「昨日、仕事でやらかした」「完全にやらかした」「また何かやらかしたの?」
会話やSNSでよく目にする「やらかす」という言葉ですが、正確にはどのような意味なのでしょうか?
なんとなく「失敗する」という意味だと思っている人も多いかもしれませんが、実はそれだけではありません。
本来は「やる」「する」の俗な言い方であり、さらに「食べる」「飲む」という意外な意味もあります。
しかも、最近生まれた若者言葉と思いきや、江戸時代の文献にも用例が残っています。
この記事では、「やらかす」の意味や自然な使い方、語の歴史、「しでかす」「しくじる」との違い、仕事で使ってよいのかまで分かりやすく解説します。
言葉の意味だけをすぐ知りたい人はもちろん、「どうして失敗という意味になったの?」「方言なの?」と気になっている人も、ぜひ最後まで読んでみてください。
- 「やらかす」の基本的な意味と、現在よく使われるニュアンス
- 「やってしまう」「しくじる」「しでかす」との違い
- 若者言葉なのか、方言なのか、古い用例はあるのか
- 友達・同僚・上司など、相手に合わせた使い分け
「やらかす」の意味とは?まずは30秒で簡単に理解
「やらかす」の基本的な意味は「やる・する」の俗な言い方
「やらかす」は、簡単にいうと「やる」「する」をくだけた言い方にした言葉です。
ただし、「宿題をやらかす」「料理をやらかす」のように、どんな行為にも自由に使えるわけではありません。
現在の日常会話では、とくに「失敗する」「困ったことをする」「何かまずいことをしてしまう」といった場面で耳にすることが多い言葉です。
たとえば、「大事なメールで名前を間違えてやらかした」と言えば、「名前を間違えるというミスをしてしまった」という意味になります。
一方、本来の意味は失敗だけに限定されていません。
「やらかす」には「あることを行う」という広い意味があり、「やる」よりもさらに俗な表現として古くから使われてきました。
そのため、「やらかす=失敗する」とだけ覚えると、言葉の意味を少し狭く捉えることになります。
正確には「何かをする」という意味が土台にあり、現代ではその中でも失敗や問題のある行動について使う形が非常になじみ深くなっている、と考えると理解しやすいでしょう。
「何をやらかしたの?」という言い方も、「何に失敗したの?」だけを意味するとは限りません。
「いったい何をしたの?」という意味になり、話し手がその行動を問題視していたり、驚いていたりする気持ちが加わることがあります。
つまり、単純な動作を表す「する」よりも、話し手の感情が乗りやすい言葉なのです。
- 基本は「やる・する」をくだけて言った表現
- 現在は「失敗した」「まずいことをした」の意味で使われることが多い
- 単純な「する」より、話し手の驚きや困惑がにじみやすい
今は「失敗する・ミスをする」の意味で使われることが多い
日常会話で「やらかした」と聞いたとき、多くの人が思い浮かべるのは失敗でしょう。
- 寝坊して会議に遅れた
- 提出するファイルを間違えた
- 料理に塩を入れすぎた
このような場面で、「今日ちょっとやらかした」のように使えます。
辞書でも「へまをやらかす」「どえらいことをやらかす」といった用例が示されており、失敗や好ましくない行動と結びつく使い方は確立しています。
ただし、「やらかす」という動詞自体に「必ず失敗する」という意味しかないわけではありません。
ここが少しややこしいところです。
もともとは「やる」「する」に近い広い意味を持つため、何をやったのかは前後の文脈によって決まります。
とはいえ、現代の会話で単独に近い形で「やらかした」と言えば、「まずいことをした」「失敗してしまった」と理解されるケースが一般的です。
たとえば、友達が暗い表情で「俺、昨日やらかしたんだよね」と言ってきたら、何か素晴らしいことを成し遂げたとは考えにくいでしょう。
何か失敗したのだろうと受け取るのが自然です。
このように、辞書上の基本的な意味と、実際の会話で感じるニュアンスには少し差があります。
意味を理解するときは「する」という基本部分と、「まずいことをした」という現在の使われ方を両方押さえておくのがおすすめです。
「やらかした」は「やってしまった」に近いニュアンス
「やらかした」は、「やってしまった」にかなり近い感覚で使われます。
たとえば、重要な書類を消してしまった場面なら、「やらかした」と「やってしまった」のどちらでも状況を表せます。
ただし、二つの言葉が完全に同じというわけではありません。
「やってしまった」は、単純に動作が完了したことを表す場合にも使えます。
「宿題を全部やってしまった」であれば、失敗ではなく「宿題を終えた」という意味にもなります。
一方、「やらかした」と単独で言う場合は、失敗や問題を起こしたニュアンスが強く感じられます。
「しまった、やらかした」と言えば、自分でも結果がよくなかったと分かっている感じが伝わります。
そのため、自分の小さな失敗を少し軽く表現したい場面では便利です。
「朝寝坊した」より「朝からやらかした」と言ったほうが、失敗を少し笑い話のように話すこともできます。
ただし、大きな事故や重大な不祥事などを軽い調子で「やらかした」と表現すると、不真面目な印象を与える場合があります。
言葉そのものがくだけているため、出来事の深刻さによっては使わないほうがよいでしょう。
「やってしまった」も「やらかした」も後悔を含む場面で使えますが、「やらかした」のほうがより口語的で、失敗を直接連想させやすい表現です。
実は「食べる・飲む」という意味もある
意外に感じるかもしれませんが、「やらかす」には「食べる」「飲む」という意味もあります。
これは新しく生まれた意味ではありません。
1841年から1842年ごろに刊行された人情本『春色梅美婦禰』には、居酒屋で一杯飲むことを「やらかす」と表現した用例が記録されています。
つまり、「やらかす」が飲食を表す使い方には少なくとも江戸時代までさかのぼれる歴史があります。
現在の日常会話では、「夕飯をやらかす」のような言い方を頻繁に聞くわけではないため、この意味を知らない人も少なくないでしょう。
しかし、辞書上では現在も「食う」「飲む」という意味が掲載されています。
たとえば、古い作品の中で「一杯やらかす」という表現が出てきた場合、必ずしも失敗したという意味ではありません。
酒を一杯飲むという意味になっている可能性があります。
ここを知らないと、「一杯失敗するってどういうこと?」と意味が取れなくなってしまいます。
言葉は時代によって、よく使われる意味が変わるものです。
現在の感覚だけで昔の文章を読むと意味を取り違えることがあるため、「やらかすには飲食の意味もある」と覚えておくと古い文章を読むときにも役立ちます。
漢字ではどう書く?「遣らかす」の読み方と表記
「やらかす」は漢字では「遣らかす」と書くことがあります。
読み方はそのまま「やらかす」です。
ただし、普段の文章やSNSなどでは、ひらがなで「やらかす」と書かれることが多く、無理に漢字にする必要はありません。
「遣」という漢字を見ると「派遣」「遣う」などの言葉を連想するかもしれませんが、「遣らかす」は「やる」と関係する語です。
重要なのは漢字よりも意味です。
「遣らかす」という表記を知らなくても、日常生活で困ることはほとんどありません。
むしろ文章を書く場合には、読みやすさを考えて「やらかす」とひらがなで表記するほうが自然なケースも多いでしょう。
また、漢字で書かれているからといって、かたい表現になるわけではありません。
「遣らかす」は意味としては俗な言い方なので、漢字表記に変えてもビジネス向けの丁寧な言葉になるわけではない点に注意が必要です。
「上司への報告だから『遣らかしました』と漢字にすれば丁寧になる」ということはありません。
フォーマルな場面では、漢字に直すのではなく「ミスをしました」「誤りがありました」「不手際がありました」など、表現そのものを変えるほうが適切です。
「やらかす」の使い方とニュアンスを例文で解説
自分の失敗に「やらかした」と使う場合
もっとも使いやすいのは、自分自身の失敗について話す場面です。
たとえば、学校に宿題を忘れたときなら「今日、宿題を家に忘れてやらかした」と言えます。
仕事で資料の数字を入力し間違えたときなら、「昨日の資料、数字を一つ間違えてやらかした」のような使い方もできます。
この表現の特徴は、失敗を少しくだけた形で話せることです。
「私は重大なミスを犯しました」と言うと深刻に聞こえますが、「ちょっとやらかした」と言えば、同じ失敗でも話し方はかなり軽くなります。
もちろん、失敗そのものが軽くなるわけではありません。
あくまで言葉の調子がカジュアルになるだけです。
そのため、友達との会話や自分の体験談では自然でも、正式な謝罪の言葉としては向きません。
たとえば、「取引先への請求額を間違えました」という重大な報告をするときに、「ちょっとやらかしちゃいました」と言えば、反省していないように受け取られる可能性があります。
一方、「昨日スマホを家に忘れてさ、完全にやらかしたよ」のような日常的な失敗なら、違和感なく使えます。
どの程度の出来事を軽く扱ってよいのかを考えることが、自然に使うポイントです。
他人に「あの人やらかした」と使う場合
「やらかす」は、自分だけではなく他人の行動についても使えます。
- あの選手、最後の場面でやらかした
- あの人、また大事なところでやらかしたみたい
このように言えば、その人が何らかのミスや問題を起こしたことを表せます。
ただし、自分に使う場合より注意が必要です。
「やらかす」はくだけた表現であるだけでなく、相手の行動を「まずいことだった」と評価する感じが加わりやすいからです。
本人が気にしている失敗について、「いやあ、盛大にやらかしたね」と笑えば、傷つけてしまうこともあります。
とくに、失敗によって誰かに迷惑がかかった場合や、本人が真剣に反省している場合には、軽い表現がふさわしくないことがあります。
反対に、親しい友達同士で、すでに笑い話になっている失敗なら自然です。
「財布忘れて店まで行ったの?それはやらかしたね」といった程度なら、会話として成立しやすいでしょう。
つまり、「やらかしたね」は単なる事実説明ではありません。
話し手による評価や、少しからかうような響きを持つ場合があります。
他人に向けるときほど、相手との距離感を考えて使うことが大切です。
「盛大にやらかす」「完全にやらかした」とは?
「やらかす」には、程度を強める言葉がよく付けられます。
代表的なのが「盛大にやらかす」「完全にやらかした」といった言い方です。
「盛大にやらかした」は、小さなミスよりも、大きく目立つ失敗をした場合によく使われます。
たとえば、旅行の日を一日勘違いして空港へ行ってしまったなら、「盛大にやらかした」と言いたくなるかもしれません。
「完全にやらかした」は、「これはもう失敗だったと認めるしかない」という気持ちを表しやすい言い方です。
テストの日付を勘違いして勉強する科目を間違えたときなどに、「完全にやらかした」と表現できます。
ほかにも、「派手にやらかす」「またやらかす」「思いっきりやらかす」など、さまざまな言葉と組み合わせられます。
ただし、「盛大に」という言葉が付いていても、本当に重大事件である必要はありません。
友達同士の会話では、プリンを床に落とした程度の出来事を大げさに「盛大にやらかした」と表現することもあります。
こうした大げさな言い回しには、自分の失敗を面白く伝える効果があります。
事実の大きさだけではなく、話し手がどのように出来事を見せたいのかによって表現が変わるのです。
SNSや友達同士で使われる「やらかす」の例文
友達同士の会話やSNSでは、かしこまった説明より短い表現で使われることが多くあります。
たとえば、次のような文章です。
- 目覚ましかけ忘れて朝からやらかした。
- 投稿するアカウント間違えた。完全にやらかした。
- 電車を反対方向に乗ってしまった。今日は朝からやらかしてる。
- ケーキ焼いてたのに砂糖入れ忘れた。これはやらかした。
いずれも、「失敗した」「ミスした」と置き換えておおよその意味は通じます。
しかし、「やらかした」にすると、少しくだけた雰囲気になり、自分の失敗を自虐的に見せやすくなります。
また、「何かやらかした?」という形もあります。
相手の様子がおかしかったり、周囲が騒がしかったりするときに、「何か問題を起こしたの?」という意味で使えます。
この場合も、必ずしも事故や大失敗を指しているわけではありません。
ちょっとした失言や、約束を忘れたといったミスでも使えます。
便利な言葉ではありますが、SNSでは文字だけで気持ちが伝わるため、他人を指して使う場合は注意が必要です。
冗談のつもりでも、相手を責めたり、ばかにしたりしているように見えることがあります。
相手の失敗に使うと失礼?注意したいニュアンス
「やらかす」は、相手によっては失礼になることがあります。
理由は、この言葉が単なる「する」よりもくだけており、問題のある行動や失敗を少し面白がるような響きを持つことがあるためです。
たとえば、親しい友達がゲームで操作を間違えたときに「やらかしたな」と言う程度なら、それほど問題にならないでしょう。
しかし、仕事上の大きなミスで落ち込んでいる人に「ずいぶんやらかしたね」と言えば、責められているように感じるかもしれません。
上司に対して「部長、やらかしましたね」と言うのも、通常はかなりくだけすぎた表現です。
人間関係によって許される場合はあっても、一般的な敬語表現とはいえません。
また、事件や事故など、誰かが深刻な被害を受けた出来事を「やらかした」で済ませるのも注意が必要です。
言葉が軽いため、出来事の重大さを軽視しているように聞こえる可能性があります。
迷ったときは、「ミスがあった」「間違いがあった」「問題が起きた」といった中立的な表現を選ぶと安全です。
「やらかす」は親しみやすい一方、場面を選ぶ言葉だと覚えておきましょう。
「やらかす」の語源は?若者言葉や方言なの?
「やらかす」と「やる」はどのような関係がある?
「やらかす」は、「やる」と深い関係がある言葉です。
確認できる国語辞典の語釈では、「あることを行う」という意味を持ち、「やる」よりさらに俗な言い方とされています。
さらに、語の成り立ちについては「かす」が接尾語であることも確認できます。
そのため、「やる」と無関係な別の言葉から突然「やらかす」が生まれたと考える必要はありません。
「やる」を土台とした、よりくだけた表現として理解すると分かりやすいでしょう。
ただし、「かすを付ければ必ず悪い意味になる」という単純なルールとして覚えるのはおすすめできません。
日本語には「ちゃらかす」「放らかす」など「かす」を含むさまざまな言葉があり、それぞれ歴史的な成り立ちや意味が異なります。
「やらかす」について確実にいえるのは、「かす」が接尾語として扱われ、「やる」より俗な言い方として古くから存在していることです。
語源の説明では、分かりやすさを優先するあまり、根拠の確認できない意味を「かす」に付け加えてしまう説明もあるため注意しましょう。
「やらかす」は最近できた若者言葉ではない
「やらかす」をSNSなどで見かけることが多いため、最近生まれた若者言葉だと思っている人もいるかもしれません。
しかし、これはかなり昔から使われている言葉です。
確認できる古い用例として、1772年の咄本『鹿の子餠』に「やらかそう」という形が記録されています。
1772年は江戸時代です。
少なくとも250年以上前には文献上の用例が確認できるため、「SNS時代に若者が作った新語」と説明するのは正しくありません。
もちろん、昔と現在で使われる場面や受け取られるニュアンスが完全に同じとは限りません。
言葉は長い時間の中で使い方が変化します。
現在では「失敗した」という意味合いで「やらかした」と使う場面がとても分かりやすいため、新しい俗語のように感じる人もいるのでしょう。
しかし、言葉自体の歴史は古く、若者だけの専用語でもありません。
年代を問わず会話で使われる可能性があります。
「最近よく見る言葉」と「最近生まれた言葉」は同じではないという点が、この言葉を理解するうえで重要です。
「やらかす」は方言?辞書では俗語として扱われている
「やらかす」は方言なのか気になる人もいるでしょう。
全国的な国語辞典では、特定地域に限定された方言としてではなく、「やる」「する」の意味を持つ俗語として扱われています。
つまり、「特定の県や地方でしか通じない言葉」と考える必要はありません。
現在では全国的に意味を理解されやすい日本語です。
ここで知っておきたいのが、「方言」と「俗語」は別物だということです。
方言は、特定の地域や集団で使われる言葉や発音などを指します。
一方、俗語は改まった場面より、日常のくだけた会話などで使われる言葉です。
「やらかす」は後者として考えるほうが適切です。
もちろん、地域によって使う頻度や細かなニュアンスに差が生じることはあります。
しかし、それだけで言葉そのものを特定地域の方言と断定することはできません。
「どこの方言だろう」と疑問に思っていた人は、「方言というより、くだけた俗な言い方」と覚えておくとよいでしょう。
「やらかす」は、特定地域だけの方言として扱うより、日常のくだけた場面で使われる俗な表現として理解するのが適切です。
昔は「食べる・飲む」の意味でも使われていた
「やらかす」の歴史を知るうえで面白いのが、飲食を表す用法です。
1841年から1842年ごろの『春色梅美婦禰』には、居酒屋で一杯飲む意味の用例が確認できます。
古い文章の「一杯やらかす」は、文脈によって「酒を一杯飲む」という意味になります。
現在の感覚では、「やらかす」と聞いて食事を想像する人は多くないでしょう。
それだけに、昔の作品を読むと意味を勘違いしやすい部分です。
たとえば、「一杯やらかそう」という表現を現在の感覚だけで読むと、「一回失敗しよう」という妙な意味に見えてしまいます。
実際には、文脈によって「酒を一杯飲もう」と理解できます。
この飲食の意味は、現在の辞書にも残っています。
つまり、完全に消えて辞書からなくなった意味ではありません。
ただ、普段の会話では失敗や問題行動を表す用法のほうが理解されやすいため、現代人にとっては少し古風に感じられる場合があります。
こうした古い意味を知ると、「やらかす」が単純に「失敗する」のためだけに作られた言葉ではないことも分かります。
「何かをする」という広い意味から、飲食など特定の行為にも使われてきた言葉なのです。
なぜ現在は「失敗」のイメージが強いのか
現在「やらかした」と聞くと、多くの場合は失敗を想像します。
では、なぜそのイメージが強くなったのでしょうか。
ここは、根拠なく「SNSで意味が変わった」と断定しないほうがよい部分です。
確認できる辞書資料だけでは、「ある時代のある出来事をきっかけに失敗の意味へ変化した」といった単純な原因までは特定できません。
一方で、現在の辞書には「へまをやらかす」「どえらいことをやらかす」といった、問題や失敗と結びついた例が掲載されています。
和英辞典でも、大きな失敗をした場面で「やらかす」が使われる例が確認できます。
このことから、少なくとも失敗を表す使い方が現代語として十分定着していることは分かります。
もともと「何かをする」という広い意味を持つ言葉が、「へまをする」「困ったことをする」といった文脈で多く使われることで、単独の「やらかした」からも失敗を連想しやすくなったと考えると理解しやすいでしょう。
ただし、これは語の使われ方から説明できる範囲の話です。
歴史的な意味変化の原因を一つに決めつけるより、「基本義は広いが、現代では失敗の文脈が非常に分かりやすい」と押さえておくほうが正確です。
「やらかす」と似た言葉の違い・言い換えを比較
「やらかす」と「しでかす」の違い
「やらかす」とよく似ているのが「しでかす」です。
どちらも、何か問題のある行動や失敗をした場面で使えます。
ただし、「しでかす」は普通では考えにくいような大きなことや、大失敗をする意味を持つ言葉です。
たとえば、「取り返しのつかないことをしでかした」という文章なら、かなり重大な出来事を想像します。
一方、「やらかす」はもっと軽い失敗にも使いやすい言葉です。
「コーヒーこぼしてやらかした」
「寝坊してやらかした」
この程度の日常的なミスでも不自然ではありません。
もちろん、「とんでもないことをやらかした」のように大きな問題にも使えるため、失敗の大きさだけで完全に線引きできるわけではありません。
違いを簡単にまとめるなら、「しでかす」は重大さや異常さを感じさせやすく、「やらかす」はより口語的で、小さな失敗から大きな問題まで幅広く使いやすいと考えるとよいでしょう。
また、「やらかした」は自分の失敗を軽く笑う場面でも使えますが、「しでかした」はやや重く感じられる場合があります。
「やらかす」と「しくじる」の違い
「しくじる」も失敗を表す代表的な言葉です。
基本的には「やりそこなう」「失敗する」という意味を持ちます。
そのため、「テストでしくじった」と「テストでやらかした」は、かなり近い状況を表すことができます。
ただし、「しくじる」には、過失などによって仕事や勤め先、得意先などを失う意味もあります。
この意味は「やらかす」にはそのまま当てはまりません。
また、「しくじる」は失敗そのものに焦点がある言葉です。
一方、「やらかす」はもともと「する」という広い意味を持つため、「何をやらかした?」のように問題のある行動自体を尋ねる使い方もできます。
感覚的には、「しくじった」は「うまくできなかった」、「やらかした」は「まずいことをしてしまった」に近いと考えると分かりやすいでしょう。
たとえば、試験で実力を出せなかったなら「しくじった」が自然です。
提出先を間違えて社外秘の資料を別の相手へ送ったなら、「やらかした」のほうが「問題を起こしてしまった」という感覚を表しやすくなります。
「やらかす」と「やってしまう」の違い
「やってしまう」は、必ずしも失敗を表す言葉ではありません。
「夏休みの宿題を今日中にやってしまう」と言えば、「全部終わらせる」という意味になります。
「食べてしまう」「片付けてしまう」のように、動作が終わることを表す使い方もあります。
もちろん、「大事なファイルを消してしまった」のように、望ましくない結果について使うこともできます。
このときは後悔や残念な気持ちが感じられます。
一方、「やらかす」は、現代の日常会話では問題や失敗を連想させやすい表現です。
「昨日やってしまった」とだけ言われると、何を終えたのか、何を失敗したのか文脈が必要です。
「昨日やらかした」と言われれば、何かまずいことが起きたと予想しやすいでしょう。
その意味で、「やってしまう」のほうが広く使える表現です。
「やらかす」は、そこから失敗や問題行動のニュアンスを強くした口語表現として理解すると使い分けやすくなります。
「やらかす」と「ミスする・失敗する」の違い
「ミスする」「失敗する」は、「やらかす」より中立的な表現です。
「失敗」は、やり方や方法を誤り、目的とは違う結果になることを意味します。
「入力をミスしました」
「実験に失敗しました」
このような文章は、学校でも仕事でも幅広く使えます。
一方、「やらかしました」はかなり会話的です。
同じ出来事でも、「計算をミスしました」と言えば事実を落ち着いて説明している印象になります。
「計算でやらかしました」と言えば、自分の失敗をくだけた調子で語っている印象になります。
また、「やらかす」は単なる能力不足だけでなく、「まずい行動をしてしまった」という意味でも使いやすい言葉です。
失言した場合なら、「発言を失敗した」より「失言してやらかした」のほうが会話として自然なことがあります。
どれを選ぶべきか迷ったら、正式な場面では「ミス」「誤り」「失敗」を選び、親しい会話では「やらかす」も選択肢に入れるとよいでしょう。
「やらかす」の類語・言い換えを状況別に一覧で比較
「やらかす」は、場面によってさまざまな言葉に置き換えられます。
ただし、似た言葉でもニュアンスは少しずつ異なります。
| 表現 | 主なニュアンス | 向いている場面 |
|---|---|---|
| やらかす | まずいことをしてしまう | 親しい会話 |
| 失敗する | 目的どおりにできない | 日常から仕事まで幅広い場面 |
| ミスする | 間違える | 学校や仕事 |
| しくじる | やりそこなう | 会話やくだけた文章 |
| しでかす | 大きなことや問題を起こす | 重大な失敗を強調する場面 |
| やってしまう | 完了または望ましくない結果 | 幅広い会話 |
| 不手際がある | 手際や処理に問題がある | ビジネスや謝罪 |
| 誤りがある | 内容が正しくない | 報告や説明 |
たとえば、友達に「今日仕事でやらかした」と言うのは自然です。
同じ内容を上司へ報告するなら、「本日の処理で入力ミスがありました」としたほうが、何が起きたのか明確に伝わります。
言い換えで大切なのは、「やらかす」を難しい言葉に置き換えることではありません。
誰に、何を、どの程度の深刻さで伝えるのかに合わせて言葉を選ぶことです。
「やらかす」は仕事で使える?場面別の正しい使い分け
友達や家族との会話なら自然に使える
友達や家族など、親しい人との会話では「やらかす」は比較的使いやすい言葉です。
- 今日スーパーに財布を持っていくの忘れてやらかした
- 予約の日を一日間違えてた。完全にやらかした
このような日常の失敗であれば、自然な会話になります。
むしろ「重大な過失を犯してしまいました」と言うほうが、大げさで不自然でしょう。
「やらかす」の便利なところは、自分の失敗を少し笑い話にできることです。
落ち込むほどではない小さなミスを、人に面白く話すときに使いやすい表現です。
ただし、家族や友達なら何にでも使えるわけではありません。
相手が深刻に悩んでいる失敗に対して、「またやらかしたの?」と軽く言えば傷つける可能性があります。
大切なのは言葉の意味より、相手がその出来事をどの程度重く受け止めているかです。
親しい関係だからこそ、冗談にしてよい失敗なのかを考える必要があります。
同僚との会話で「やらかした」は使っても大丈夫?
同僚同士の雑談なら、「やらかした」を使っても不自然ではありません。
たとえば、休憩中に「昨日、家に社員証を忘れてやらかしたよ」と話す程度なら、ごくくだけた会話です。
気心の知れた同僚に「ファイル保存せず閉じちゃってやらかした」と話す場面もあるでしょう。
ただし、同じ職場でも「雑談」と「業務報告」は分けて考える必要があります。
正式な報告で「納品データ、やらかしました」とだけ伝えても、何が起きたのか分かりません。
さらに、俗な表現なので、仕事を軽く考えているような印象を与える可能性もあります。
業務上の報告では、「納品データに誤りがありました」「古いデータを送付してしまいました」のように、具体的な事実を伝えるほうが適切です。
仕事では、面白い言い方より正確さが重要です。
同僚との会話で使えるからといって、会議や報告メールでも同じ言葉を使えるとは限らないと覚えておきましょう。
上司や取引先に「やらかしました」は避けたほうがよい
上司や取引先への正式な報告では、「やらかしました」は基本的に避けるほうが無難です。
「やらかす」は俗な言い方なので、改まった場面には向きません。
「やらかす」は国語辞典でも俗な言い方として扱われています。
たとえば、取引先へのメールで「こちらの担当者がやらかしてしまい、納期が遅れました」と書けば、かなり軽い印象になります。
問題を起こした担当者をからかっているように見える可能性もあります。
「弊社の確認不足により、納期に遅れが生じました」のように、原因を具体的に説明するほうが適切です。
上司への報告でも同じです。
「昨日の件、ちょっとやらかしました」ではなく、「昨日送付した資料に誤りがありました」と伝えれば、相手は状況をすぐ理解できます。
ビジネスでは、くだけた言葉を避けること以上に、何が起きたのかを正確に伝えることが重要です。
謝罪するときは「ミス」「不手際」などへの言い換えが適切
- 入力ミスがありました
- 確認不足がありました
- 資料に誤りがありました
- 弊社の不手際により、ご迷惑をおかけしました
謝罪では、「やらかす」より具体的で中立的な言葉を選びましょう。
たとえば、自分が数字を入力し間違えたのであれば、「入力ミスがありました」と言えます。
確認を十分に行わなかったのであれば、「確認不足がありました」と表現できます。
対応の進め方に問題があった場合は、「弊社の不手際により、ご迷惑をおかけしました」といった形もあります。
重要なのは、何でも「不手際」に置き換えればよいということではありません。
相手が知りたいのは、「何が起きたのか」「なぜ起きたのか」「どう対応するのか」です。
「やらかしました。申し訳ありません」だけでは、肝心の内容が伝わりません。
「送付先の確認を誤り、別の資料を送信してしまいました」のように、具体的な事実を示すほうが誠実です。
言い換えとは、失敗をぼかすためのものではありません。
くだけすぎる表現を避けながら、状況をより正確に伝えるために使うものです。
「やらかす」の意味と使い方を一言でおさらい
「やらかす」を短く説明するなら、「やる」「する」を俗に言った表現で、現在はとくに失敗や問題のある行動をした場面で使われやすい言葉です。
「しまった、やらかした」と言えば、「まずいことをしてしまった」という気持ちを表せます。
一方で、本来の意味は失敗だけではありません。
「食べる」「飲む」という意味もあり、江戸時代の文献にも用例が残っています。
また、1772年には用例が確認できるため、最近誕生した若者言葉というわけでもありません。
似た言葉では、「しくじる」は失敗そのもの、「しでかす」は大きなことや重大な失敗を強く感じさせます。
日常会話では便利な表現ですが、俗な言い方なので、正式な仕事の報告や謝罪では「ミス」「誤り」「確認不足」「不手際」など、状況に合った言葉へ置き換えるのがよいでしょう。
「やらかす」の意味と使い方まとめ
- 「やらかす」は「やる・する」の俗な言い方
- 現在は「失敗した」「まずいことをした」というニュアンスで使われやすい
- 「食べる・飲む」という用法もあり、江戸時代の文献に古い用例がある
- 「しでかす」は重大さを感じさせやすく、「しくじる」は失敗そのものに焦点が当たりやすい
- 正式な仕事の報告や謝罪では「ミス」「誤り」「確認不足」「不手際」などに言い換える
意味だけを見ると単純な言葉に思えますが、江戸時代からの用例や現在とのニュアンスの違いまで知ると、意外に奥深い日本語です。
次に「やらかした」という言葉を見かけたときは、単純に「失敗した」と置き換えるだけでなく、「何をしたのか」「どのくらいくだけた場面なのか」に注目すると、より正確に意味を読み取れるでしょう。
