ニュースで見かける「不審者事案」と、仕事で使われる「新規案件」は、どちらも「何らかの事柄」を表しています。
しかし、いざ違いを説明しようとすると、うまく言葉にできない人も多いのではないでしょうか。
「事案」は事件より軽いもの、「案件」は仕事だけに使う言葉と考えられることもありますが、実際の使い分けはそれほど単純ではありません。
両者は、対象となる出来事が違うのではなく、何に注目して表現するかが異なります。
この記事では、公的機関での用例も確認しながら、「事案」と「案件」の意味や使い分けを分かりやすく解説します。
ビジネスメール、ニュース、警察情報、SNSなど、場面別の例文も紹介するので、どちらを使うべきか迷ったときの参考にしてください。
「事案」と「案件」の違いを簡単にいうと?
結論は「問題の内容」と「処理する対象」の違い
「事案」と「案件」は、どちらも何らかの事柄や問題を表す言葉です。
意味が重なる部分もあるため、すべての場面で明確に区別できるわけではありません。
大まかな違いを示すと、「事案」は起きた出来事や問題の内容に注目するときに使われ、「案件」は検討、処理、審査、仕事などの対象に注目するときに使われる傾向があります。
たとえば、会社で情報漏えいが起きた場合、その出来事を「情報漏えい事案」と表現できます。
一方、その問題への対応を担当者に割り当て、社内で処理する対象として扱う場合は、「情報漏えいへの対応案件」と表現することがあります。
つまり、同じ出来事であっても、どの部分に注目するかによって言葉が変わる可能性があるのです。
公的な文書でも、「事案」は具体的な事情や問題の内容を指す言葉として使われています。
これに対して「案件」は、委員会などに付託され、審査や調査の対象になったものを表す言葉として使われています。
参議院規則では、「付託を受けた案件の審査又は調査」という表現が使われており、案件が処理や検討の対象を指すことが分かります。
ただし、「事案は問題が起きたときだけ使い、案件は仕事のときだけ使う」と覚えるのは正確ではありません。
法律、行政、会社、業界などによって使い方が異なることもあるため、前後の文章から判断することが大切です。
意味・使う場面・ニュアンスを比較表で確認
両者の違いを整理すると、次のようになります。
| 比較するポイント | 事案 | 案件 |
|---|---|---|
| 基本的なイメージ | 問題になっている事柄や出来事 | 検討、処理、審査、仕事の対象 |
| 注目する部分 | 出来事の内容や具体的な事情 | 対応する対象や取り扱う仕事 |
| よく使われる場面 | 警察、法律、行政、不祥事、事故 | ビジネス、営業、会議、審査、広告 |
| 使用例 | 不審者事案、情報漏えい事案 | 開発案件、商談案件、広告案件 |
| 言葉の印象 | 客観的、事務的、やや硬い | 実務的、業務的、やや幅広い |
| 犯罪との関係 | 犯罪と確定していない段階でも使われる | 犯罪かどうかとは直接関係しない |
表を見ると、「事案」は問題や出来事を説明するときに使いやすく、「案件」は誰かが取り扱う対象を表すときに使いやすいことが分かります。
ただし、両者の範囲は重なっています。
「この事案について検討する」とも言えますし、「この案件に問題が見つかった」とも言えます。
「問題だから事案」「仕事だから案件」と機械的に分類するのではなく、何を伝えたいのかを考えることが大切です。
出来事の経緯や内容を伝えたいなら「事案」が向いています。
担当者、契約、納期、予算、審査など、処理する対象として伝えたいなら「案件」が向いています。
迷ったときに使える簡単な判断方法
どちらを使うべきか迷ったときは、その事柄を「起きたこと」として説明したいのか、「取り扱うもの」として説明したいのかを考えてみましょう。
「何が起きたのか」を伝える文章なら、「事案」が自然になりやすいです。
たとえば、「個人情報が外部に送信される事案が発生した」という文章では、起きた出来事の内容に注目しています。
「誰が、どのように処理するのか」を伝える文章なら、「案件」が自然になりやすいです。
たとえば、「この案件は法務部が担当する」という文章では、担当部署が処理する対象に注目しています。
簡単に言い換える方法もあります。
「出来事」「問題」「ケース」に置き換えて自然なら、「事案」が使いやすいでしょう。
「仕事」「依頼」「検討事項」「取引」に置き換えて自然なら、「案件」が使いやすいでしょう。
ただし、これは絶対的なルールではなく、言葉を選ぶための目安です。
社内で独自の用語ルールが決まっている場合は、そのルールを優先する必要があります。
また、日常会話では「その件」「この件」と言ったほうが自然な場合も少なくありません。
意味を正確に伝えることが目的なら、無理に硬い言葉を選ばないことも大切です。
「事案」の意味と使い方
「事案」が表すのは問題になっている事柄
「事案」は、現在問題になっている事柄や、検討の対象となる具体的な事情を表すときに使われます。
単なる出来事ではなく、確認、判断、対応などが必要な事柄を指すことが多い言葉です。
法律や行政の文章では、「具体的な事案」「個別の事案」「当該事案」といった形がよく使われます。
この場合の「事案」は、特定の問題についての事実関係や事情全体を指しています。
たとえば、「具体的な事案に即して判断する」という文章は、一般論だけで結論を出さず、実際に起きたことや関係者の事情を確認して判断するという意味です。
国会の会議録でも、「具体的事案において、考慮事情やその他の事情を総合勘案する」という使い方が確認できます。
ここで注意したいのは、「事案」という言葉自体に、犯罪や違法行為という意味が含まれているわけではないことです。
小さなトラブル、事故につながるおそれのある行為、法律上の争い、行政上の問題なども事案と呼ばれます。
反対に、すでに犯罪として捜査されているものでも、具体的な事情や対応上の問題に注目して「事案」と表現されることがあります。
「事案だから事件ではない」「事案なら犯罪性がない」と判断することはできません。
どの段階にあり、どのような文脈で使われているのかを確認する必要があります。
警察・行政・ニュースでよく使われる理由
警察や行政の発表では、事実関係や法的な評価が確定していない段階で情報を伝えることがあります。
そのような場面では、犯罪と決めつけず、確認された行為や状況を客観的に示す必要があります。
そこで使われることが多い言葉が「事案」です。
富山県警察は、子どもや女性に対する声掛け、つきまとい、身体露出、撮影行為などについて、事件には至らないものや不審者の出没を含めて説明しています。
この用例からも、「事案」は犯罪として立件された事件だけを指す言葉ではないことが分かります。
たとえば、知らない人から声を掛けられたという通報があっても、相手に悪意があったとは限りません。
通報を受けた時点では犯罪性を判断できない場合があるため、「声掛け事案」「不審者事案」といった中立的な表現が用いられます。
群馬県警察も、不審者情報の例を示したうえで、内容によっては条例や法律に違反する可能性があると説明しています。
つまり、「事案」という表現には、確認された出来事を知らせながら、未確認の部分について断定を避ける役割もあります。
行政や企業の発表でも同じ考え方が使われます。
情報漏えい、システム障害、不適切な処理などについて、事実関係を調査している段階では、「発生した事案」「対象となる事案」と表現すると、客観的に状況を伝えやすくなります。
ただし、責任を曖昧にする目的で使うべき言葉ではありません。
被害や違反の事実が確認されている場合は、その内容を具体的に説明する必要があります。
「事案」を使った自然な例文と間違いやすい表現
「事案」は、出来事の内容や具体的な事情に注目する文章で自然に使えます。
たとえば、次のような使い方があります。
- 同じような事案が発生しないよう、手順を見直します。
- この事案については、現在も事実関係を確認しています。
- 個人情報が誤って送信される事案が発生しました。
- 過去の事案を分析し、再発防止策を検討します。
- 個別の事案については、専門家への相談が必要です。
「事案が発生する」という表現は、警察や行政、企業の発表でも使われています。
そのため、「事案は事柄を意味するので、発生という言葉を付けると必ず重複表現になる」とは言い切れません。
一方で、日常的な文章に多用すると、硬く遠回しな印象になることがあります。
たとえば、友人との会話で「昨日、財布を忘れる事案が発生した」と言うと、冗談としては成立しますが、一般的な表現ではありません。
通常は「昨日、財布を忘れた」と言えば十分です。
また、「新しいホームページ制作の事案を受注した」という文章も、一般的なビジネス表現としては不自然です。
この場合は、「ホームページ制作の案件を受注した」としたほうが、仕事の依頼を受けたことが明確に伝わります。
「事案」は便利な言葉ですが、具体的な内容を隠してしまうこともあります。
「重大な事案が発生した」とだけ書くのではなく、何が起きたのかを説明できる範囲で補うことが大切です。
「案件」の意味と使い方
「案件」が表すのは検討・処理する事柄
「案件」は、検討、処理、審査、交渉などの対象になっている事柄を表します。
ビジネスで使われる印象が強い言葉ですが、国会や行政機関でも使われています。
参議院規則では、委員会が審査や調査を行う対象について「付託を受けた案件」と表現しています。
「付託」とは、ある事柄の処理や審査を、特定の委員会などに任せることです。
この用例では、案件が正式に取り扱われる対象であることが分かります。
参議院の継続審査に関する説明でも、各議院から特に付託された案件について、閉会中に審査できるとされています。
このように、本来の「案件」は、単なる仕事の俗称ではありません。
話し合うべき問題、判断すべき事項、処理を任された事柄など、広い意味で使われます。
会社では、顧客から依頼された仕事だけでなく、商談中の取引、提案予定の仕事、社内で検討している計画などを案件と呼ぶことがあります。
ただし、どの段階から案件と呼ぶかは、会社や業界によって異なります。
相談を受けた時点で案件と呼ぶ会社もあれば、受注の見込みが高くなってから案件として管理する会社もあります。
そのため、「案件になった」と聞いただけでは、契約が成立したとは限りません。
契約済みか、商談中か、検討段階かを正確に知りたい場合は、進行状況を確認する必要があります。
ビジネスで使われる「案件」と「仕事」の関係
ビジネスでは、「案件」と「仕事」が同じような意味で使われることがあります。
ただし、両者のニュアンスは少し異なります。
「仕事」は、働くことや業務全体を表す幅広い言葉です。
「案件」は、その仕事の中から一つの依頼、取引、計画などを区切って表す言葉です。
たとえば、Web制作会社の仕事には、営業、制作、経理、採用などがあります。
その中で、ある企業から依頼されたWebサイトの制作を「制作案件」として管理することがあります。
「仕事が多い」と言えば、業務全体が忙しい印象になります。
「案件が多い」と言えば、同時に処理しなければならない依頼や取引が多い印象になります。
よく使われる表現には、次のようなものがあります。
- 新規案件
- 継続案件
- 開発案件
- 制作案件
- 商談案件
- 高単価案件
- 未受注案件
ただし、「案件」という言葉の範囲は統一されていません。
「商談案件」のように、まだ契約していない取引を含める場合もあります。
そのため、「案件を獲得した」という表現も、会社によっては商談の機会を得た意味で使われ、別の会社では受注が決まった意味で使われます。
誤解を避けるには、「相談を受けた」「見積もりを提出した」「正式に受注した」など、現在の段階を具体的に表現することが大切です。
社外への連絡では、社内だけで通じる案件名や管理区分をそのまま使わないようにしましょう。
相手にとって分かりやすい言葉へ置き換えることで、認識のずれを防げます。
SNSで見かける「PR案件」「企業案件」の意味
SNSや動画配信の世界では、企業から依頼を受けて商品やサービスを紹介する仕事が「PR案件」「企業案件」と呼ばれることがあります。
この場合の「案件」は、企業から依頼された広告、宣伝、紹介などの仕事を指しています。
報酬として金銭を受け取る場合だけでなく、商品やサービスを無償で提供される場合もあります。
ただし、商品を受け取った投稿がすべて広告になるわけではありません。
企業と投稿者のやり取り、依頼の内容、投稿内容への関与、取引関係などを確認したうえで判断されます。
消費者庁は、インフルエンサーの投稿が事業者の表示に当たる場合、その投稿が事業者による表示であることを明瞭にしなければならないと説明しています。
広告であるにもかかわらず、広告であることを隠す表示は、一般にステルスマーケティングと呼ばれます。
日本では、2023年10月1日から、事業者の表示であることを消費者が判別しにくい表示が景品表示法の規制対象になっています。
そのため、企業から依頼を受けた投稿では、「広告」「宣伝」「PR」「企業から商品の提供を受けて投稿していること」などを、一般の利用者が認識できる形で表示する必要があります。
単に「案件です」と書けば、どのような関係があるのか必ず伝わるとは限りません。
広告であることが明確に分かる表示を行うことが重要です。
また、「案件」という言葉には、必ず好意的な内容を発信しなければならないという意味はありません。
投稿内容の条件や表現の自由度は、企業と投稿者の契約や合意によって異なります。
場面別に見る「事案」と「案件」の使い分け
事故・不祥事・トラブルを報告するとき
事故、不祥事、情報漏えい、システム障害などを報告する場面では、「事案」が使われることが多くあります。
これは、発生した出来事やその内容に注目しているためです。
たとえば、次のように表現できます。
- 顧客情報を誤った宛先へ送信する事案が発生しました。
- システムに不正アクセスを受けた事案を確認しました。
- 社内規則に反する処理が行われた事案について調査しています。
- 同様の事案を防ぐため、確認手順を変更しました。
ただし、「事案」と書くだけでは、何が起きたのか分からないことがあります。
企業が事故や不祥事を公表する場合は、確認できた事実、影響を受ける範囲、原因、対応、問い合わせ先などを具体的に説明する必要があります。
事実関係が確定していない部分については、「調査中」「現時点では確認されていない」と区別して書くことが重要です。
一方、トラブルへの対応業務を社内で管理するときは、「案件」を使うことがあります。
たとえば、「障害対応案件として管理する」「法務確認が必要な案件として登録する」といった使い方です。
この場合は、起きた事故そのものではなく、組織が処理する作業に注目しています。
報告書では「事案」、業務管理システムでは「案件」と表現されることもあります。
どちらが正しいかだけでなく、文章の目的に合っているかを考えましょう。
会議・メール・商談で仕事について話すとき
会議や商談では、検討中の仕事や取引を「案件」と呼ぶのが一般的です。
たとえば、「新規案件について相談したい」「この案件の予算を確認する」「来月開始予定の案件を共有する」といった使い方があります。
案件という言葉を使うことで、一つの仕事や取引を区切って扱っていることが伝わります。
ただし、社外メールでは「案件」よりも、「ご依頼の件」「お見積もりの件」「Webサイト制作について」などと書いたほうが自然な場合があります。
「本案件につきまして」と書くこともできますが、相手との関係や文章の内容によっては硬すぎる印象になります。
また、「案件」という言葉だけでは、何を指しているのか分からないことがあります。
特に複数の仕事が同時に進んでいる場合は、案件名、商品名、日付などを添えると誤解を防げます。
「先日の案件について」ではなく、「6月25日にお送りした広告制作のお見積もりについて」と書けば、相手はすぐに内容を確認できます。
会議では、議論する項目を「案件」と呼ぶこともできます。
ただし、正式な会議では「議題」「議案」「検討事項」など、内容に合った言葉を選ぶ場合もあります。
「案件」は便利ですが、何をする対象なのかが曖昧になりやすい言葉でもあります。
承認するのか、相談するのか、報告するのかまで具体的に示すと、仕事が進めやすくなります。
同じ出来事を「事案」「案件」と呼べるケース
「事案」と「案件」は、同じ出来事に対して使われることがあります。
ただし、まったく同じ意味で置き換えているとは限りません。
たとえば、会社のWebサイトから個人情報が閲覧できる状態になっていたとします。
発生した問題を説明するときは、「個人情報が閲覧可能な状態になる事案が発生した」と表現できます。
その後、原因調査やシステム改修を担当部署へ割り当てた場合は、「情報漏えい対応案件として管理する」と表現できます。
「事案」は発生した問題を指し、「案件」は組織が処理する仕事を指しています。
別の例として、顧客から製品の不具合について連絡を受けた場合を考えてみましょう。
不具合の内容や発生状況を分析するときは、「個別の事案を確認する」と言えます。
顧客対応の進行状況を管理するときは、「問い合わせ案件を担当者に割り振る」と言えます。
このように、対象が同じでも、見る立場によって言葉が変わります。
そのため、「事案と案件のどちらか一方だけが正しい」と考える必要はありません。
伝えたい内容が、出来事の事実関係なのか、組織が処理する作業なのかを確認しましょう。
なお、一つの文章の中で両方を使う場合は、それぞれが何を指すのかを明確にする必要があります。
「本事案を重要案件として扱う」と書けば、発生した問題を、組織として優先的に処理する対象に位置付けたことが伝わります。
「事件」「事例」など似た言葉との違い
「事案」と「事件」は何が違う?
「事件」は、日常的には犯罪、事故、争いなど、社会的に注目される出来事を表す言葉です。
「事案」は、問題になっている事柄や具体的な事情を、比較的中立的に表す言葉です。
警察の情報では、事件として扱われる前の声掛けやつきまといなども「事案」と表現される場合があります。
富山県警察は、警察へ届け出られた声掛けやつきまといなどについて、事件には至らないものや不審者の出没を含むと説明しています。
このため、「事案」は「事件より軽い出来事」を表す言葉だと思われることがあります。
しかし、重大な犯罪や深刻な事故について「重大事案」と表現することもあります。
重大さだけで両者を分けることはできません。
また、法律や裁判の世界における「事件」は、犯罪事件だけを意味しません。
裁判所では、民事事件、家事事件、行政事件など、裁判手続の対象となっているものも事件と呼ばれます。
裁判所の案内でも、裁判事務に関して保有されている記録を「事件記録」と表現しています。
したがって、「事件」という言葉を見ただけで、犯罪が起きたと判断することはできません。
一般的な文章では、実際に起きた出来事を強く印象付けたい場合に「事件」が使われます。
具体的な事情を分析したり、法的な判断の対象として示したりする場合には、「事案」が使われやすくなります。
「事案」と「事例」は何が違う?
「事案」と「事例」は文字が似ていますが、使う目的が異なります。
「事案」は、現在問題になっている事柄や、判断の対象となる具体的な事情を表します。
「事例」は、ある考え方、傾向、方法などを説明するために取り上げる具体例を表します。
たとえば、顧客情報を誤送信した問題が発生した場合、その問題自体は「情報漏えい事案」と表現できます。
その出来事を研修資料に掲載し、同じミスを防ぐための例として紹介する場合は、「情報漏えいの事例」と表現できます。
つまり、発生した問題として扱えば事案であり、説明や学習のための例として扱えば事例になるのです。
同じ出来事が、時間の経過や使用目的によって事案から事例に変わることもあります。
現在対応中の問題については、「この事案の原因を調査する」と表現できます。
対応が終わった後、社内教育に利用する場合は、「過去の事例から注意点を学ぶ」と表現できます。
ただし、「事例」は過去の出来事にしか使えないわけではありません。
現在進行中のケースを、考え方を説明する例として取り上げる場合にも使えます。
違いを判断するときは、問題そのものを指しているのか、説明のための例として使っているのかを確認しましょう。
「事案」と「案件」の違いに関するよくある疑問
「事案」と「案件」は置き換えられますか?
意味が重なる場面では置き換えられることもありますが、文章の印象や注目点が変わります。
「この事案を調査する」と書けば、出来事の事実関係を確認する印象になります。
「この案件を調査する」と書けば、担当者が取り扱っている対象を確認する印象が強くなります。
トラブルには必ず「事案」を使いますか?
必ずしも「事案」を使う必要はありません。
日常的な文章では、「問題」「トラブル」「事故」「不具合」など、より具体的な言葉のほうが分かりやすい場合があります。
「システムに関する事案が発生した」よりも、「システム障害が発生した」と書いたほうが、内容が明確に伝わります。
仕事には必ず「案件」を使いますか?
仕事の種類や文章の相手によって異なります。
社内では「制作案件」と呼んでいても、顧客へのメールでは「ご依頼いただいた制作について」と書いたほうが自然な場合があります。
「案件」は便利な業務用語ですが、相手も同じ意味で理解しているとは限りません。
「案件化する」とはどういう意味ですか?
会社によって定義は異なりますが、相談や見込み情報を、具体的に管理する商談や仕事として扱い始めることを指す場合があります。
ただし、案件化した時点で契約や受注が確定しているとは限りません。
営業上の見込みを案件化と呼ぶ会社もあれば、正式な依頼を受けてから案件として登録する会社もあります。
「本件」と「本案件」はどちらが自然ですか?
一般的なメールでは、「本件」のほうが簡潔で自然な場合が多くあります。
「本案件」は、複数の取引や業務の中から特定の案件を示したいときに使えます。
ただし、どちらも硬い表現なので、相手や内容に応じて「今回のご依頼」「Webサイト制作について」などへ置き換えると読みやすくなります。
「事案」と「案件」の違いまとめ
「事案」と「案件」は、どちらも事柄や問題を表す言葉ですが、注目する部分に違いがあります。
「事案」は、発生した出来事、問題の内容、具体的な事情などに注目するときに使われます。
警察、法律、行政、不祥事の報告などでよく見られる表現です。
一方の「案件」は、検討、処理、審査、交渉、仕事などの対象に注目するときに使われます。
会社では、取引、依頼、商談、制作、開発などを一つの単位として管理するときによく使われます。
両者の意味は一部重なっているため、同じ出来事に使われる場合もあります。
情報漏えいという出来事は「情報漏えい事案」と呼べますが、その対応業務は「対応案件」として管理できます。
迷ったときは、「何が起きたか」を説明したいのか、「誰かが取り扱うもの」を説明したいのかを考えてみましょう。
出来事の内容を伝えたいなら「事案」、処理や仕事の対象を伝えたいなら「案件」が自然になりやすいでしょう。
ただし、硬い言葉を使うことで内容が分かりにくくなる場合は、「問題」「出来事」「仕事」「依頼」「取引」などへ置き換えることも大切です。
言葉を正しく選ぶ目的は、難しい表現を使うことではなく、相手に誤解なく内容を伝えることです。
