「メロメロ」は、現代だけで使われている新しい言葉ではありません。
辞書に収録された古い用例をたどると、1275年成立の『名語記』までさかのぼります。
当時の「めろめろ」は、塗り物などが簡単にはがれる様子を表していました。
1706年の『風流曲三味線』には、めそめそ泣く様子を表す用例があります。
1806年から1811年ごろの『文化句帖』補遺には、炎が燃える様子を表す使用例も残されています。
そして現在では、しまりや自制心、抵抗力を失うほど何かに心を奪われた状態を「メロメロ」と表します。
ただし、「はがれる」「泣く」「燃える」「恋愛」という順番で、一つの意味が次の意味へ変化したと証明されているわけではありません。
確認できる使用例と、意味が生まれた道筋は分けて考える必要があります。
英語の「mellow」についても、日本語の「めろめろ」が1275年に記録されているため、「メロメロ」という日本語そのものの語源とは考えにくいでしょう。
さらに近年では、「めろめろ」から「メロい」「メロつく」という新しい言葉まで生まれました。
約750年前の資料にも残っている言葉が、令和のSNSや推し活の中で新しい形に変わりながら使われている。
「メロメロ」は、時代とともに姿を変えながら生き続ける日本語の面白さを感じられる言葉なのです。
「メロメロ」の語源とは?まず結論から解説
まずは30秒で「メロメロ」の由来を整理
最初に結論を整理しておきましょう。
| 疑問 | 結論 |
|---|---|
| 「メロメロ」は新しい言葉? | いいえ。少なくとも1275年の資料に用例があります |
| 昔から「好きで夢中」という意味だった? | いいえ。古い例では、塗り物などが簡単にはがれる様子を表しています |
| 英語「mellow」が語源? | 日本語側に1275年の用例があるため、語そのものが英語由来とは考えにくいです |
| 「めらめら」が変化した言葉? | 燃える意味の「めろめろ」は存在しますが、それが語そのものの起源とは断定できません |
| 現代ではどんな意味? | 自制心や抵抗力を失うほど、相手などに心を奪われた状態を表します |
| 「メロい」と関係がある? | あります。「めろめろ」から生まれた新しい形容詞です |
『精選版 日本国語大辞典』には、「めろめろ」の古い用例として1275年の『名語記』が収録されています。
その用例は、塗り物などが簡単にはがれる様子を表したものです。
現在の「恋人にメロメロ」とは、ずいぶん印象が違います。
大切なのは、「1275年にメロメロという言葉が誕生した」と考えないことです。
これは現在確認できる古い記録の一つであって、言葉が実際に生まれた瞬間を示すものではありません。
「語源」と「最古の確認例」は同じではない
言葉の歴史を調べるとき、特に注意したいのが「語源」と「古い使用例」の違いです。
ある文章にその言葉が残されていたからといって、その文章が書かれた年に言葉が誕生したとは限りません。
話し言葉としては、それより何十年、何百年も前から使われていた可能性があります。
文章が失われていることもあります。
そのため、「メロメロの語源は1275年」と表現するのは正確ではありません。
より正確に言えば、「辞書に収録された古い用例の一つとして、1275年の『名語記』が確認できる」となります。
『名語記』自体も興味深い資料です。
経尊によって作られた鎌倉時代の辞書で、初稿の6巻本は1268年、増補された10巻本は1275年に成立しています。
当時の日常語を集め、問答形式で語源などを説明する書物でした。
ただし、『名語記』に書かれた語源説明そのものが、すべて現代の言語学から見て正しいという意味ではありません。
現代では、鎌倉時代にどのような言葉が使われていたかを知る重要な資料として価値があります。
つまり、「メロメロ」の歴史を考えるときは、『名語記』を「1275年ごろにはこの語が使われていたことを示す資料」として見るのがポイントです。
鎌倉時代の『名語記』に「めろめろ」が登場する
現在から750年以上前にあたる1275年。
この年に成立した『名語記』の中に、「めろめろ」という表現があります。
『精選版 日本国語大辞典』に収録された用例は、「ぬり物などのめろめろとはぐる」というものです。
意味は、塗り物などが簡単にはがれる様子です。
現在なら「ぼろぼろとはがれる」「簡単にはがれてしまう」といった表現に近いでしょう。
ここには恋愛も、好きな人も登場しません。
現在の感覚からすると、かなり意外ではないでしょうか。
現代では「メロメロ」と聞けば、人が誰かに夢中になっている姿を思い浮かべる人が多いでしょう。
ところが、確認できる古い資料では、人の恋心ではなく物の状態を表す言葉だったのです。
ちなみに1275年は鎌倉時代です。
現代では若者も日常的に使う「メロメロ」という響きが、それほど昔の資料にも残されていると考えると、かなり長生きしている言葉だとわかります。
古い「めろめろ」は物が簡単にはがれる様子だった
古い用例における「めろめろ」は、「物の表面がたやすくはがれる様子」を表しています。
ここで少し想像してみてください。
きれいに塗られていた表面が、簡単に取れてしまう。
しっかりしていたものが、もとの状態を保てなくなる。
こうした状態を「めろめろ」と表していたわけです。
後世には、「しまりがなくなる」「すっかり打ちのめされる」という、人の状態を表す使い方も記録されています。
そのため、古い用法と現代語の間に「しっかりした状態を保てなくなる」という共通したイメージを感じることはできます。
ただし、ここは慎重に考える必要があります。
「物がはがれる意味から、人が好きな相手に夢中になる意味へ直接変化した」と証明する資料があるわけではありません。
似たイメージを感じられることと、歴史上の意味変化が証明されていることは別です。
語源を面白く説明しようとすると、すべてを一本のストーリーにしたくなります。
しかし、実際の言葉の歴史はもっと複雑です。
複数の意味が同じ時代に使われる場合もあります。
ある意味が消え、別の意味だけが残る場合もあります。
「メロメロ」も、そうした変化を繰り返してきた言葉と考えるのが自然でしょう。
「メロメロ」は擬音語ではなく擬態語?
「メロメロ」は、広く言えばオノマトペに含まれる言葉です。
国立国語研究所の資料では、オノマトペとして擬音語や擬声語、擬態語などが説明されています。
「ワンワン」「チリン」のように、実際に聞こえる音や声をまねたものが擬音語や擬声語です。
それに対して、「キョロキョロ」「ザラザラ」「ドキドキ」のように、動きや状態、感覚などを表すものが擬態語です。
現在使われる「メロメロ」も、実際に「メロメロ」という音が鳴っているわけではありません。
人がしまりをなくしたり、夢中になって自制心を失ったりする状態を感覚的に表しています。
そのため、現在の「メロメロ」は擬態的な言葉として理解するとわかりやすいでしょう。
実際、三省堂も「メロい」の由来を説明する際、もとの「めろめろ」を擬態語として扱っています。
「キラキラ」「ワクワク」「ドキドキ」と同じように、音だけでは説明しにくい状態を短い言葉で伝えられるところが、日本語のオノマトペらしい面白さです。
「メロメロ」の意味はどのように変わってきた?
鎌倉時代には「はがれる様子」を表していた
「メロメロ」の歴史でまず確認できるのが、1275年の『名語記』です。
ここでは、塗り物などがたやすくはがれる状態を表しています。
この用例からわかるのは、鎌倉時代にはすでに「めろめろ」という語形が日本語として存在していたことです。
ただし、それ以前に使われていなかったことを意味するわけではありません。
また、当時「はがれる」という意味しかなかったとも断定できません。
現存する文章は、その時代に話されていた言葉のすべてではないからです。
言葉の歴史では、たまたま古い文章に残った使用例が「初出」として扱われることがあります。
そのため、「最古の用例」と「最初に生まれた意味」を完全に同じものと考えないことが大切です。
それでも、現在の「好きで夢中」という意味からは想像しにくい使い方が鎌倉時代にあったことは確かです。
ここから「メロメロ」という言葉の長い旅が見えてきます。
江戸時代には「めそめそ泣く」という用法が登場する
時代が江戸時代に入ると、「めろめろ」は人の泣き方を表す言葉として記録されています。
『精選版 日本国語大辞典』では、1706年の『風流曲三味線』に「めろめろ泣く所ではない」という用例が示されています。
『風流曲三味線』が宝永3年、1706年に刊行された作品であることは、国立国会図書館の書誌でも確認できます。
この場合の「めろめろ」は、現在でいう「めそめそ」に近い言葉です。
弱々しく泣いたり、いくじなく泣いたりする様子を表しています。
鎌倉時代の「塗り物がはがれる」と比べると、対象が物から人へ変わっています。
ただし、「はがれる意味が変化して泣く意味になった」とまでは断定できません。
歴史資料から確実に言えるのは、1706年には「泣く様子」を表す用法が存在したことです。
「めろめろ」は、一つの意味だけを持って何百年も生き残った言葉ではなかったことがわかります。
「炎がめろめろと燃える」という使い方もあった
さらに意外なのが、火に対する「めろめろ」です。
『精選版 日本国語大辞典』には、1806年から1811年ごろの『文化句帖』補遺から、建物が「めろめろと燃へて」という用例が収録されています。
現在なら「めらめらと燃える」と表現する場面に近いでしょう。
この用法を知ると、「恋に燃えてメロメロになるという意味が生まれたのでは?」と考えたくなるかもしれません。
しかし、そこまで単純ではありません。
燃える意味の用例が記録される約500年以上前には、すでに「めろめろ」という語が『名語記』に登場しています。
したがって、「めらめらが変化してメロメロという言葉そのものが誕生した」と考えるのは難しいでしょう。
また、炎の意味から恋愛の意味へ直接移ったことを証明する資料も確認できません。
「燃える恋」という現代人にとってわかりやすいイメージに引っ張られすぎないことが大切です。
事実として確認できるのは、昔の「めろめろ」には、はがれる、泣く、燃えるといった複数の使い方があったということです。
現代では「自制心や抵抗力を失う」意味が中心
現在の「メロメロ」は、恋愛だけを表す言葉ではありません。
辞書では、しまりがなくなった状態や、すっかり打ちのめされた状態などを表す言葉として整理されています。
ここから、「初孫のかわいさにメロメロになる」といった使い方が生まれます。
ポイントは、「好き」という感情だけではないことです。
好きな相手の前で抵抗できない。
かわいすぎて厳しくできない。
魅力に圧倒されて平静でいられない。
こうした「自分を保てなくなる感じ」が「メロメロ」には含まれています。
そのため、恋人だけでなく、子どもや孫、ペット、アイドルなど幅広い対象に使えます。
恋愛感情があるかどうかより、相手の魅力によってこちらの態度が崩れてしまうかどうかが重要なのです。
年代で見ると「メロメロ」の変化がわかりやすい
これまで確認した主な用例を年代順に整理すると、次のようになります。
| 時代・年代 | 確認できる用法 | 資料 |
|---|---|---|
| 1275年 | 塗り物などが簡単にはがれる様子 | 『名語記』 |
| 1706年 | いくじなく、めそめそ泣く様子 | 『風流曲三味線』 |
| 1806〜1811年ごろ | 炎を上げて燃える様子 | 『文化句帖』補遺 |
| 現代 | しまりや自制心、抵抗力を失う状態 | 現代の辞書に収録 |
| 2020年代 | 「メロい」「メロつく」などの派生表現 | 三省堂などが記録 |
古い用例については『精選版 日本国語大辞典』にまとめて収録されています。
ここで注意したいのは、この表が「意味が必ずこの順番で変化した」という意味ではないことです。
文章で確認できる年代を並べたものです。
一つの意味から次の意味へ一直線に進んだと証明されているわけではありません。
言葉は枝分かれするように意味を増やすことがあります。
古い意味と新しい意味が同時に存在する場合もあります。
「メロメロ」も、こうした複雑な変化を経ながら現在まで残ってきたと考えるほうが自然です。
「メロメロ」の語源は英語の「mellow」ではない?
英語の「mellow」とはどんな言葉?
「メロメロ」の由来を考えたとき、英語の「mellow」を連想する人もいるでしょう。
「mellow」は「メロウ」に近い発音をする英単語です。
熟した果物、熟成してまろやかになった飲み物、穏やかな性格、柔らかな音などを表すときに使われます。
日本語でも音楽について「メロウな曲」と表現することがあります。
そのため、「メロメロもmellowからできた言葉なのでは?」と考えるのは不思議ではありません。
音もかなり似ています。
意味についても、力が抜けたような柔らかいイメージが重なるように感じられます。
しかし、語源を判断するときは「音が似ている」「意味が少し似ている」というだけでは不十分です。
重要なのが、いつからその言葉が使われているかという年代です。
音が似ているだけでは語源の証拠にならない
日本語と外国語には、偶然よく似た音の言葉があります。
そのため、語源を調べるときに「音が似ているから関係がある」と決めてしまうと、誤った説明につながることがあります。
意味の近さについても同じです。
何百、何千という言葉を比べれば、音と意味が偶然似る組み合わせは出てきます。
語源として結びつけるには、いつ伝わったのか、どのように発音が変化したのか、古い文章にどのような例があるのかといった証拠が必要になります。
「メロメロ」と「mellow」の場合、日本語側にはかなり強い年代上の手がかりがあります。
1275年の『名語記』に、すでに「めろめろ」が記録されているからです。
この事実を踏まえると、英語説はかなり考えにくくなります。
日本語の「めろめろ」の記録は英語「mellow」の初出より古い
Merriam-Websterによると、英語「mellow」の形容詞としての初出は15世紀とされ、語源には中英語の「melowe」が示されています。
一方、日本語の「めろめろ」は1275年の『名語記』に記録されています。
15世紀は1400年代です。
1275年の日本語の用例は、それより100年以上前になります。
この年代関係だけを見ても、日本語の「めろめろ」という語そのものが、後から英語「mellow」を取り入れて作られたと考えるのは無理があります。
もちろん、英語側の「mellow」という語そのものにも15世紀より前につながる歴史があります。
しかし、日本語に英語から「メロメロ」が借用されたことを示す証拠にはなりません。
少なくとも日本語側では、英語由来と考える必要のない古い使用記録が残っています。
現代では「メロメロ」とカタカナで書くことが多いため、外来語らしく見えることがあります。
しかし、カタカナ表記だから外来語とは限りません。
「ドキドキ」「ワクワク」「キラキラ」のように、日本語のオノマトペもカタカナで書かれることがあります。
「めらめら」が「メロメロ」の語源という説は?
もう一つ気になるのが「めらめら」との関係です。
実際、「めろめろ」には炎が燃える様子を表した古い用例があります。
現在の「めらめら」と非常によく似た意味です。
そのため、「めらめらが変化してめろめろになった」と説明したくなるかもしれません。
ただ、現在確認できる用例の年代を見ると、そう単純には説明できません。
「めろめろ」は1275年の『名語記』ですでに確認されています。
一方、辞書に収録されている「炎がめろめろと燃える」という用例は1806年から1811年ごろです。
もちろん、古い用例が見つかっていないだけで、実際にはもっと前から炎について使われていた可能性はあります。
しかし、現時点で確認できる資料だけから、「めらめらこそがメロメロの本当の語源」と断定することはできません。
「めろめろ」と「めらめら」が非常に近いオノマトペであることと、どちらからどちらが生まれたのかを証明することは別問題です。
語源では、わからないところを無理につなげないことも大切です。
結局「メロメロ」の語源はどこまでわかっている?
ここまでを整理すると、確実に確認できる範囲が見えてきます。
まず、「めろめろ」という語形は少なくとも鎌倉時代の1275年には記録されています。
その古い例では、塗り物などが簡単にはがれる様子を表しています。
1706年には、めそめそ泣く様子を表す使用例があります。
1806年から1811年ごろには、炎が燃える様子を表す用例があります。
現代では、しまりがなくなったり、自制心や抵抗力を失ったりする状態を表す言葉として使われています。
一方で、「はがれる意味から泣く意味が生まれ、燃える意味を通って、現在の恋愛表現になった」という一本の変化が証明されているわけではありません。
したがって、「メロメロの語源」を一言で説明するなら、「鎌倉時代から確認できる日本語のオノマトペで、長い歴史の中で複数の意味に使われてきた」とするのが適切です。
現代の「メロメロ」はどんな意味?
「メロメロ」は単なる「大好き」と少し違う
「メロメロ」を「大好き」と説明しても、会話の意味はある程度伝わります。
しかし、完全に同じではありません。
「大好き」は、相手や物に強い好意があることを表す言葉です。
一方の「メロメロ」は、相手の魅力などによって自分のしまりや抵抗力まで失ってしまう状態に重点があります。
たとえば、「私は犬が大好きだ」と言えば、犬への強い好意を表します。
「うちの犬にメロメロだ」と言うと、かわいくて怒れない、ついおやつをあげてしまう、何でも許してしまうといった姿まで浮かんできます。
「好きなのは誰か」という情報だけではありません。
「好きすぎて自分がどうなってしまったのか」まで表しているのが「メロメロ」です。
この違いを知ると、なぜ「メロメロ」という言葉が今でもよく使われるのかがわかります。
単なる「好き」よりも、感情の大きさが伝わりやすいからです。
「彼女にメロメロ」にはどんなニュアンスがある?
「彼は彼女にメロメロだ」と聞くと、単に恋愛感情を持っているだけとは感じないでしょう。
頼まれたら断れない。
何をされてもつい許してしまう。
会うといつも顔がゆるむ。
そんな姿を想像する人が多いはずです。
「メロメロ」には、相手の魅力に完全にやられてしまったようなニュアンスがあります。
そのため、「恋に積極的」というより「魅力に負けている」という感覚が強い言葉です。
「惚れ込んでいる」「骨抜きになっている」といった表現にも近い部分があります。
少し大げさで、どこかユーモラスな言葉でもあります。
本人が真剣に困っているというより、周囲から見てもわかるほど夢中になっている場面で使うとよく似合います。
子どもや孫、ペットにも「メロメロ」と言える
「メロメロ」は恋愛専用の言葉ではありません。
孫、赤ちゃん、子ども、犬、猫などにも自然に使えます。
これは、「メロメロ」の中心的な意味が恋愛ではなく、自制心や抵抗力を失ってしまう状態だからです。
たとえば、普段は厳しい祖父が孫の前では何でも買ってあげてしまう。
「犬を甘やかさない」と決めていた人が、かわいい顔で見つめられるとすぐおやつをあげてしまう。
こんなときに「孫にメロメロ」「愛犬にメロメロ」と表現できます。
対象に恋愛感情がなくても、魅力に抗えない状態なら成立するわけです。
この点を理解すると、「メロメロ」という言葉の意味がかなりすっきりします。
「誰かを好きな状態」というより、「誰かの魅力によってこちらが弱くなっている状態」と考えるとわかりやすいでしょう。
「デレデレ」「ぞっこん」「首ったけ」との違い
「メロメロ」には似た表現がいくつもあります。
代表的なのが「デレデレ」「ぞっこん」「首ったけ」です。
似ていますが、少しずつニュアンスが違います。
「デレデレ」は、相手を好きな気持ちが表情や態度に出て、しまりがなくなっている様子を表すときに向いています。
「ぞっこん」は、一人の相手などに深く心を傾けている状態を表します。
「首ったけ」は、相手にすっかり夢中になっている状態を表す、やや古風な表現です。
「メロメロ」は、相手に夢中になった結果、自制心や抵抗力まで弱くなっている感じが特徴です。
たとえば、「孫にデレデレ」なら、孫の前でうれしそうな顔をしている姿が浮かびます。
「孫にメロメロ」なら、かわいさに完全に負けて、何でも言うことを聞いてしまう姿まで想像しやすくなります。
似た言葉でも、どこに焦点を当てるかで使い分けられます。
昔と今の意味に共通するイメージはある?
鎌倉時代の「物がはがれる」と、現在の「好きな相手にメロメロになる」。
この二つは、表面上はまったく違う意味です。
それでも、意味を理解するためのイメージとして見ると、少し共通する部分があります。
それは「しっかりした状態を保てなくなる」という感覚です。
古い用例では、塗られていたものが簡単にはがれてしまいます。
現在の用法では、人が自制心や抵抗力を失ってしまいます。
どちらも、もとのしっかりした状態が崩れているように見えます。
ただし、これは意味を理解するための共通イメージです。
「はがれる意味から現在の意味が直接生まれた」と歴史的に証明されたわけではありません。
この区別をしておけば、語源を必要以上に単純化せず、「メロメロ」という言葉の面白さを楽しむことができます。
「メロい」まで生まれた現代の「メロメロ」とよくある疑問
「メロい」は「メロメロ」から生まれた言葉
近年、「メロメロ」から新たな表現が生まれています。
それが「メロい」です。
三省堂の「今年の新語2024」では、「メロい」が6位に選ばれました。
三省堂は「メロい」について、擬態語「めろめろ」の基本部分である「めろ」に、形容詞を作る「い」が付いた言葉と説明しています。
意味は、「こちらがメロメロになってしまうほど魅力的」というものです。
ここには面白い変化があります。
「メロメロ」は、魅力を受けた人の状態を表します。
「あの人にメロメロだ」といえば、メロメロなのはこちら側です。
ところが「あの人はメロい」と言えば、こちらをメロメロにするほど魅力がある相手を表現できます。
同じ言葉を土台にしながら、視点が逆になったわけです。
2026年2月にも、『三省堂国語辞典』編集委員の飯間浩明氏が「メロい」「メロつく」を取り上げ、2024年ごろから目立つようになり、2025年に認知度がさらに高まったと述べています。
鎌倉時代の資料に残る「めろめろ」が、750年以上たった現在でも新しい言葉を生み出しているのです。
「メロつく」という言い方もある
「メロい」とともに、「メロつく」という表現も使われています。
三省堂の「今年の新語2024」の選評では、「メロつく」は「めろめろになる」という意味の動詞形として紹介されています。
「推しにメロつく」といえば、推しの魅力にやられてメロメロになる、といった意味になります。
日本語として見ると、かなり興味深い変化です。
もともとの「めろめろ」から「めろ」という部分だけを取り出し、「メロい」「メロつく」と別の言葉を作っているからです。
三省堂も、「めろめろ」のような擬態語から直接「メロい」のような形容詞が作られる例は珍しいと説明しています。
言葉は昔の形のまま保存されるだけではありません。
多くの人に使われ続ける中で、古い言葉を材料に新しい表現が生まれることもあります。
「メロメロ」は、まさにその変化を現在進行形で見られる言葉です。
「メロメロ」に漢字はある?
「メロメロに漢字はあるの?」と疑問に思う人もいるでしょう。
一般的には、「めろめろ」または「メロメロ」と表記します。
『精選版 日本国語大辞典』でも見出しは「めろめろ」で掲載されています。
通常使われる決まった漢字表記がある言葉ではありません。
これは、「ドキドキ」「ワクワク」「キラキラ」などと同じように、オノマトペとして理解すると自然です。
文章では、ひらがなでもカタカナでも見ることがあります。
「恋人にめろめろだ」と書いても、「恋人にメロメロだ」と書いても、基本的な意味は変わりません。
現代ではカタカナの「メロメロ」が視覚的に目立ちやすく、会話的な文章でもよく使われます。
「めろめろ」と「メロメロ」に意味の違いはある?
ひらがなの「めろめろ」とカタカナの「メロメロ」に、別々の辞書的意味があるわけではありません。
基本的には同じ言葉です。
ただし、文章から受ける印象には少し差が出ることがあります。
「めろめろ」とひらがなで書くと、柔らかく落ち着いた印象になります。
「メロメロ」とカタカナで書くと、感情の強さやコミカルさが目立ちやすくなります。
たとえば、「彼は娘にめろめろだ」と「彼は娘にメロメロだ」は意味としてはほぼ同じです。
後者のほうが、娘を前に完全に骨抜きになっている様子を強調しているように感じる人もいるでしょう。
ただし、これは表記によって生まれる文章上の印象の違いです。
「ひらがななら古い意味、カタカナなら恋愛の意味」といった決まりがあるわけではありません。
結局「メロメロ」の由来を一言で説明すると?
誰かに「メロメロって、もともと何語なの?」と聞かれたら、次のように説明するとわかりやすいでしょう。
「メロメロは英語から最近入ってきた言葉ではなく、少なくとも鎌倉時代から記録がある日本語のオノマトペだよ。」
これが最も大切なポイントです。
1275年の『名語記』では、塗り物などが簡単にはがれる様子を表していました。
その後、めそめそ泣く様子や、炎が燃える様子を表す使用例も残されています。
現代では、自制心や抵抗力を失うほど相手などに心を奪われる状態を表す言葉として定着しています。
英語「mellow」と音は似ていますが、日本語には1275年の用例があり、Merriam-Websterが示す英語「mellow」の初出は15世紀です。
そのため、「メロメロ」という日本語そのものを英語由来と考えるのは年代上難しいといえます。
そして現在は、そこから「メロい」「メロつく」という新しい表現まで生まれています。
「メロメロ」の語源・由来まとめ
「メロメロ」は、現代だけで使われている新しい言葉ではありません。
辞書に収録された古い用例をたどると、1275年成立の『名語記』までさかのぼります。
当時の「めろめろ」は、塗り物などが簡単にはがれる様子を表していました。
1706年の『風流曲三味線』には、めそめそ泣く様子を表す用例があります。
1806年から1811年ごろの『文化句帖』補遺には、炎が燃える様子を表す使用例も残されています。
そして現在では、しまりや自制心、抵抗力を失うほど何かに心を奪われた状態を「メロメロ」と表します。
ただし、「はがれる」「泣く」「燃える」「恋愛」という順番で、一つの意味が次の意味へ変化したと証明されているわけではありません。
確認できる使用例と、意味が生まれた道筋は分けて考える必要があります。
英語の「mellow」についても、日本語の「めろめろ」が1275年に記録されているため、「メロメロ」という日本語そのものの語源とは考えにくいでしょう。
さらに近年では、「めろめろ」から「メロい」「メロつく」という新しい言葉まで生まれました。
約750年前の資料にも残っている言葉が、令和のSNSや推し活の中で新しい形に変わりながら使われている。
「メロメロ」は、時代とともに姿を変えながら生き続ける日本語の面白さを感じられる言葉なのです。
