
麻薬カルテルの組織と国際的な流通網
麻薬カルテルの大きな特徴は、違法薬物を作る場所だけで活動しているわけではないことです。
原料の調達、製造、国境を越える輸送、保管、卸売、地域での販売、犯罪収益の移動まで、長い流通網が必要になります。
DEAは、カルテルを取り締まる際、組織の幹部だけでなく、世界的な供給網の各段階を解体する方針を示しています。
カルテル自身がすべての仕事を直接行うとは限りません。
別の国の犯罪ネットワーク、地域のギャング、運送を担う集団、資金洗浄を助ける人物などと協力する場合があります。
DEAとユーロポールは、メキシコの犯罪組織とヨーロッパ側の犯罪ネットワークが、メタンフェタミンやコカインの取引で協力している実態を報告しています。
この構造は、一般企業の国際的な供給網に似て見える部分があります。
ただし、扱っているものは違法薬物であり、取引の維持に暴力、脅迫、汚職などが使われる危険があります。
DEAとユーロポールの共同報告では、メキシコのカルテルが薬物取引の拠点や犯罪上の協力関係を築き、活動地域の支配に暴力を使ってきたと説明されています。
麻薬カルテルを単なる「薬物を売る集団」と考えると、実態を小さく見積もってしまいます。
実際には、複数の国や組織をつなぎ、違法な商品と資金を動かす国際的な犯罪ビジネスとして考える必要があります。
マフィアとカルテルは目的や成り立ちが違う
マフィアと麻薬カルテルは、どちらも大規模な組織犯罪に関わる可能性があります。
薬物取引、資金洗浄、恐喝、暴力など、活動が重なることもあります。
それでも、言葉が注目している部分は異なります。
狭い意味でのマフィアは、特定の地域や歴史、ファミリー、階級、組織への忠誠などを重視する犯罪組織です。
ラ・コーザ・ノストラは、違法賭博、高利貸し、恐喝、薬物取引など、複数の犯罪を収益源としてきたとアメリカ司法省は説明しています。
一方、麻薬カルテルという言葉は、違法薬物の市場や流通網における影響力を中心に使われています。
薬物の生産地から消費地までをつなぐ供給網を構築し、その過程で別の犯罪組織と協力することもあります。
そのため、マフィアは「どのような歴史と組織文化を持つ集団か」に重点があり、麻薬カルテルは「どの市場や流通を支配しているか」に重点があると考えると理解しやすくなります。
ただし、両者が必ず敵対するわけではありません。
FBIとアメリカ司法省が扱った事件では、イタリア系犯罪組織のンドランゲタとメキシコの薬物取引組織との関係や、アメリカのマフィア関係者を含む国際的な薬物取引が捜査対象になっています。
犯罪組織は名称の違いに関係なく、利益が一致すれば協力し、縄張りや取引をめぐって対立する可能性があります。
ヤクザとは?暴力団や海外組織との違い
ヤクザと暴力団は完全に同じ意味なのか
現代の日本では、ヤクザと暴力団は、ほぼ同じ対象について使われることが多い言葉です。
警察庁も、暴力団は一般にヤクザと呼ばれると公式に説明しています。
ただし、言葉としての役割は少し異なります。
ヤクザは、歴史や社会、映画、小説、日常会話などで使われてきた一般的な呼び方です。
これに対して、暴力団は法律や警察行政で使われる言葉です。
暴力団対策法では、構成員が集団的または常習的に暴力的不法行為などを行うことを助長するおそれがある団体を、暴力団として定義しています。
さらに、暴力団のうち一定の条件を満たし、都道府県公安委員会から指定を受けた団体は、指定暴力団と呼ばれます。
指定暴力団員が組織の威力を示して行う不当な金品要求などは、暴力団対策法に基づく中止命令などの対象になります。
つまり、「ヤクザだから法律上ただちに指定暴力団員になる」と判断できるわけではありません。
法律上の扱いは、その人がどの団体に所属しているか、その団体が暴力団対策法上どのように位置付けられているかによって決まります。
なお、警察庁によると、暴力団構成員と準構成員などの合計は、2025年末時点で1万7,600人となり、統計上の過去最少を更新しました。
ただし、警察庁は、勢力が減少する一方で、活動の不透明化や資金獲得方法の多様化が進んでいる組織もあると指摘しています。
親分・子分を中心とした日本独自の組織構造
日本の暴力団を特徴付ける要素の一つが、親分と子分による階層的な関係です。
警察庁は、暴力団では、盃事と呼ばれる儀式などを通じて構成員が擬似的な血縁関係を結び、首領を親分、配下を子分、先輩を兄貴分などと位置付けると説明しています。
実際の親子や兄弟ではなく、組織内で家族関係に似た呼び方と規律を作る仕組みです。
一つの組織の内部だけでなく、下位団体の代表者が上位団体の代表者と親分・子分の関係を結ぶことで、複数の組織が重なった大きな団体を形成する場合もあります。
組織内には、組長、若頭、本部長などの役職が置かれ、地位の上下に応じて指示や責任が分けられます。
団体によって役職名や細かな仕組みは異なりますが、上位者を頂点とした階層が作られる点は共通する特徴です。
この点は、ボス、アンダーボス、カポ、ソルジャーなどの階級を持つラ・コーザ・ノストラと似ています。
どちらも家族を思わせる言葉を使い、忠誠や上下関係を重視するからです。
ただし、歴史的な成り立ち、儀式、役職、法律上の扱いは異なります。
海外のマフィアと似た部分があるからといって、暴力団をそのまま日本版マフィアと置き換えると、日本独自の歴史や制度が見えにくくなります。
マフィア・ギャング・半グレとの違い
ヤクザとマフィアには、階級、組織への忠誠、縄張り、犯罪収益の上納など、共通して見える部分があります。
しかし、マフィアはシチリアやイタリア系組織犯罪の歴史と深く結び付いた呼び名であり、ヤクザは日本の暴力団に対する一般的な呼び名です。
法律上の規制も、それぞれの国の制度によって異なります。
ギャングとの違いは、言葉の範囲にあります。
ギャングは犯罪に関わる集団を広く表せるため、明確な上下関係を持つ組織も、地域ごとに緩く結び付いた集団も含まれる可能性があります。
これに対して、暴力団は一般に、組長を頂点とする明確な階層と、擬似的な親子・兄弟関係を持っています。
半グレという言葉は、法律上の正式な組織名ではありません。
かつて警察が準暴力団として扱ってきた集団には、暴力団のような明確な組織構造を持たず、犯罪ごとにメンバーが集まったり離れたりするという特徴がありました。
その後、SNSなどで実行役をその都度集め、匿名性の高い通信手段を使って活動する集団が目立つようになりました。
警察庁は、準暴力団を含む、匿名性と流動性を持った集団を「匿名・流動型犯罪グループ」と位置付けて実態解明を進めています。
暴力団と匿名・流動型犯罪グループが完全に切り離されているとは限りません。
警察庁は、暴力団が匿名・流動型犯罪グループを配下に置く例や、犯罪収益の一部が暴力団へ流れるとみられる例、暴力団構成員が中核人物として関わる例を確認しています。
固定された組織と流動的なグループが協力することもあるため、名称だけで関係性を判断するのは難しくなっています。
ギャング・マフィア・カルテル・ヤクザの違いまとめ
ギャング、マフィア、カルテル、ヤクザは、すべて犯罪集団に関係する言葉ですが、分類の基準は同じではありません。
ギャングは、共通の identity を持ち、犯罪や暴力に関わる集団を広く表す言葉です。
小さな地域集団から、複数の国や地域に関係する高度な組織まで含まれるため、規模や構造だけでは判断できません。
マフィアは、狭い意味ではシチリアのマフィアやアメリカのラ・コーザ・ノストラなど、特定の歴史、ファミリー制、階級、規律を持つ組織を指します。
ただし、現在は似た特徴を持つ組織犯罪集団に対して、広い意味で使われることもあります。
カルテルは本来、企業同士が価格や生産量などを取り決める協定を表す経済用語です。
麻薬カルテルという場合は、違法薬物の生産や国際的な流通網に大きな影響力を持つ犯罪組織を指す呼び名として使われます。
ヤクザは、日本の暴力団を指す一般的な呼び方です。
法律や警察行政では暴力団という言葉が使われ、一定の条件を満たす団体は指定暴力団として規制の対象になります。
4つの違いを理解するうえで大切なのは、活動している国だけで分類しないことです。
歴史、組織構造、主な活動、言葉が使われる場面を合わせて考えることで、それぞれの違いが見えてきます。
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